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「気付け馬鹿。散々『王女』だと言っていただろうが」

「――――お。王女・・?」



 マリスタが固まる。

 王女と呼ばれた少女はフフンと鼻を鳴らし、ある・・胸を更に張らせて揺らしながら居丈高いたけだかに笑った。



「ようやく気付いたようね。自分がどれほどの不敬ふけいを働いて、」

「あんたみたいな奴王族おうぞくにいないでしょーがぼけッ!!」

「言うに事欠いてボケとはなによボケとは殺すぞッ!!」

「ケンカを売るなマリスタ」

「買わないでください王女様」

「これ以後王女呼びしたらお前ホント殺すから!!」

「は。以後気を付けます」



 み付かれて即座そくざに引き下がる黒フードの女。

 言葉の端々はしばしから慇懃無礼いんぎんぶれいにじみ出ているが、狙ってやっているのだろうか。



 ――ともあれ。



「……まず確認させろ。本当にマリスタの傷は治ったのか。今の緑に光る魔石ませきは何だ」

うたぐぶかい奴は嫌われるわよ!」

「実際に見て確かめてみるといい。傷はふさがっているはずだ」

「ホントだ、傷なんて跡形あとかたもな……見てんじゃないわよエロケイ!!!!!」

「背中にも違和感はないのか?」

「ないけどさ!!! さわるとこみないで!!!!」

「なんかクッソムカつくんだけどアレ。見てたら」

うらやましいので?」

「殺すわよ? なんで下々見てわたしがンなこと思うのよ」

「……確かに確認した。しかし物凄ものすごい回復力だな、その魔石ませき

「一口に魔石と言っても純度じゅんどはピンキリだ。ここまで質の高いものはその辺では手に入らん」

「それがそいつが王族たる証左しょうさだと?」

「いいや。どうやら王女は、お前達にはもう正体を隠す気が無いようだから」

「あんたが散々王女って呼ぶからでしょうがボケッ」

「その茶番はもう見飽みあきた、いいから事実だけ教えろ。お前の名はなんだ、女」

「……ほんっと上から目線でムカつくわ、あんた。いいわ、よーく拝聴はいちょうなさい」



 女がこぼれそうな胸に手を当て、目を細めて笑う。



「わたしこそあんたたちが住むこの国、戦乱を乗り越えたリシディア王国の求めるもう。リシディア王朝おうちょう第二だいに王女おうじょ、ココウェル・ミファ・リシディアよ!」

「――――!」



 ――――ココウェル・ミファ・リシディア。



「ハッ!!! こンの大ウソつき!!!!!」

「ッ!!?」



 マリスタの叫びに、さしもの王女も目を丸くする。



「なっ――――何言ってんのよお前!?」

「こっちのセリフよ大ウソつきめーがバーカバーカ!!! いいこと? 私もバカだけどねぇ、王族の名前くらいは家でも聞かされてるし頭に入ってんのよバーカ! ココウェル・ブフォ・リシディアなんて名前は聞いたこともないわ!!」

「ココウェル・『ミファ』・リシディアだっっつーのブサイクに間違えんなこのお前ッ!!」

「あー聞こえませんねぇウソニセ王女サマのザレゴトなんて私には毛ほども――」

「ココウェル・ミファ・リシディア。よく覚えている・・・・・・・

「――――え?」

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