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◆     ◆




 雷撃。

 ――のような衝撃が、頭を貫いた。



「ぐヅッ――――!!!! あ゛ぁ゛ッ……!! くそっ、くそッ!!」

「……は?? キッモ、こいつマジでなんなワケ? ビョーキ? 薬中やくちゅう?」

「さあ? 行きましょう、王女」

「ねえ。わたし何回も言ったよねその呼び方やめろって」

「マッ…………」

「あ?……え何、まさか『待て貴様ら』ってこと? うっサっムッ、なにクソまじめにそんな台詞吐いちゃってんの気色悪っ! てか、大体あんた誰に向かってクチいてんのよ。死ぬ? ねえ」

「隠したかったのではないのですか?」

「うっさいないちいち黙ってろげ足取んな!!」

承知しょうちしました」

「チッ、イライラすんなーもう……ん? お、何よアンタ。よく見てみれば意外とイケメンじゃん! や、ちょーイケメンじゃない? ワオ! テンション上がる~」

「マリ……スタ……!!」

「……は?」



 地にせた体を起こし、うつせに倒れてわずかにうめいているマリスタに近付いていく。

 急げ。止血しけつなら、俺程度ていどの治癒魔法でも可能なはずだ。



「…………」

「『マリスタ』。どうやら先の『ま』は、彼女を助けたくて発された言葉のようですね」



 脇腹わきばらするどい衝撃。

 恐らく王女と呼ばれている女にられたのだ。



「ッ――――……!!」

「……言わなくても分かるから。そういうの。いちいち」

「はい」

きた。さっさと『処理』して、そこの穴開き・・・

「!!!」

「はい」



 黒フードがマリスタの近くで腰をかがめる。

 そいつは自らのふところに手を差し入れ、



「やめろ!!」

さわぐな」



 

 ピシャリとそう言い、緑色に光る魔石ませきを取り出して――マリスタの背中の傷口へかざした。



 発光。



「――!?」



 緑の光がおぼろな光で辺りを照らし、初見しょけんの俺でもわか膨大ぼうだいな魔力がマリスタの傷口に集中し、そして――――あっという間に消失した。



 体を起こし、王女の下へ歩いていく黒フード。

 体に鞭打むちうち、俺はなおもマリスタへの接近を続けるが――――その必要は消え失せる。



 マリスタは自分の四肢ししで、ゆっくりと体を起こし始めたのだ。



「馬鹿ッ、お前傷口が、」

「……たぶん大丈夫。まだ、体の中で痛い感じするけど」

「な――」

「まだ中身が治り切ってない。下手に動くと内出血で面倒なことになるぞ」



 こちらを見もせずに言う黒フード。

 その一言で、怖々こわごわ尻餅しりもちを着いて座り込んだマリスタが、ギッと去っていこうとする二人をにらみ付ける。



「待ちなさいよッ!」

「聞こえなかったの? 今ムリしたら傷口開いちゃうって」

「傷口作った奴に言われたくないわよッ!」

「えええ~? わたし達何かしたぁ?」

「なんなのケイこいつホントムカつくんだけど!!!」

「てかそっちのイケメンもだけどあんた達礼儀れいぎってもんを知らないのねぇ! あんた達にはもう隠してるつもり無いんだけど!!」

「か……隠す?」

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