こんなにも行きたかった異世界 -最弱の少年は、ただ復讐のために魔女の手を取り力を求む-

12

「欠片も気にならん。お前と一緒にするなロハザー」

「ハッ、なァにを見てたら俺とマリスタがそう（・・）見えるってんだよバァカが」

「マリスタじゃない。お前の場合はヴィエルナだろう」

「あ？……ヴィエルナ？……」

『…………』

「なっ――なんだよテメーら気持ち悪（ワ）りーな！！　見んなよ！」

「今完全に口ごもったじゃないか、君」

「口ごもったね」

「ごもったぜ」

「ッせーなアイドルオタク（ドルオタ）共！！　自分の推（お）しにだけかまけてろ」

「テレんなよ。今俺らしかいねーんだからよ」

「周り人だらけだろが！」

「……人いなかったら続き、話してくれたの？　僕たちに」

「あ、揚（あ）げ足取ってんじゃねぇボケテインツ！　つかコラ、アマセッ！　人に話題を押し付けんじゃねーよっ！　今はお前とマリスタの、」

「答えたのにダル絡（がら）みしてきたのはお前だろ。俺はマリスタを好きでもなんでもない。もちろんパールゥ・フォンのこともだ」

「はっきり言いやがるなお前……」

「チッ、モテ男はいつだって選ぶ側だぜ……ムカつきが止まんねーよ」

「でもさ。だったらどうして『宙（ちゅう）ぶらりん』にしておく訳（わけ）？　君」

「何？」

　少し険（けん）のある声で、テインツが言う。

「偏屈（へんくつ）な君のことだ。もう彼女たちが自分を好きかもって、気付いてるんだろ？　彼女いたこと無いチェニクだって気付いたくらいなのに」

「ねえなんで今僕を例に出した？」

「落ち込むなよメガネ君」

「好きかもとか、そんなもの」

「彼女たち、きっとまだ希望を持ってると思うよ。アプローチを続けてれば、いつか君が振り向いてくれる時が来るかも、って。君がそんなにハッキリ意思を固めてるなんて思いもせず」

「向こうの都合なんて知ったことか。俺は求められたときに返すだけだ」

「それだよ」

「……それ？」

「君は気付いてるくせに、返事も決まってるくせに、まだ彼女たちに自分へアプローチさせ続けてる。僕にはそう見えるよ？」

「何を馬鹿な――」

　言葉が止まる。

　先程まで軽いノリで話していた筈（はず）の他三人が、一様に俺を真顔で見つめていたからだ。

「――なんだよ。お前達まで」

「……言われてみりゃその通りだと思ってよ。ムカムカしてきた」

「あのなビージ、俺は」

「うるせー。こっちのセリフだ、テメーの都合なんざ知（・・・・・・・・・・）ったことじゃねー（・・・・・・・・）んだよ。上手いこと言葉に出来なかったがよ、テインツのお陰でやっと分かったぜ。テメーは女子を誑（たぶら）かしてんだよ」

「ふざけるな、何で俺が」

「だったらどうして受け身なのさ」

「意味が解らんぞチェニク。俺はあいつらの自由だと言ってるだけで」

「チェニクはそういう態度が不誠実（ふせいじつ）だって言ってるんだよ。君は彼女等の気持ちに気付いてて、それに対する自分の気持ちにも整理がついてる訳（わけ）だろ？　だったらさっさとイエスなりノーなり言えばいいのにさ」

「チケット云々（うんぬん）の話の時だってそうだぜ。どっちかとったりしねーで、どっちも断っちまえばよかったんじゃねぇのかよ」

「知った風な口をきくなっ。馬鹿々々（ばかばか）しい、なんで俺がそんな手間を」

「おいおい。その発言はちっとクズ過ぎんだろ」

「……は？」