11

「そうだよ」

「意外だね。てっきり体調とかを理由に……」

「俺の人間関係でマリスタがとばっちりを受けた。一言びんわけにはいかんだろう」

「別にとばっちりとかじゃねーんじゃねーのか?」

「何?」

「ムカつくけどよ、要はアルテアスとフォンの奴がおめーを取り合ってるだけだろ。片方が勝ち取った、もう片方は負けた。そんだけじゃねーのか?」

「馬鹿言うなよ。マリスタは俺にそんな感情を持ってない」

「いやいや。それはムリあるでしょ」

「無理?」

「君、自分がどれだけアルテアスさんと一緒にいるか自覚してる? 実技じつぎ試験しけん前なんて、アルテアスさんといないことの方が少ないくらいだったじゃないか」

「そうだよ。何も起きないワケがねぇ。ムカつくけどよ」

「起きない訳無いって、それこそ無理があるだろう。現に何も起きていない。俺とマリスタはただの、」

「『トモダチ』――とでも言うつもり? もしかしてさ」

「!」



 ビージ達とは別の方向から、テインツが歩いてくる。

 ベージュローブと風紀の腕章わんしょうをつけた姿を見るに、きっと今は学祭警備がくさいけいびの担当時間なのだろう。

 そして、その横には同じ格好をした――



「――お前、この時間警備の担当だったか? ロハザー」

「うっせーな!!!! げーけどテインツがしょんぼりしてたから仕方なく付き合ってやってんだよ!!!」

「ヘンなこと言うなよ。しょんぼりしてたのはお前だろ」

「いーや違うね!! しょんぼり具合はテメーの方が数段上だったもんね!!! そりゃそうだよなぁリリスちゃんに加えてマリスタにもフラれちまったんだもんなオーカワイソー」

「フラれてはないだろテキトーなことを言うなよ?!? というかしょんぼり具合の話なんてしてないんだよ、わざわざ僕に声かけてきて付いてきたのはロハザーの方だろって言ってんの!」

「う、ぬ……ぐっぞー……えェそうですよしょんぼりもしょんぼりですよしょんぼりしょんしょん丸ですよこちとら!!! アマセお前マジ、要らないなら今スグ俺にゆずれチケット。どうせ大した興味もねーんだろがっ」

「手放せるものなら手放したいよ、今すぐでもな」

「……ちッ。つーことはアレか。アマセおめー……今からデートか」



 ロハザーが悪絡わるがらみを引っ込め、素のテンションに戻って言う。

 無意識に、また大きな溜息ためいきが出た。



「デ……まあ、そうだ。……そういえば、お前達最後まであの場に居たんだよな。マリスタはどうなった?」

「どうなったも何も、そのままライブに行くことになってたさ。あの新しい先生とね」

怨念おんねんこもってるね、テインツ」

「べ、別に怨念なんかッ」

「こもってるじゃない。なぁビージ」

「ま、オメーがトガる気持ちは分かっけどよ。まさかあのアルテアスに許嫁……将来を誓った相手がいたってんだから」

「つか、なんでお前がンなこと気にしてんだよアマセ。さすがのオメーも、マリスタに相手がいるなんて予想外だったってか」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る