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 とにかく、マリスタを見つけて謝ってしまうことだ。

 ここはライブ会場入り口。先にパールゥが来れば中に入らなければいけないが、マリスタ達が先なら必ず会うことが出来るだろう。そこを狙う。

 携帯電話など無い世界だ、連絡手段を持たない俺はこうするより手がない。

 そうして、今日を乗り切ったら――改めて、山積した問題に取りかっていくとしよう。



 薄暗い人海じんかいに目をらし、特徴的とくちょうてきな赤毛を探す。

 周囲にはめかし込んで来ている者も多い。もしかするとマリスタもそれなりに、服装を整えてきているかもしれない――奴が、俺の部屋に魔術を教えに来てくれたときのように。



〝……ふんいき、違って見える?〟

〝ど。どんな風に見えた?〟



「――馬鹿。思い出すな、みょうなことを」



 ……あのときあいつは髪を下ろして、服装も随分ずいぶんゆるくて。

 通常の姿とは全く違う、すきだらけな格好をしていた。



〝ちょっとでも、こっち見てほしいな。ケイ〟



 あいつもきっと、俺に好意を持ってくれている。

 全く的外れてはいるが――俺をライブに誘ったのも、きっと俺のふさぎ込んだ空気感を察してのことなんだろう。つまり奴の好きは、



〝私は、あんたの友達になりたい〟



そう、友達としての「好き」だ。……と、思うのだが。



天瀬あませ君のことが好きっ〟



 マリスタも、俺のことが好きなんだろうか。

 あの時の緩い服装は、わざと隙を演じていた、ということなのだろうか。



 告白されるのには慣れている。

 だから断るのも手慣れたものだ。



 好きならさっさと告白してきて欲しい。

 そうすれば、俺も気持ちよく切り捨てることが出来るのに。



 なのに、奴らははっきりと気持ちを口にしない。

 回りくどい言葉を並べて、じりじりと俺に近づいてばかりいる。

 そんな面倒臭い距離の測り合いなど経験が無いし、ぴら御免ごめんだ。



「…………はぁ」



 大きな溜息ためいきが口をく。

 会場付近の柱時計を見ると、そう時間はっていなかった。



 頭が痛い。

 願わくばこれ以上、厄介事やっかいごとが増えないことを。



「おぉおォ。誰かと思えばモテくんじゃねーか」



 ……厄介事が増えないことを。



「……ひがみなら他所よそに行け、ビージ」

「誰がヒガミだムカつく奴だなテメーは相変わらず!!」

「ムキになってたらホントにヒガミっぽいって、ビージ」



 普段着ふだんぎなのか、カッチリとしたシャツを着こんだチェニク・セイントーンと、胸板が強調されているパチパチの黒Tシャツを着たビージ・バディルオンと出くわす。

 ライブで使用するのか、その手には団扇うちわや、何やら十五センチほどのぼう――まさかサイリウムというやつか、あれは――を大量に持っている。ライブ会場ということで薄暗いからよく解らないが、かけているタオルももしかして「ウィザードビーツ」とやらのグッズだろうか。本当に好きなんだな。



 そして、ああ……入り口で待つってことは他の知り合いとも会う可能性があるってことじゃないか。本当に頭が弱っていて嫌になる。



「チッ……で? テメーはやっぱ、あれか。待ちなワケか、今」

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