8
――身に覚えがないのだろうな。システィーナの奴、最初からそう言葉を
パールゥの嘘に
この場を
だが、
「何言ってるの、システィーナ。ライブの時間、マリスタに仕事なんてないよ」
それも、
「ぱ……パールゥ、」
「ちゃんと確認しとかなきゃ。まあ、仕事があるなら私が代わってあげたけどね。せっかく
『!?!?』
これまで感じたことも無いほどの、頭のキレでもって。
あのリアとヴィエルナまでが言葉を失い、空気が決定的におかしくなる寸前まで
……状況は見えている。
見えている
なのに、目の前の景色には全く現実感が無く、ぼんやりとしている。
知っている、これは
……パールゥ・フォン。
お前、
「いいよね、好きな人とライブなんて。――私も勇気出しちゃおうかな。アマセ君っ」
『!!!!!』
「私もチケットとるの、頑張ったんだ。よかったら一緒に……行かない?」
――お前、そういうことが出来る奴だったのか?
手が震えてきた。気がする。
いけない、このままでは――本当に発作が起こりかねない。
くそ、本当に、なんて面倒な――――
――――すまん、マリスタ。
差し出されたチケットを握る。
びく、とパールゥの手が
「――――――」
「――――……」
長い
奪うようにしてパールゥの手からチケットをもぎ取り、背を向ける。
「悪い、みんな。俺……今日はもう戻る」
「お、おいアマセ。お前大丈夫――――」
「エルジオ先生。マリスタ」
『!!!』
パールゥの声が、背の向こうに響く。
「楽しんできてね。それじゃ、私も今日は帰るね。お疲れ様、みんな」
マリスタは今、どんな顔をしているだろう。
◆ ◆
「……マリスタ?」
サイファスの声に、マリスタがビクッと反応する。
「! ――は、はい」
「……大丈夫か、お前。すごく真顔」
「え、あ。ううん、何でも」
「……そっか。じゃあ今は深くは
「――――あ、」
サイファスの目が、マリスタがぶら下げた手に握る二枚のチケットへと移る。
マリスタもそれに気付き、そのまま――――腕を上げ、チケットをサイファスへと差し出した。
サイファスが口だけで小さく笑う。
「ありがとう。今日の夜だったっけ」
「………………うん。そうだよ。楽しみだね」
「ああ、そうだな。じゃあ、俺ももう行くよ。他の所にも
「わかった。じゃあ、また後でね」
最後に視線を残し、サイファスが去っていく。
誰も何も発さず、マリスタを見る。
マリスタは取り繕っていた表情を
その視界に
「…………何なのよ。あんた」
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