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 ――けいの言葉が誰に何のため向けられたのかを理解するのに、冷凍少年少女らはまたも少しの時間を要した。



 エリダが目を見開き、けいを見る。

 圭はいつもと変わらない表・・・・・・・・・・で、驚きの表情を寄こすマリスタと向かい合っていた。



「お……お、おお?」

「なんなんだその驚き方は、失礼な。そしてライブが何なのかくらい知ってる。バカにするのも大概たいがいにしろ」

「さ、誘っといてナンなんだけどさ……すごい、ウルサイよ。音とか」

「なんで嫌がりそうなものに誘うんだよ……とにかくライブには行くつもりだ。少し気になってはいたしな」

「あ、わ――わかった。じゃあ、このチケット――――」

「お、『ウィザードビーツ』のライブチケット? それ」




◆     ◆




「――、え」



 声に硬直こうちょくするマリスタ。

 発された声は俺やクラスメイト達に接するときのものとは明らかに低く――マリスタは、現れた背の高い金髪ポニーテールの人物を、何の気飾きかざりも無い真顔で見上げた。



「……サイファス」

「ハハ、すごい顔になってるぞマリスタ。って、急に現れたのは俺の方か。驚くのも無理ないよな……」



 サイファス、と呼ばれた男がぐるりと俺とその他を見下ろし、システィーナに視線を向ける。



「ここにいるのは全員、中等ちゅうとう六年生、であってるかな? みんなマリスタの友達?」

「は、はい。あの、あなたは……」

「うん。友達なら、先に挨拶あいさつしておくかな――俺はサイファス。サイファス・エルジオだ。今度からこのプレジア魔法まほう魔術まじゅつ学校がっこうに、教師として赴任ふにんすることになった」

「えエッ!? そ……マジなの? サイファスそれ」



 マリスタが比較的ひかくてき野太い声で反応する。

 サイファスが「マジ」とやわらかく笑った。



「ま、またこりゃイケメンがきたわね……」

「エリダが好きそうなタイプじゃないわね、あの顔」

「話せるわねシータ。アマセとはまたオモムキが違うイケメンよね」

「……す、すごい堂々と人の顔の話する友達がいるんだな」

「き――気にしないでいいよ、こいつら病気なだけだから」

「病気とか言ってやるなよ友達なんだろ」

くさえんみたいなもんよ」

「俺と一緒で?」

「あ――――なたはっ、……違うでしょうよ」



 マリスタは俺を見て。

 何故か申し訳なさそうに、言葉をにごした。



 ロハザーが半歩前に出る。



「えーっと。エルジオ先生ですっけ」

「うん?」

「マリスタと知り合いなんスか。初対面じゃ……ない感じっスよね」

「ああ……まだ自己紹介途中だったよね。俺は、」

「サイファス!」

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