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 ば、と不機嫌に振り向くシータ。

 次いで皆が見ると、そこには色あせたTシャツとカーゴパンツをりの絵の具で汚したリアと――劇の稽古けいこを終えたばかりのパールゥがいた。

 しかめっつらのシータの頭に、リアがぽんと手を乗せる。



「こら。誰にでもきばかないの。子どもみたいだよ」

「う……うっさいわよ。わかってるのだわそんなの」

わかってくれたならよし」

(落ち着かせた……この二人、いつの間にこんな関係になったのかしら)

「パールゥ、これパフィラ気絶したんだけどどうしたらいいと思う?」

「気絶?!……何があったの……」

「このへん寝かしとこ。ふふん、何ってこの時期よ? こいつに決まってるでしょっ」



 び、と再びエリダがチケットを取り出す。

 パールゥは少しだけ目を丸くし、「なるほどね」と苦笑しながら肩をすくめた。

 やっとロハザーの小指を解放したヴィエルナが会話のに戻ってくる。



「面白いの? ライブ」

「面白いんじゃないのよキース。『可愛い』の」

「かわいい?」

「リリスティア・キスキルちゃん。スタイルではあたしの勝ちだけど、あの清楚せいそさとはかなさ、にじみ出る美少女感。くやしいけどメチャ可愛い。女の私でもおがみたくなるくらい可愛いのよ」

「ハッ、スタイルでは勝ってるって。お腹ヘコませてから言いなさいだわよ」

「シャラップシータ!!!」

「こっちのセリフよ声デカはらプニ!!」

「ケンカしない」

「わかる。分かるわよエリダ。ホントにリリスちゃんは可愛い。なんかこう、全部の動きが可愛い」

「かわいいけど……そんなだった、かな」

「キースあんた、近くでリリスちゃん見たことねぇだろ」

「ないけど。実技じつぎ試験しけんでも当たったこと、ないし」

「そうなんだよね、あんなカワイイのに義勇兵ぎゆうへいコースなんだよねリリスちゃん。僕が義勇兵コース辞めないのは五割くらいリリスちゃんが理由だってくらい」

「チェニク、君……恥ずかしくないのか言ってて」

愚問ぐもんだよテインツ。リリスちゃん親衛隊しんえいたいである僕をめないでもらいたいね」

「ナメないでもらいてェな!」

「お前もかビージ……」

「そ……そればっかりじゃないんだよ、キースさん。リリスちゃん、歌もすっごく上手なんだから」

「そう、僕はそこを応援してるんだ。このリシディアで、純粋じゅんすいにあの歌がどこまで通用するのか見たいんだよ」

「かァ~カマトトぶりやがってよテインツてめー」

「か、カマトトぶってない!」

「歌……私も、歌は好き。そういえば、聴いたことある」

「そっかー……一緒に行けたらよかったのにね、キースさんも」

「あら。パールゥも当たったの? チケット」

「……えへへ。実は、そうなの」



 見透みすかしたような声音こわねで言うシスティーナに照れくさそうに返し、パールゥが椅子いすけていたベージュローブのポケットから、ウィザードビーツのチケットを取り出す。



 二枚・・



『――――――――』

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