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 マジギレるシータをよそに、部屋中に見せびらかすようにチケットを高らかにかかげるエリダ。

 舞台セットの立てられた演習スペース、そのあちこちから歓喜と悲嘆の入り混じった声が木霊こだました。



「くそ……僕だって警備担当の時間じゃなければチケットの抽選ちゅうせん応募したのに……こんなくやしいことないよ」

「ま、頑張ってこいやテインツ君。リリスちゃんの歌声と艶姿あですがたは俺とチェニクの肉眼にくがん網膜もうまくにガッツリしっかりとらえてきてやんからよ……!!」

「この時の為にコツコツめといたんだ……物販ぶっぱん、いの一番に並んで一気に放出するから待っててね……リリスちゃん……!!」

「ビ、ビージ、チェニク……その気迫きはくはキモいぞ」

「うるせぇキモさなんぞ気にしてられるかッ!!」

しはでられるときにでるッッ!! 君みたいにワンチャンなんて狙ってないからこそかもし出せるキハクもあるのさっっ!!」

「ま、こいつがワンチャン狙ってんのはアルテアスだけ「ううううううるさいぞお前らっ!!!! なんああなん、何いきなり言って――」

「ぬふふ、なーんの話? 私のこと? にへへ」

「なんっっっでもないから!!!!?」

「も~っ、そんな叫ばなくても聞こえるってぇ。へへっへぇ」

「あ、あぁゴメン……?」

「あら、マリスタ。なんかすごく気持ち悪いわね。何かうれしいことでもあったの?」

「めへへへぇ、わかるぅ?」

罵倒ばとうにも反応しなかった……相当ゆるんでるわね)

「どうしたの、マリスタ」

「えへへぇ。見てくださいよヴィエルナちゃん、みなさんっ! ほらっ!!」



 びっ、とマリスタが後ろに隠していた手を前に出す。

 握られていたのは、



『なっ――――』



 プレジアの歌姫リリスティア・キスキルを中心とした楽団バンド、「ウィザードビーツ」の前夜祭ライブチケット。



 が、二枚。



『二枚ィ!??!』



 ロハザーとパフィラの声が――否、恐らく他にもスペース中から大勢の声が重なったであろう――すさまじい声量となってシータの鼓膜を打ち震わせる。

 マリスタは相変わらずのほうけたニヤけ顔で、確かに二枚存在するウィザードビーツのチケットをぴらぴらとさせた。



「ふふゅふ。まさかわたしもね。とれるとは思っちゃいなかったのよ。まあワンチャンとれれば? くらいに思ってたら? 神様っているものだねぇ~ぇへへっへえ」

「今この時をもって神は死んだ!!!!! 勝負だマリスタテメー!!! チケット賭けて俺と勝負しろおおおおおおおッッ」

賭博とばく禁止きんし

「いでででででででヴィエルナおめ小指だけつかむないたいたい!!」

「わたしのため?!?!?! マリスタそれわたしのため??!!??!」

「え? あ、あ~……ごめんね、パフィラじゃないの」

「がーー??!?! ん」

「うわアブな?!……気絶したわよパフィラってば」

「一生気絶させてればいいのよそんなチビデコ!!!」

「……すごく怒ってるね。どうしたの? シータ」

「なぁによっ!」

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