第33話 忘れようのない、たいせつなひと

1

「じゃじゃあああああああ~んんっっ」



 びらり、と。



 エリダ・ボルテールは、一枚の紙きれを全員の顔の前に突き出した。



「……何も起きないわよ。もしかして不発? あわれだわね」

「そんな一発ギャグスベッたみたいに言わないでくれる?! 誰が魔法符まほうふ出してるのよ、よ~~~~く見てみなさいこの!! チケットを!!!」

「チケット?」



 エリダの持つチケットにシータが顔を近付ける。

 星が散りばめられた中に、とんがり帽子ぼうしをかぶりホウキに乗った人物のシルエットが横から描かれた、黒いデザインのチケット。



「……ァー」



 それを見ただけで、シータには大体の見当がついた。

 何しろ、



「あああああああああああああああああああああああああ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っっっっっっっ!?!?!?!??!?!! 『うぃざび』のちけっとーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」



 …………朝一から今現在に至るまで、このパフィラの絶叫ぜっきょうみな、散々聞かされていたからである。



「う――――るっっっっっっさいんだって言ってるでしょうがパフィラあんたねっっ!! 何回私の鼓膜こまくを傷つければ済むって言うのだわよこのアンポンタンはっっ」

ひっはんないふぇーひっぱんないでー!!!」

「うるさいうるさい!! ああもううるさい、ホンっっとにあんたは! あんたはっっ」

「だ、だーほら! マジギレはやめてやんなさいってばシータ!」

「ふんぬぅぬぬっ……!」

「うひー。いてかった」

「っ、大体エリダ! あんたもこうなるって分かってんでしょ、そんなの・・・・をコイツがいる前で見せびらかさないでッ! なんでまったく興味も無い私がこんな不快にならないといけないのホント腹立つんだけど!!」

(マジギレ……)

「わかるっっ!! その気持ちほぉぉ~~~~っっんと分かるぞォ、ロックコールよぉぉ~~~」

「エリダだれこれ?」

「ロハザー・ハイエイトだよっっ?!! なんで一ヶ月も一緒に出しモン作ってそんな覚えてねーんだよ!!」

「おまえも外れたのかー!?」

「そして知らない人をお前呼ばわり?!?! や、ま別いいけどよ…それはともかくそーなんだよー!!! 俺もハズれちまったんだよぉ~~~ウィザードビーツのチケットぉ……!!」



 床に伏してさめざめと泣くロハザー。

 その横で、死にかけの虫のように仰向あおむけでバタバタと暴れて笑うパフィラ。

 システィーナが苦笑しながら、こめかみに青筋を立て目を血走らせ始めたシータの耳を塞いだ。



「触るなッ!!」

「いゃん痛いっ」

「ふっふっふ。しかし、これだけの阿鼻叫喚あびきょうかんを生み出すだけのすばらしさがあるのよ。このチケットにはねっ!」

「しまえって!!!!」

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