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「忘れ物を取りにね。でもいやぁ、密会みっかい目撃しちゃって何取りに来たのか完全に忘れちゃったよ」

嘘吐うそつけよ。何も取りになんて来てないんだろう」

「キースさん、小道具の修理は間に合った?」

「うん。君がわざと折ったところ、ちゃんと修正できたから」

「二人して疑念の目だなぁ……夜中にこっそり抜け出してくルームメイトの調子が気になっただけじゃないか」

「『少し空けるぞ』と声をかけただろうが」

「だからって何も舞台セットで薄暗い中で話さなくても」

「他人に聞かせる話じゃない」

「あ、じゃあキースさんは他人じゃないんだ」

げ足を取るな。要件を言え」

「ほんと、心開いてない相手には冷たいんだから……ま、仕掛しかけてあった記録石ディーチェを避けたってとこかな?」

「……知ってたのか」

「いやいや、分かってて外さない君も大概たいがいでしょ。変態か何か?」

「解除に割く労力が勿体もったいなかっただけだ。あれは破壊するにも手間がかかり過ぎる」

「そして、僕が来てからは僕の監視かんしのために丁度良かった?」

「…………」

「ま、いいや。死ぬほど手間だったけど、君が抜けだしてからの時間で何とか全部外しといたから。ここに来たのはそれからさ。君等の行き先は、学祭がくさい警備けいび担当たんとう発表の時に小耳にはさんでたからね」

「……それも趣味、わるいね」

「まったく罪深い小耳だよね。ま、コーミレイさんに話を売ったりはしないから安心して。ついでに、彼女はここには来てないよ。記録石ディーチェ外す前、別の場所の名前つぶやいといたから。今頃は七層の男子トイレ辺りじゃないかな」

「鬼かお前」

「なぜ男子トイレ……?」

「彼女からは既にめちゃくちゃ嫌われてるから、今更さ。それに、君らの恋の行方なんて特に興味ないよ。ドロドロしてた方が僕好みではあるけど」

「げどう」

「死ね」

「どういたしまして。……さてと、そろそろ眠気も冷めてきたし、本題に入るね。アマセケイ君」



 ギリートの笑みがするどくなる。

 奴は俺達を通り過ぎ、舞台ぶたいセットのステージの上へとのぼった。

 呼名こめい違和感・・・するど察知さっちしたらしく、ヴィエルナがまゆひそめて俺を見る。



「僕、気になってるわけね。君がどうしてそんなにモテるのか」

御託ごたくはいいから核心かくしんを言え」

「核心だよ。君はモテ過ぎる。ティアルバー君と戦った時も、いつの間にかほとんどの人が君を応援おうえんしていた」

「……?」

「『平民』、教師、貴族、風紀委員……ほとんど全員がだ。君に近しい人間なんて、度を越してるんじゃないかってくらい君を信用してる。愛してるって言った方がいい?」

「……また『信用』か」

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