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「というか、赤の他人の為によくやるわよねぇ、あなた達。恐れ入るわまったく」

「シータなんか考えなさいよ」

「なんで私がそんなこと、メンド臭い。人間なんて三大さんだい欲求よっきゅうかたまりなんだから、食欲睡眠欲すいみんよく性欲せいよくのどれかを満たしてやればあっという間に元気になるんじゃないの知らないけど」

「せっせせ、せ?!?」

「で、出来るワケないでしょンなこと!!!!」

「シータがえっちー!!!!」

「っ?! こ、殊更ことさらに性欲にだけ注目してんじゃないわよ三バカ!! 私はものの例えで言っただけでしょーがっ!」

「うーん。でも案外いいかもしれないわね」

『システィーナ?!?!』

「うふ。……じゃなくて、『元気がないときは好きなことをする』ってことよ。例えばそう、趣味しゅみとか」

「しゅみ?」

「趣味かー」

「しゅん」

(パフィラのくしゃみ可愛かわいい……じゃなくて)、そう、趣味とか。あーでも、アマセ君の趣味と言われても……」

「……うーん。勉強と、戦いの訓練?」

「…………マジっぽいから恐ろしいよね、アマセって」

れ男だわね」

「……知らないだけなんじゃないかな」



 リアが静かに言う。

 マリスタが解せぬと彼女を見た。



「知らない?」

「うん。楽しいこととか、趣味を持つこととか。劇の主役だって、結局一度も音を上げたり、役を降りたりしなかったんだよね。やったら意外とのめり込むこととか、あるかもしれない。私もそうだったし」

「……って、成り行きで美術部に入ったら大成たいせいしたリアさんが言ってるのだけど。どう、マリスタ。アマセ君に紹介したいこと、何かある?」

「あんたが一番知ってるでしょ、そういうの」

「と、言われても……う」



 じ、と五人の視線が自分の下に集まり、マリスタは体を血がのぼってくるのを感じた。

 実技じつぎ試験しけんから誰かに見られることの増えてきたマリスタだが、それまでは「その他大勢」でいることが多かったのだ。



(そうよ。私はこうしてみられる側じゃなくて、どっちかといえば――――)



「――――――あ」



 目を丸くして、マリスタが声をらす。



 みんなで行けて。

 驚くかもしれず。

 知らないことだらけで。

 もしかすると、趣味になるかもしれないこと。



 全てを兼ね備えたイベント・・・・が間近にせまっていることを、マリスタは唐突に思い出したのだった。




◆     ◆




伝達でんたつ事項じこうは以上だ。何か質問は?」

「…………」



 だまって手を上げる。

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