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「ここまで『動揺どうよう』という言葉を体現たいげんした人もそうないってくらい見事な動揺ね……やっぱりマリスタは面白いわ」

「う、うるさいっ!」

「システィーナ。マリスタが可哀かわいそう」

「分っかりやす過ぎんのよ、こいつは。大体あんたね、そんなに動揺しちゃうくらいなら」

「エリダの言う通りだわ。さっさと告っちゃえばいいのよ」

「こ、こここここくっ?!?って、そうじゃなくて――――ケイが入ってるとか入ってないとか、そっちの方が! 一体何の話かって聞いてるのっ!」

「そのまんまの話だわよカマトト。さっさと腹決めないと、あなた――――アマセ君取られちゃうかもよ?」

「と――」

「――――」



 一瞬だけ真顔になるシスティーナ。

 彼女の視線の先で、マリスタは一度だけ大きくまばたきして――あからさまな、取りつくろった笑みを作った。



「――取られるとか、私はその。考えたことも」

「ふぅん。いいワケね、あんたはそれで」

「い、いいも悪いも。私が口はさむようなことじゃないくない? パールゥが頑張ってる、でもケイがそれを受け入れるかどうかは分かんない。ただそれだけのことで」

(!)

「――私達、『パールゥ』だなんてヒトコトも言ってないのだわよ」

「っ、ぇ、」



 シータがじ、とマリスタを見る。何かを言おうと口を開けたまま固まるマリスタ。

 あたふたとするエリダ。と一緒になって動くパフィラ。

静観するリア。



「や、だから……私は、別にそういうの、考えたことも」

「考えてるからこそ――」

「シータ。そこまで」



 システィーナの声が、ぴしゃりとシータを止める。

 シータは何か言いたそうに口をとがらせたが、笑ってそれに従った。



「ま、いいわ。ほっといた方が面白くなりそうだものね、あなた達」

「シータ。……ごめんね、マリスタ。変にそそのかしちゃって」

「う……ううん、別に全然いいんだけど……な、何々。もしかして、もうパールゥ、ケイのやつに告白しちゃったとか?」

「や――いや、まだそこまではいってないのよ。でも、」

「カップルになるのも近いかもしれないってことだー!」

「ふ、ふーん……そっか。たはー、頑張ってるなぁパールゥってば。私なんて、学祭関連の仕事でいっぱいいっぱいなのにさ」

「確かにね。私も今、学祭の仕事で手一杯ていっぱいだし――パールゥ、本気なんだろうな。きっとこの学祭で決めるつもりなんだと思う」



 リアが手にした手帳をパラパラとさせながら言う。

 みなまで言わずとも、全員が理解した。



 パールゥは、だい魔法祭まほうさいの期間中に告白するつもりなのだろう、と。



『…………』



 皆が沈黙ちんもくする。

 集まりによっては、もっと盛り上がりを見せてもいい話題。

 だが、それは話題の対象がグループ外の人物であればの話だ。



 誰か一人でも、「身内」の人間がいれば――――その話題は、決して立ち入りを許されない地雷原じらいげんと化す。

 少女たちは、暗黙の内にそれを恐れているのである。



 故に。



「……でも、最近本当にアマセ君、元気無くなってるよね」



 システィーナは、話題を全く別の方向にシフトさせることにした。

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