8

 圭が去ってだいぶ経つというのに、彼女はまだ転移てんい魔法陣まほうじんの方を見つめていた。



「単なる奥手おくてだと思ってたのに、あの子があんなしたたかなタイプだなんて想像もしなかったのだわよ。気持ちをあんに、暗に伝え続けて、でもハッキリとはまだ言わない……見かけによらず策士さくしだわ、恐ろしい子!」

(シータがめずらしく饒舌じょうぜつ……ホントに楽しいのね)

「さ、さくしってどういうことよ。あいつもキッカケを見計らってるんじゃないの?」

「あんたじゃないのだわあの子は。あれはタイミングを見てるんじゃない。自分を意識せずにはいられないように、少しずつアプローチをかけていってるのよ。真綿まわたで首をめるように、毒を少しずつ体にしみこませるように……」

「殺す気じゃないのよそれ?!」

仕留しとめると言いなさい。恋愛はね、りなのよ。あんたみたいに運任せでいる臆病者おくびょうものにチャンスなんてめぐってこないのだわ。周到しゅうとうに準備して、空気の流れを敏感びんかんに察知して、追い詰めに追い詰めて――み付く」

「………………」



 沈黙。



 もとい、ドン引き。



「…………よぉく分かったわ。あんたが偏屈へんくつかたまりのド変態だってことがね」

「はっ、死肉しにくにありつければそれでもいい方にはわからないでしょーね」

「ねえシスティーナこいつキモいしなんかムカツクんだけど!!!!」

「どうどう、落ち着きなさい。ひと同士であいあらそってもミジメなだけよ」

「泣き付いてきたあたしを更にさないでよ?!?! パフィラぁー!!」

「どーん!!!! おおよしよしよーし!! かみもふもふおっぱいむにむにー!!」

「あー、今日はなんだか気分がいいわね。よく眠れそう」

悪趣味あくしゅみ……)

「上手くいってほしいな。パールゥ」



 ずっとパールゥの姿を見つめていたリアが言う。

 「うん」とシスティーナが応じた。



「上手くいってほしい。全部」

「全部? ってなんのことよ」

「全部は全部。アマセ君とパールゥとか、パールゥと――」

「なになに、どういう話してんのっ?」

『!』



 はしゃぎあうエリダとパフィラをのぞいた三人が振り返る。



 衣裳いしょうを脱ぎ、Tシャツ短パンという姿にグリーンローブを羽織はおったマリスタが、汗をきながら近づいてくるところだった。



「ったくもー先生ったら、おどるだけのシーンでもヨウシャないんだからっ。ダンスで感情を表現しろだなんてシロートにはコクだと思わない?」

「お疲れ様、マリスタ」

「おつかれー!!」

「ふふん。今年の学祭では何組のカップルが出来るかって話だわよ」

「ナニまァたそんな話してんの? 飽きないわねシータは」

「フン、カマトトぶっちゃってさ。あなたも興味津々なんじゃないの? その中にアマセ君が入ってるとなると」

「え、」



「え?」

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