5
「んあ、え。あ、はい!!」
「何ボーッとしてるの! もっと気合入れてもらわなきゃ困るわよ! 本番は
「は――はいっ!!」
「…………ボーっとしてたんじゃなくて、その
◆ ◆
「――すまない。手間をかける」
「安心して。間に合わせて、みせますから」
グ、と頼もしくガッツポーズをし、ヴィエルナが演習スペースを去っていく。
パールゥはまた、
「……、よかったね。小道具」
かける言葉をとっさに思い付かず、とりあえず声をかける。
二人だけになっても、圭は彼女に振り向こうとはしなかった。
「ああ。もう足を向けて寝られない。それじゃあ、俺は練習に戻るから」
「今、タタリタの――マリスタのシーンの練習が始まったみたいだから。しばらく出番、なさそうだよ。だ、だからここで」
「そうか。悪い、じゃあ
「そ――そこまでする時間は残ってないんじゃないかなっ」
「パールゥ!」
見え
圭は声を
「……今は一人になりたいんだ、放っておいてくれ」
「あ…………」
――パールゥは、小さく
〝付き合ってられない〟
私は確実に、彼の心を動かし始めていると。
「――うん、わかった。ごめんね、気付いてあげられなくて」
「いいんだ、声を
圭は彼女に振り向くことなく、
その背中にかけるべき言葉を、少女は知る限りの言葉を引っ張り出して探していく。
(ごめんね、ケイ君。でも、私……もう、ガマンしないって決めたの。ごめん)
――彼女が
秘めた想いを誰にも受け入れてもらえないまま、血の海に沈んだヴィエルナ・キース。
強く思った。
「秘めたまま終わるのは嫌だ」、と。
伝えたからには、受け入れてほしい。
受け入れてもらったからには、ずっと一緒にいたい。
片思いは、パールゥ・フォンにとって
(だから、全部するの。私にできることは、全部。――あなたみたいにだよ、ケイ君)
あなたに影響を受けるのは、マリスタだけではない。
あなたを追いかけたいのは、マリスタだけではない。
あなたと一緒に居たいのは、マリスタだけではない。
(――違う。
「――忘れないでっ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます