3



 ――み込まれた剣を無理やり引き抜き、背後に飛び。



『!!?』

「ケイっ!?」

「――――」



 あっけにとられるギリートの首筋に、殺意の一閃を見舞う。



「ケイッ!!」

「アマセ君ッ!」

「クローネッ!!!」

「イグニトリオ君ッ」

「俺は――!!!」



 ――魔剣まけんやいばちゅうを舞う。



 だが構わない。

 剣は常にここ・・にある。



 戦士の抜剣アルス・クルギア



「俺は、まだ戦える――――ッ!!」



 水泡すいほうが、俺を包んだ。



「!!!、?……!!」



 一瞬で水に飲み込まれ、体内に水を飛び込ませてしまう。

 き込み空気を取り入れようと動く体。しかしその反射的行動が、更に水を体内に呼び込む結果となる。



 何が起こったのか分からず、ただただ意識が遠のき始めたその時――水泡すいほうは唐突に弾け、俺は床に――――いな。何かかすかに暖かいものに、体を投げ出された。



 水を吐き出そうとしたが……体内には何もない。

 それどころか体もかわき切り、床もどこもれていない。

 徐々じょじょに頭がえてくる。

一瞬で乾いて当たり前か。さっきのは――



「心は落ち着いた? ケイ――――みんな、ありがとう。一旦いったん休憩きゅうけいを入れましょう、十五分後にダメ出しから再開するわ!」



 ――シャノリアの魔力によって生み出され、そして即座に消された、みず属性ぞくせい魔法。



 舞台中央でシャノリアに抱きかかえられている俺。

 ギリートはとっくに舞台のはじで水などを片手に、漫然まんぜんと俺を眺めている。実にすずしそうな顔だった。



 俺の気も、知らないで。



「……シャノリア、ありがとう。俺ならもう大丈夫――」



 胸倉むなぐらつかみ上げられた。



 シャノリアが鼻先にまで顔を近づけ、



〝お前は終わりだ。天瀬あませけい



 ……近づけ、俺をにらみつける。



「どういうつもりだったの? 今度は・・・小道具こどうぐの剣まで折って」

「……………………すまない」

「あなたは何者?」

「騎士クローネだ」

「さっきのあなたは何者?」

「ああ、解ってる。ケイ・アマセだった」

「あなた、この芝居に参加してるんでしょ? そりゃあ配役は不本意ふほんいだったろうけど、その後は役を一度も降りようとしなかったんでしょ?」

「……その通りだ」

「明後日はもう本番なの。これまでは何事もなく演じられてたじゃない。数日前から急にどうしたのか知らないけど、本番であれはやられると困るわ。とてもね」

「……悪かった」

「役者ならちゃんと演技をしなさい。あなたは今、戦う人ではない」

「ああ。わきまえる」

「……とりあえず、壊れた小道具を修理できるかどうか小道具係で話し合って、早急そうきゅうに結論を頂戴ちょうだい。動ける?」

「ああ、大丈夫だ」



 立ち上がり、シャノリアから離れる。

 視線をひとめぐりさせると、俺をながめていた者達がそろって視線をらした。――ギリート以外は。



「アマセ君」

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