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 ……あまり真面目過ぎるこいつを見ると違和感いわかんがあるのは、俺の感覚が麻痺まひしているからだろうな。

 とにかく指示通り、上半身裸の状態になる。

 多少は肉がついてきたものの、食の細さゆえか相変わらず細い体だ。本に書いてあった内容を試してはいるんだがな。誰か手本になる者でもいればいいんだが。



 冷たい手がひたいに置かれる。

 まるで医者が行う触診しょくしんのように――そういえばこいつ、医療いりょう技術ぎじゅつは本当に持っているんだろうか――、リセルはその冷たい手で首筋、脇下わきした、心臓部など、様々な所に手を置いては目を閉じ、魔力回路ゼーレ意識を送り込んでくる・・・・・・・・・・



 その感覚は俺にも解る。

 魔力回路ゼーレの中を、血流けつりゅうのような何かが駆け巡っていくかすかなものだが――この微かが、俺とこいつの間に余人よじんとはことなるつながりがあることを確信させてくれる。



 しかし、こうまで切迫せっぱくした表情で確かめていることというのは…………もしかして、あれ・・に関係するのか。



 リセルが目を開けた。



「………………」

「リセル」

「……なんだ」

「お前、最近俺との意識のパスを意図的に閉じてるよな」

「…………」

すきあらば俺の意識に入り込んできたお前が、この二ヶ月何の音沙汰おとさたも無いとはめずらしいじゃないか。体調でも悪いのか?」

「いいや。私は病気などにかかったことは一度もないからな」

「……じゃあもしかして、『痛みの呪い』の影響がお前にもあるからなのか? だとしたらすまない。らない苦労をかけているな」

「……気にするな。辿り着いた結末がその・・・・・・・・・・程度の苦労なら・・・・・・・、安いものじゃないか」

「――――」



 ――――体が固まる。



 胸に触れるリセルの手が止まった。



 リセルを見る。

 リセルが俺を見返す。

 その目はまるで、



〝下らない――――付き合ってられない〟



 まるで、部外者を突きはなそうとしているかのように、冷たくて。



「……どういうことだ」

「そのままの意味だ。これがお前の結末だ」

「だからどういう意味だッ――――――ッ!!?! あ、」



 首がねる。

 のうおくからじわりとつた狂気きょうきに体が硬直し、まばたきが、呼吸が出来なくな



 ――――――呼吸の出来ない口を、リセルがその口でふさいだ。

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