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〝もし、あの子がアマセ君に気持ちを伝えてきたら……一生懸命、言葉を選んで、応えてあげてね。……いつもみたいに、不愛想ぶあいそう無下むげにだけはしないで〟



 ……おいおい。別に今、思い出さなくったっていいだろ。



 教室区画くかく廊下ろうかは、どこもここも学祭がくさい準備の学生でにぎわっている。

 廊下の至る所にも装飾がほどこされ、すでにうちのクラスがやる劇のポスターもられている。

 学祭本番まであと一週間。たった三週間程度ていどしか準備期間が無いのはどのクラスも同じなのだから、このさわがしさも当然だ。

 実技じつぎ試験しけんが終わって一ヶ月は、どこを歩いていても誰かがこちらを見て有ること無いことをしゃべっていたが……学祭のムードも手伝い、二ヶ月を過ぎた今となっては、歩くだけで話題になることはほとんど無い。



 だから、誰も見ていない。

 見ていないはず、なのだが……くそ。

 どうも変に、パールゥに置いて行かれている自分を意識してしまう。

 せめていつものように、向こうから声をかけてきてくれれば多少は気安いものを。



 ……イカン。

 これも『痛みの呪い』の作用なのか、どうも最近情緒じょうちょが安定しない。

 ふとしたことで感情が乱れてしまうことがよくある。



 これまでは滅多めったに無かったことだから……きっと呪いのせいなのだと思いたい。

 ただでさえ、感情を激しくすると呪いの発作ほっさが起きるかもしれないのだから。



「アマセ君、大丈夫?」

「っ!」



 ――――パールゥが、先のナタリーとは比較にならないほどの近くから、顔をのぞき込んでくる。対人距離パーソナルスペースなどお構いなしだ。

 心臓に悪いからやめていただきたい――――



 ――心臓に悪いのか? 俺よ。



「少し休もうか?」

「い……いや、大丈夫だ。問題n」

「大丈夫って顔してないよ。ほら、貸して」

「あ……!?」



 パールゥの両の手が、ポスターの束を抱えていた俺の手に重なり。

 そこから手を滑らせるようにして、抱えていたポスターをパールゥにうばわれた。



「ごめんね、全部持たせちゃって。交替こうたい

「や、しかし」

「そんなに大した距離じゃないし。それに、私は図書委員会でいっつも重い本を持ってるんだよ? このくらい、どーんとこいなのですっ」

「そ……そうか? 運搬の名手ラバテインを使っても、」

「んー、本くらいまとまったものだといいんだけど、紙の束には使ったこと無いから……いきなりやって失敗すると、後が怖いよね」

「そ、それもそうか」

「……本当に大丈夫?」

「ああ。大丈夫」

「ふーん……心配だなぁ。アマセ君、すぐ無理を隠そうとするんだもん」

「逆に無理を全部ひけらかすのもおかしな話だろ。マリスタくらいなもんだそんなこらえ性の無い奴は」

「ふふっ、そうかもね」



 どうにか会話の流れを正常に・・・戻し、第二十三そう訓練くんれん施設しせつ辿たどり着く。

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