第31話 最終話

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「……とまあ、こんなところですかね。ポスターはここにあります。美術部のリア・テイルハートさん監修かんしゅうの下、何故なぜ絵心えごころに天性の才能を持っていらっしゃったパフィラ・ロックコールさんが画家がかもかくやといった傑作けっさくを描いてくださっていますので、二人一組で二十部ずつ、プレジアのどこに居ても目に付くよう、バッチバチに張りめぐらせて来てください。場所は覚えていますね。セイントーンさんのペアは、」

「主に教室区画くかくと職員区画だったよね。オーケーだよ」

「よろしい。シータのペアは?」

「一階から三階、エントランスと生活区画……で良かったのよね?」

「よろしくお願いしますね。…………ケイさん、あなたの担当は???」

「………………」

「………………」

「………………ん? なんだ」

「ナンダじゃありませんよねぇ????? 私もうかれこれ十分くらい喋ってるんですけど一つ残らず必要事項だったのですけど。そのかんケイ・アマセさんは一体何を妄想もうそうなさっていたのですかねぇ???」

「別に大した内容じゃない」

「中身いてんじゃねーんですよ起きろ」

「ま、まぁまぁナタリー、私が覚えてるから……私とアマセ君は訓練施設、そして屋上区画おくじょうくかく……だよね?」

「はぁ……その通りです。では散会さんかい制作せいさくがかりとして、名に恥じぬ働きをよろしくお願いしますね、特にそこの木偶でくぼう真昼間まっぴるまから妄想男さん?????」

「……もう稽古けいこ後だぞ。真昼間ではない」

「だから人のげ足を取ってんじゃねーっつってんですよ万年ニヒル男起きろ。ポスターは当然貴方が持ちますよねぇ? 頭の筋肉死んでるならせめて体の筋肉くらい動かしなさいねぇ」

「い、行こっかアマセ君!」



 何やら機嫌の悪いナタリーの前から、そそくさと去っていくパールゥ。

 君子くんしあやうきに近寄らず。近寄っているなら迅速じんそくに逃走が基本だ。というわけで、俺も教室から去っていく桃色を追いかけ――――



「全く。曲がりなりにも参加しているつもりならそれなりに集中しなさいと言うのです。『いたみののろい』などの情報を制限されて欲求よっきゅう不満ふまんだとはいえ、そこまでほうけていては何も身に入りませんよ」

「!」

「…………何ですかそのすっとぼけた目は。私にわからないとでも思いました? 貴方あなた症状しょうじょうで、中途ちゅうと半端はんぱに情報を知る弊害へいがいを考えれば、情報じょうほうが制限されるだろうというのは容易よういに想像出来るでしょうに」

「…………ナタリー」

「お気持ちは解ります。それだけ知識に飢えている貴方あなたが、『知る』ことを制限されるのはこの上ない苦痛でしょう。ですが、だからといって目の前の現実をおろそかにしない。他人に気をませるだけでなく、今回は実際にどデカい迷惑をかけることになるのですから。………………なんですか」

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