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 俺に語って何になる?

 俺にも俺の目的がある。それ以外のことをいくら話されても、俺はもう、



〝激しい運動――本格的な戦闘など、もってのほかだよ。――――そして、〟



「もうわかるだろ? 『無限の内乱』には、このリシディアには。何か、僕たちでは測り知れない大きなやみ渦巻うずまいている。ティアルバーは入り口に過ぎないんだよ。リシディアの中だけで、こんなに解らないことだらけだってのにさ、」

「ああ、もう分かった。分かったから、話はまた今度にしてくれないか。もう寝たいんだ」

「そこにきて君だよ、アマセケイ君。素性すじょうも知れず、目的も秘密ひみつで、ただただ急激に力を付けていく――まったく頭が痛いことさ。だから、」

「勝手にやってくれ。今日はもう疲れたと言っ――――」



 ――――――――待て。



「………………」

「……だから、お返しに僕も君に『なぞ』を与えることにした。どうやらほとんど僕に無関心らしい君に、興味の目を向けてもらうためにね――――」



…………その表情で、確信する。



聞き違いなどではない。

言い間違いなどでも、断じてない。



こいつは今、確実に、自らの意志で、



「――――ケイ・アマセ。いいや、アマセケイ・・・・・君」



――――――天瀬圭の名を、呼びやがった。



「ギ……ギリート、イグニトリオっ、」

「お。やっと興味持ってくれたみたいだね」

「黙れッ! お前、一体俺の何――――ッッ!!」

「ほら、また発作が起きちゃうよ、『痛みの呪い』の。今日はもう寝るって言ってたじゃないか。安心して、僕は逃げも隠れもしないから。これ以上教えもしないけど」

「ギリートッ!!!」

「じゃ、僕は寝るから。ちゃんとシャワー浴びてから寝なよね。じゃ、おやすみー」



 ――ギリートがベッドの幕の向こうに消える。



 俺はベッドに殴り込もうとして――――再び脳を貫いた痛みに、呪詛じゅそにその場でひざを着いてしまった。



 ――――心静かでなければ、何も動けない。



 何も動けなければ、



〝――――そして、すべて忘れなさい。『無限の内乱』も、『痛みの呪い』も。君の心を乱す事実のすべてを、今後知ることは一切許さない。何一つ、知ってはいけないよ。アマセ君〟



 俺は、何も知ることが出来ない。



何も知るな・・・・・だと…………俺に…………この俺に……ッ!!」



 ――閉じていく。



 俺の世界は、また急速に、閉じていく――

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