3

「攻撃して体を欠損けっそんさせ続ければあれ・・は動けません。兵士長、今のうちに」

じょうちゃんッアマセを頼む!!」

「!!――」



 二人の頭上を、ブラックローブが飛ぶ。

 即応そくおうしたペトラが地をり、何の確証も無いまま圭のどうを抱きかかえ、瞬転空アラピドで空を蹴り引っ張ると――圭はあっけなく不可視ふかし磔架たっかを脱し、ペトラの腕の中に力なくぶら下がった。



 無論、襲う狂気きょうき



「ぐッ――一体何だと――!!」



 たまらず、その勢いのままスペースから離脱りだつしていく銀髪。

 黒髪のトルトは同刻、ナイセストに辿たどり着き、



「悪くッ……思うなよっ!」



 重い拳を一撃、置くようにして――ナイセストのあごを叩き折った。



 ぐりん、とナイセストの首が拳の勢いのまま回った瞬間。

 髑髏を形作っていた赤銅の魔素まそは、全て粒子りゅうしとなって霧散むさんした。



 頭上から伸ばされていた髑髏の手は、すんでのところでトルトを捕らえはしなかった。



「……、……………、」



 トルトに降り注ぎ消えていく魔素。

 精悍せいかんな顔立ちの男は体をビキリと硬直こうちょくさせ、意識を自身の内に放り投げられる。



「――――――――――ッッ、」



 在るは常闇とこやみ

 泥のようにまとわりつく闇。



(…………俺は)



 否、それは――――本当に闇であったのか?



(…………こいつ・・・を、知っている?)



 じわり、と脳を侵蝕しんしょくする痛み。

 やがて記憶にハッキリと赤銅が映ったとき――――トルトを現実へと引き戻したのは、高らかで耳障みみざわりな初老しょろうの男の笑い声。



 男の周囲にいた者達はそのあまりにも場違いな様子に閉口へいこうし、その嫌悪はゆっくりと――怒りに変わっていく。



「……この状況で笑うとは。やはり・・・貴方あなたわからない人だ。ディルス・ティアルバー」



 プレジア校長、クリクターは目を閉じ、疲れ切った声でそうつぶやくと――どこか悲痛をにじませた――苦々にがにがしい顔でディルスをにらみ、告げた。



「皆さん。ディルス・ティアルバー、及びナイセスト・ティアルバーを確保かくほしてください。彼らを……拘束こうそくします」

『!!!』



 会場が静かに騒然とする。



 クリクターが放った言葉。それはまるで――犯罪者に告げられるそれ・・のような圧を持ち。



 生徒達の誰一人、学校長の言葉の意味を理解できないまま――――じりじりと詰め寄っていた教師たちによって、ディルス・ティアルバーは取り押さえられた。

 ディルスは抵抗ていこうの一つも見せなかった。



 ナイセストを腕に抱えたトルトが、クリクターへ近づく。

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