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 俺の名はケイ・アマセ。

 またの名を――大英雄だいえいゆう騎士きしクローネ。



 演目えんもく英戦えいせん魔女まじょ大英雄だいえいゆう』の準主役・・・、……である。くそったれ。



 決して、望んで手にしたものではない。

 当たり前だ。俺はそもそも祭りなんぞ興味はないし、大体実技じつぎ試験しけん以後いご、体調も慢性まんせいてきに悪いときてる。この上芝居しばいなんぞしたら、それこそぶっ倒れてしまう。

 そも一応復讐ふくしゅうを心に決めて生きている身で、恐れ多くも青春のし過ぎ・・・・・・などでぶっ倒れていい道理があるものか。



 ……はあ。

 寒い。



「はい、腕のばしてねー、そうそう」

「ちぇ、チェーンリセンダさん。あ……アマセ君の腰回り、測り終わったよ」

「ありがと。じゃあ次は、頭をお願いしていい?」

「あ……は、はーい……えっと。失礼、します」



 鼻の頭にわずかな雀斑そばかすのある少女が、息をみながら俺を正面至近しきん距離きょりから見つめる。

 やがてまばたききと共に気持ちを切り替え、その視線は俺のひたいへと移った。柔らかいじゃくに頭が締め付けられる。その顔はまだ赤い。

 ……見たかったんだろうな、俺の顔。

 よそおいやさりさなど打ち捨てたガン見だったが。

 よっぽど好きなんだろうか。



 注視してみれば、衣裳いしょうがかりチーフのシスティーナ以外の女子達は、皆ドギマギしながら衣裳の採寸さいすんをしているように思える……男子の衣装は男子がする、とかそういう配慮は考慮されたのだろうか。衣裳係が女子のみでも苦慮してしかるべきではないだろうか。



 しかし、彼女らの戸惑いには多分に――――この衣裳の露出ろしゅつも関係しているだろう。



 演目『英戦えいせん魔女まじょ大英雄だいえいゆう』は、のちに英戦の魔女と呼ばれることになる伝説の魔女タタリタと、その「魔女まじょ騎士きし」クローネとの史実をもとにした戦記物語だ。

 その話は、二人の少年しょうねんから幕を開ける。

 故に俺が着ているのは、騎士と言われてまず想像されるような甲冑かっちゅう姿すがたではなく……なんというのか、例えるなら古代ローマの貫頭衣かんとうい、トガというやつだろうか。

 いわゆる布一枚を体にまとっているような、あの状態である。



 もちろん下着は着ているものの……逆に言えば布一枚の下は下着のみだ。

 そんなもの、同年代の同性であれば男女問わず近付くのがはばかられる状態には違いないだろう。

 だから、

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