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「はいはーいそれでは本日も私の体重くらい軽い気持ちでいってみましょーうっ。『今日の英雄サマ』のコーナーっ☆」



 ……クソまぶしいフラッシュの連射れんしゃが、振り向いた先の記録石ディーチェから発される。

 頭に昇る血を感じながら目を開け――――最近(いや、昔からそうだが)顔を見るのもウンザリなその女、ナタリー・コーミレイに目線を合わせた。

 トレードマークのピンクニットぼうに、白のスキッパーシャツと黒のパンツという、飽きもせずの「デキる女」スタイルに胡散うさんくさ過ぎる笑みを貼り付けて、奴は俺の視線に微笑ほほえみを返した。



「それでっ? ナイセスト・ティアルバーさんをプレジアから追放した今のご気分はっ?☆」

「ナタリー。それ千回目」

「数えてたのシスティーナッ!?」

「いや、聞き過ぎって言いたいだけでしょシスティーナは……でもそーよ、アタシもそれ聞き飽きたわよ、ナタリー」

「アマセ君、気にしてるし。やめた方がいいと思う」

「あらまぁ、傍若ぼうじゃく無人ぶじん気取ってるクセに気にしてらっしゃるんですかいっちょまえに?☆☆ そのまま胃でも病んで床にいていた方がいいかもしれませんよぉープレジアの為にもっ☆」

「もーナタリーってば、事あるごとにケイに絡むのやめなよね」

「ちょっとその言い方はしていただけますマリスタ? 好きこのんでこんなことしている訳ではないのですから。あくまで委員長いいんちょう命令めいれいなのですっ。私っ、報道に生きる女なのでッ☆」

「んはは! でもなんか楽しそうだよねーっ」

嬉々ききとしてやってるようにしかみえないってば……」



 苦笑しながらシスティーナ。

 ナタリーはハァ、とこれ見よがしに溜息ためいきをついて笑ってみせ、俺の横自分の席へと座った。



「何が楽しいものですか。私は報道に生きていると伝えたはずですよ。言わば真実の奴隷どれいというやつです。時代の闇に隠される真実を常に探求し、無知むち蒙昧もうまいなる民草たみくさにお伝えするのが至上しじょうの使命なのですっ☆」

「だから英雄になったケイを追い詰める程取材するって? ナタリーあのね、それじゃゴシップ記者となんも変わんない――」

御冗談ごじょうだんをマリスタ。それ・・は、英雄でもなんでもない・・・・・・・・・・ではないですか」

「え……な、何言うのよナタリー。ティアルバー君を倒したのは間違いなくケイ――――」

「何を言ってるんですか。ティアルバーを倒した・・・・・・・・・・のは彼じゃない・・・・・・・英雄えいゆうと呼ばれるべきはケイ・アマセではないでしょうに。真にナイセスト・ティアルバーを倒し、このプレジアに平穏へいおんを取り戻したのは……」

「僕とアルクスの人たち、だよね」

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