連鎖――――つながりのちから



「――――――、」



「がんばって、アマセ君……」

「そんなショボい声じゃ届かないのだわよ? リフィリィさん」

「ッ、シータ・メルディネス――――」

「ここ一番キバんなさいよアマセ君――――ッッ!!!!!」

「ッ!?」

「……このぐらいやんないとだわよ。そうでしょ、『平民』さん?」

「……余計なお世話よ、『貴族』さん――がんばってっ、アマセ君ッッ!!!!!!!」

「う――うっさいな、もう……!」



 そんな熱気に。



「がんばれ、がんばれッ……がんばれアマセッ!!」

「おォ? なによアトロ」

「っ、え、エリダ・ボルテール」

「散々アマセをバカにしてたクセに、応援する気になったの?」

「……一回戦、見ただろ。俺達の友達はティアルバーに……めちゃくちゃにされた」

「……ケイミーのことね」

「目が覚めたよ。許してたまるか、ナイセスト・ティアルバーを……あの図書室前でのさわぎのとき、保身ほしんためにアマセを売った俺自身を。だから――お前が頑張り抜いたら、次はきっと、俺の番だから。俺も――変われる気がするから。だから、」

「うっしゃ!!! んじゃひと一倍いちばい気合入れて応援するわよアトロッッ!!!」

「――――ああっ!!」



 あっけにとられて立ち尽くす魔女まじょが、ひとり。



滑稽こっけいなことだ。五月蠅うるさくてかなわん」

「これが人間の営みですよ、ディルス殿どの

「営み?」

「我々は実に弱い。強きに流され、分かっていても愚行ぐこうに走る。時に傷つけ合い、未曽有みぞう惨劇さんげきまねくことさえ。でも、こうして団結し、皆で同じく希望にひた走ることも出来る」

「……説法か。呵々かか、実に学び舎のおさらしき行動だ。気の毒にな。もう間もなくその希望もついえるというのに」

「…………」

「どいつもこいつも。凡百ぼんぴゃく共めが、相手を誰だと思っているのか。あの場に立つのは我がティアルバーのすいを集めた最高さいこう傑作けっさく、」

「そして一人の人間です」

「――…………」

「たったひとつの心と体を持つ、ちっぽけな一つの命なのです、ディルス殿。いくら力が、技術があろうと、その事実は動かない」

「…………」

「確かに。貴族にあって、そのほかの者に無いものは沢山たくさんあるのでしょう。だがその逆もしかりです、ディルス殿。我々人間は弱いがゆえに、『つながり』を作る力を持つことが出来るのです。その力は、」



 プレジア学校長――――クリクター・オースはディルス・ティアルバーに微笑ほほえんだ。



「――つながる気持ちは、時に実力を超えた力を人に与えるのですよ」




◆     ◆




 熱が口からこぼれ落ちる。



 それは血液。

 限界を告げる赤のまだら



「ご――ァ――!!」

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