伝心――――お前が奴を信じるというのなら



「が――――がんばれっ、」

「!? な、」

「がんばれ――がんばれアマセッ、がんばれ――ッ!」

「チェ……チェニクお前っ、何をトチくるっ……!!」

「いけっ!」「そこだぞっ!!」

「!――――!!?」



 ビージが振り返る。

 そこには、新たに近付いてきた風紀委員が二人、



「て――てめぇらっ、」



 四人、七人、



「何考えてっ、俺達は風――――」



「いけアマセッッ!!」「ここまできたんだ後は押し切れェッッ!!!」「いけいけいけいけいけいけいけェッ!!!!」「倒せ!!」「届けええええッ!!」「お願いっ……!!」「がんばって!!!」「やっちまええええッッ!!!」「この世界を、」「今のプレジアを」「ティアルバーさんの支配なんかっ、」「ぶっこわしちまえええッッ!!!」「腕を止めるなァッ!!!」「お前なら出来るって!!!」「あと二、三分だ勝ち切れアマセッッ!!!」

「……………………………………………………、」



 声援の中。

 ビージは、ただ呆然ぼうぜんと立ち尽くす。



「振り続けろっ――剣を振り続けろッッ!!! アマセェッッ!!!」

「~~~~……!!!」



 視線は圭へ、チェニクへ。

 


 そして、テインツへ。



「――――クソっ……!」



 「頼む」。



 それは、ビージがテインツからこれまでついぞ聞いたことのない言葉で。



 彼の境遇きょうぐうを、ビージは知っていた。

 度が過ぎるまでに、力ある者にびへつらい、たとえ虚勢きょせいでもプライドを高く持たなければならなかった理由を、わかっていた。

 解っていたからこそ――



〝現実を見るんだ、ビージ……頼む・・。もうこれ以上、自分を苦しめないでくれ。おとしめないでくれ……お前が壊れていくのを、僕は見ちゃいられない。もう嫌なんだ……僕の前から、大切な人が居なくなるのは……!!〟



 ――救護きゅうごスペースで涙ながらに語りかけてきた友人に、ビージは狂気きょうきからめるほど困惑こんわくを受けたのだ。



 それほどに、大きな意味を持つ言葉を。



頼む・・ッ……勝てッ!!〟



 彼の友人は、きらっていた異端いたんに使った。



 彼らの間に何があったのか、ビージは知り得ない。

 そんな些事さじや細かな機微きび敏感びんかんになれるほど、その大柄おおがらな心は繊細せんさいでもない。



 だが、何があったにせよ、テインツは異端に己をたくした。

 その結果は、異端いたんの手にしかと握られている・・・・・・・・・



 であれば、十分ではないか・・・・・・・



(……アマセ・・・。てめぇは、本当に――)



〝ティアルバーさんを……プレジアを変えろ・・・ッッ!!!〟



「――――ナニ押されてやがんだッッ!!!」

「!? ビージ、君――――」

「うっせーなダマってろ!!――アマセてめぇ、負けやがったら承知しねェからなッ!!! 攻めろ攻めろ、攻め続けろォっッ!!」

「――――」



 せた眼鏡めがねの少年は、小さく笑みを浮かべて大柄に並び立ち、スペースへ声を飛ばす。



 今や、声援せいえんは会場中を包んでいた。

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