化物――――尽きぬは執念



「アマセ……」

『!!』



 見知った声の少年が、スペースの周囲に立っていたビージとチェニクの視線を奪う。

 スペースの壁に手を置き、対峙する赤と白を見つめるのは――――彼らが久しく見ていなかった、剣の持ち主・・・・・の姿。



「テ……テインツ、お前」



 ビージの声に、テインツは反応を示さない。



 彼には、そんな余裕などなかったから。



「ッ!」

「ッ――――!」



 ナイセストが斬る。

 圭が防ぎ、



「ッ!?」



 ナイセストの片膝かたひざくずれ落ちた。



「!?――限界よっ。ティアルバー君は足にキテる!」

「いっけぇっ、アマセ~~~~!!!!」



 圭が放つ一撃。

 ナイセストはくずれた体勢を直しきれず、



 精痕スティオンが光った。



「づう゛――――ァ゛アッ!!!」

「ッ!?ふ、ゥ――!!」



 ナイセストに浮かび上がる、からんだへびのような赤黒い紋様もんよう

 精痕スティオンはナイセストの命を食い千切ちぎ魔力まりょくを生み、彼に更なる力を与え――――その一撃を受けた圭が大きく吹き飛ぶ。

 なんとか着地、たたらをむ圭。



 瞬転ラピド



 いかづちの如き一閃いっせんが圭の障壁しょうへきを打つ。

 瞬時に障壁を解いた圭が大振りの一撃を放ち――ナイセストはそれを、受けた。



「限界なんだ」

「え?」

「ナイセストの魔力はもう尽きてる。正気ならもう立てやしねーはずだ」

「……なのに、やっとケイと互角ごかくなの?」

「ああ……だがこれもきっと、アマセの想定内だろうよ」

「え――」



「想定内?」

「ええ。ケイさんの接近せっきんせんの力は甘めに評価してもヘボクソド素人しろうとです。ティアルバーさんに勝てる可能性などちょうに一つもない。だからこそ、」

「……『ティアルバー君の魔力が尽きた』状況が出来上がるまで、隠していた?」

「しかしお笑いですね。力尽きた相手と五分ごぶの実力なんて、見るにえない焼刃やきばです。……」



 ナタリーがスペースに視線を戻す。

 むすぶのは、同じ舞台に立つ赤と白。



「……付け焼刃でもやいばには違いないのでしょう。折れる前にさっさと突き立てなさい、ケイさんッ……!」



 剣が応酬おうしゅうする。



 どこまでも、応酬する――――




◆     ◆




 氷片ひょうへん

 鉄火てっか

 幾重いくえもの、剣光けんこう



 剣戟けんげきが乱れ飛ぶ。

 激烈げきれつ漆黒しっこく一閃いっせん氷剣ひょうけんが受け流し、鉄火とは違う魔力まりょくの火花を散らす。



 そう。

 魔力を切らしたはずの男から、なおも魔力のたけりが立ちのぼっているのだ。



「チッ……!!」

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