死線――――痛みすら遠のく果てに



「わずかにらしたか。心臓を一突きしたつもりだったが」

「ッ…………お前、その紋様もんよう、」

「初めてだ。精痕スティオンが発動するほどに追い詰められたのは。お前は本当に強かったよ、ケイ・アマセ――――ただ死ね」



 肉が、




                 千切ちぎれる、音がした。



 体からやみやいばが抜ける。



 いな。「抜けた」という表現は、きっと足りない。

 引き抜かれたのではない。

 今の動きは、

この目に映った動作を正しく表すなら、それは、



「っ゛――――あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛…………!!!!!!?」







 腹部ふくぶヲ、ナギ抜カレタ・・・・・・







 真っ直ぐ突き刺さりながら、俺の身体を真横に抜けたつるぎ

 俺の身体が、破れたフウセンのように傷口から――――オビタダシイ、血を、      ゾウモツヲ、吹きこぼす。

 られた場所を、死に物狂いで両手で押さえながら倒れる。

 英雄の鎧ヘロス・ラスタングにあるからか、痛みはそう感じない。

 否。もしかすると痛覚つうかくなど、とっくの昔に死に絶えてしまったのかもしれない。

 だってダメだ。                この血の量は、

 これでは俺は、             こんな血、

 流れていく、俺の全部が、             爆発の時も見たこ   とがなくて、



 死ぬ。

 死んでしまう。



 声が遠のく。

 視界が黒くなる。

 だめだ。

 だめだ。

 だめだ。

 だめだ。

 だめだ。

 死ねない。

 こんなところでは死ねない。

 こんな――――



〝けいにーちゃん〟



 ウゴかない。

 カラダがウゴか無い。

 ナい。

 血が止めラれなイ。



 母さん。

 愛依めい

 父さん。

 オレ。


 リセル。



 こんなとk、ろ、で――――――




◆     ◆




「あれは……精痕スティオンッ」



 校長席でクリクターが目を見張みはる。

 クリクターだけではない。第二ブロックに集っていた教師達全員が今や立ち上がり、有事に備えて身構えている。



 基本的に、監督かんとくかんが動かなければ試合の中断は出来ない。

 だが今回は、すで流血りゅうけつを引き起こした前科・・のある者の試合だ。

 死が容認ようにんされているとはいえ、人死ひとしにが起こらないに越したことはない。

 教師たちは気をんでいた――――目の前の光景を認識していながら、何故なぜあの監督かんとくかん達は動こうとしないのか、と。



「あと五分だ。黙って席に着いておけ、粗忽そこつ共」



 ――もっとも、それは彼ら自身にも言えることではあったが。

 


 スペースから少し離れた場所につくられた、教師用の観覧かんらんせき

 教師たちが苦い顔をしながら目線をった先には――――クリクターの隣の席に座る、ディルス・ティアルバーの姿があった。



 プレジア魔法魔術学校の理事長を務めるディルス。

 彼の支援無しに、プレジアは成立し得ない。

 故に、試合を止めるために教師たちに出来ることは、一つしかない。



「……校長!」

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