逆転――――勝敗は決す



「…………そん、な」

「そうか。ここが中心だった・・・・・・・・か」

「!!!!」

何故なぜ俺が知らないと思った? 俺は風紀ふうき委員長いいんちょう――――あの戦いのことも、ヴィエルナから報・・・・・・・・告を受けていた・・・・・・・



 ナイセストが顔をゆがめる。

 小さく小さく、顔を狂喜きょうきに染める。

そして、



 まるでとどめであるかのように、その名をつぶやいた。



機神の縛光エルファナ・ポース、だったか?」



「――――――――」



 顔面がんめん蒼白そうはく



 それは圭だけでなく、この魔法にすべてをたくしていた三人にしても同じこと。



 機神の縛光エルファナ・ポースは、ナイセスト・ティアルバーに知られてしまっていたのだ。



しかったな、ケイ・アマセ。本当に…………この魔法を発動出来てさえいれば、俺は確実に動きを止められていただろう。本当に、惜しかった」



 ナイセストが闇の鎌剣コピシュを振り上げる。

 圭はゆっくりとそれを目で追い――――やがて、視線さえらしてうなだれた。

 パールゥの悲痛な叫びが、会場にひびき渡った。




◆     ◆




 ……その光景を、僕はどこかで見たことがあった。



〝終わりだよ、能無しの『平民へいみん』。安心して、今……二度と義勇兵コースここへは戻れないようにしてあげるからさ――――!〟



 いいや。

 どこかで見たことがある、なんて曖昧あいまいな記憶なんかじゃ、断じて無い。

 だってあの姿は、



〝…………カメハメハ〟



 僕が奴に敗北はいぼくした異世界・・・の――いや。僕にとって地獄のような世界・・への入口となったあの光景と、あまりにもぎている。



 あの、さも負けを認めたような姿から、奴は――――僕のちっぽけなプライドを粉々にするのに十分すぎる、とんでもない一撃をくれやがったんだ。



「……っ……!!!」



 だから、今度も、きっと。



 そうだろう? アマセ・・・




◆     ◆




馬鹿ばか々々ばかしい」

「……え?」

「……ナタリー。今度は何なの?」

「馬鹿々々しいと言ったのです。アレの茶番ちゃばんも、あんな三文さんもん芝居しばい一喜いっき一憂いちゆうしている貴女あなたがたも」

「さ――三文さんもん、」

芝居しばいって……どういうことよ」

「その他どもはともかく、システィーナとパールゥはアレの大根だいこん役者やくしゃぶりをよく知っているでしょうに。アレがあんな殊勝しゅしょうに絶望の表情を浮かべるわけが無い」

「そ……そんなのっ、分かるわけ無」

わかりますよ」



〝逃げろだと? 諦めろだと?〟



「アレは、この程度ていど苦境くきょうにはくっさない」



〝もう十分逃げた。十分諦めた。誰が俺を止められるものか。止まってなんてやるもんかよ〟



「アレはいつもいつもいけ好かないまし顔で、眼前がんぜんに立ちはだかる壁をことごとく打ち破っていく。これまでも、そしてこれからもです」



〝だから俺は二度と逃げない。二度とあきらめない〟



「アレは止まらない。絶対に、あきらめたりしない――――それが、何を犠牲ぎせいにしても自分の為に生きるというアレの反吐へどが出そうなくさった性根しょうねです」

「……………………」



(…………私のかんちがいかしら、ナタリー。その言い方は、まるで――――)



「さあ――――さっさと終わらせて下さい、ケイさん。この茶番を」



(――――アマセ君のことを、心から信じている人みたいよ?)




















惜しい・・・な。最強」

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