驚愕――――少女の目に見えた『勝機』



 ロハザーがマリスタを見る。

 マリスタは驚愕きょうがくに目を見開いており、やがて――――小さく、強く。あふれこぼすようにして、驚きを笑いにめた。



「な……あンだよアルテアスおめー……気持ちわりィな気でも触れたか? 刺激が強すぎるなら見ねぇ方が――」

「マリスタ。……何だ。何を見つけた・・・・・・?」

「み……見つけただぁ?」



 ファレンガスが眉根まゆねを寄せる。

 彼にはロハザーの問いも、マリスタの驚きもとんと検討がつかない。



「…………気付かなかったの。映像が、ずっと違う・・角度から映ってたからっ」

「もったいぶんな。何だよ、仕掛けてんのか・・・・・・・何かを。あいつはっ」



 それは二人の会話が、天瀬あませけいという人間をっている者にしか成立しないものであるからだ。




「……違う。あれは……あの位置・・・・は、もう仕掛け終わってる・・・・・・・・……!!! でもケイ、それをやっちゃったらあんた……!!」



 驚きと切迫をないまぜにした表情のマリスタ。

 ロハザーは改めて映像に目をらし――――ようやく見えた状況・・に、マリスタと同じく大きく目を見開いた。



「なん……なんだよ、あのは……!?」




◆     ◆




「はぁ……はぁ。間に合ったっ……!」

「ディ――ディノバーツ先生?」



 バタバタと観覧席かんらんせきへと上がってきたシャノリアに、シータが目を丸くする。

 パフィラが頓狂とんきょうな声をあげた。



「シャノリアせんせー! あれ? 試合は??」

「私がいたところはもう終わっちゃったの――――教えて。今どういう状況――――」



 言いながら、観覧席のへりから身を乗り出すようにスペースを見下ろしたシャノリア。

彼女が見たであろう光景を思い浮かべ、システィーナが辛そうに目を細めた。

 彼女の腕の中には、顔を両手で覆ったパールゥが抱きとめられている。



「…………終わり、だと思います、もう。アマセ君、すごい頑張ったんです。ティアルバー君相手に、何度も反撃したりして。でも」

「まぁだどうなるかわっかんないじゃんけ!!!」

「あのねパフィラ、どんなに頑張ったって魔力まりょくれだけはどうしようもないの。無理すればするだけ血ィ吐いちゃうんだから」

「う……ぬ…ぇ……ぅえうう!!!! わたしがチわけるー!!!」

「に゛ゃー! だから飛びかかるなっての!!」

「静かに。二人ともっ」



 ピシャリとリア。二人が言葉を飲み込み、だまりこむ。

 白熱する会場の中、ひとときの静けさが少女たちを包み――――彼女たちの視線は、システィーナの声にまったく反応を示さなかったシャノリアへと向かった。



 シャノリアはいまだ、スペースを見つめて黙ったままだ。



「……先生?」

「…………魔力切れ。なのにこれなの・・・・? ケイ、あなたは」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る