理解――――最強の弱点は『高血圧』

魔力回路ゼーレが完全に不活性化した状態で魔法を使うとなれば、ただの魔弾の砲手バレット一発でもかなりの魔力出力を必要とするはずだ――――俺も知っている。必要以上の魔力が通り、魔力回路ゼーレが焼き切れそうになる感覚を」



魔法理学まほうりがく法則を無視しるほどの魔力出力まりょくしゅつりょく……あなた、魔力回路ゼーレが損傷して内出血だらけだったのよ?〟



「……………………ハ、」

「だがいつもその調子では、お前の魔力回路ゼーレは負担が大き過ぎてとっくに壊れていてもおかしくない…………慣れてる・・・・んだな。お前の魔力回路ゼーレ闇属性専・・・・用にできている・・・・・・・。そうなんだろう?」



魔力回路ゼーレや魔力量を鍛えることは出来ると?〟

〝それなりにすりゃな〟



「ハハハ、」

「闇を所有属性エトスとして持つお前は、魔力回路ゼーレも魔力出力も、それを内包ないほうする肉体も――――闇の魔力消費と『侵蝕』に耐えうる特別製。常人には耐えられない力で血を押し流す心臓と、その血圧けつあつに耐え強靭きょうじん血管けっかん……高い身体能力もその賜物たまものというわけだ」

「ハハハハハッ――――」

「……だったら、どうなる。闇にひそむお前を光にさらしたら。ただでさえ強い血流を更に加速させたら。――――知っているかナイセスト、人類の悩みだ――――高過ぎる血圧は血管を破裂させて、時に人を死に至らしめる」



 ――――――――――哄笑こうしょうが、スペースを満たした。



 観覧かんらん席から歓声が消える。

 最強の高らかな笑い声だけが、スペースに静かに響く。



 ……ついぞ誰も聞いたことのなかった、聞くはずがないと思っていたであろう声。



 いつもの怜悧れいり相好そうごうくずし。

 ナイセスト・ティアルバーは、この上なく楽しそうに微笑ほほえみ、目を見開いた。



「……勝てない訳だ。勝てない訳だ、そこいらの者・・・・・・が。大貴族だいきぞくの後ろだてでも、純血じゅんけつ血筋ちすじでも、特異とくいな魔術でも圧倒的勉学量でもない。お前の武器は、たった一度の応酬おうしゅうで敵の能力を把握・解析し、それを逆手さかてに取る策を練り即座そくざに実行する――――恐ろしいまでの観察かんさつがん洞察どうさつりょく、そして吶喊とっかん行動こうどうを可能にする胆力たんりょくだ。いや――――命知らず、といった方が正確か?」

「馬鹿言え。命はしいさ。俺には生きなければならない理由がある。命知らずに見えるならそれは――胆力でもなんでもない、ただの失策しっさくだよ」

「そうだな。今もこうして、会話を長引かせることで……魔力の回復を図っている」

「………………」

「俺からもいてやろう、ケイ・アマセ……お前、あとどのぐらい魔力が・・・・・・・・・・残ってる・・・・?」

「……関係ないさ。あと少し――――光弾の砲手ライトバレットを十数発でも撃ち込めば、お前は終わりだ。ナイセスト・ティアルバー!」

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