難儀――――そして少女は少年を見つめる



 ヴィエルナ・キースの血溜ちだまりの中で笑うティアルバー。

 ケイ・アマセに見せた「ライバル心」。



 これまで私達がおどらされていたプレジアという舞台ぶたいは、ああも子供じみた男・・・・・・によってしつらえられていた――――そうまるで、玩具おもちゃばこのようにだ。



 こんな不快は、無い。



 要するに。



「……難儀・・な話です。本当に」



 私の中に、今のプレジアを壊したい理由が出来てしまった。



 に協力する、大義名分たいぎめいぶんが出来てしまった。



 大きく大きく、め息が出る。



「一つお尋ねしたいのですが。――皆さんの目は、節穴ふしあなですかっ?☆」

「な……ナタリー?」



 普段ふだん目の奥に多少なりとも見える知性の光をすっかりくもらせて、エリダが私を見る。

 そうまで真に迫っているだろうか、あの大根だいこん役者やくしゃのヤラレタフリは。



「何が言いたいの? ナタリー」

「解らない方には言いたくありませェん☆」



 嘲笑わらい、スペースを見る。

 頭の中で嫌というほど繰り返された言葉を、ここでまた吐き出す必要はない。

 スペースのティアルバーは、クソにあと数歩というところまで迫っているのだから。



 恐らくティアルバーも気付いているだろう。あのクソが、何かしらさくを練っていることに。

 そしてその上で、ティアルバーは……えて無策むさくで、奴のふところに飛び込もうとしている。



 せめて度肝どぎもを抜いてやれ、大根だいこん



 お前が陣を敷いている・・・・・・・ことは、すでに解っている――――




◆     ◆




 ナイセストがゆっくりと鎌剣コピシュをふりかぶる。



 ここだ。



「っ!?!!」



 頭上で砂が爆発する。

 ナイセストがわずかにうめき、後退していく。

 顔を上げる。奴の目は砂でほとんど機能していない。



「く――貴様、『侵蝕しんしょく』をどうやって切り抜け――――」



 教えてやろう、ナイセスト。



 「侵蝕」を切り抜ける方法を。



光弾の砲手ライトバレットッ!!」

『!!!』



 ナイセストが弾けるように飛び退すさる。

 光の連射れんしゃは天井でぜ、強力な光となって会場に降り注ぐ。



「貴様――ひかり属性ぞくせいまで……!」



 やはりだ。

 わかったぞ、お前の身体能力のカラクリが――――!



 瞬転ラピド障壁しょうへきの足場を組み合わせ、スペースを縦横じゅうおう無尽むじんに飛んで奴を攪乱かくらんしつつ――――弾丸を放つ。



 魔弾の砲手バレット

 盾の砲手エスクドバレット

 砂弾の砲手サンドバレット

 様々な効果を持つ弾丸を、不規則に撃ち続ける――――!



「チッ!」



 奴の周囲に闇の弾丸。



光弾の砲手ライトバレット!」



 合わせ光弾こうだんを放つ。

 光と闇は衝突し――――互いを打ち消し合い・・・・・・・・・、互いを吸い込むように霧散むさんした。



「!」

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