独白――――私、世界の俯瞰を趣味にして



 権力闘争などというものに一枚もう、なんて気は更々なかった。

 これは家族でも散々確認してきたことだし、なんなら父母はそれをほこりにさえ感じている部分がある。

 〝集めるのはありのままの世界のみ。決して権力には与せず〟。

 父母がほこりに思うその信念を――私もまあ興味を抱かないではなかった在り方を、とりあえずは守ってきた。



 つまり、絶えず情報を集め続けるのは言うなれば、私の趣味しゅみ――ライフワークのようなものだ。



 だから、ティアルバーが作る世界にも興味は無い。

 この生が続く限り、リシディアという国の行く末にだって、私は特段の情も興味も持っていない。

 ただありのままを調べ、記録し、情報をたくわえる。

 そして、私や私の友人の世界をおびやかす存在が現れた時には、その情報を武器にして退ける。

 守りたいものを、私なりのやり方で守る。ただそれだけ。



 故に、権力にも興味は無い。

 貴族と『平民』の争いになど、関わりたくはない。

 私はこの身に、そして得難えがたい友人達に――――マリスタ・アルテアスにが降りかからぬよう、過ごすだけ。



 そう思っていた。



〝初めまして、ケイ・アマセといいます。よろしくお願いします〟



 ……思っていたからこそ。



 マリスタを不穏ふおんたぶらかし、ともすればみにくい争いに巻き込みかねないクソを滅殺めっさつすることが、これまでの私の、地味な戦いであった。



 戦果は上々じょうじょう



 所詮しょせん、私達は基本的に私利私欲しりしよくにしか興味のない人間という種族だ。

 そしてそのよくは、違法いほうという後ろ暗いどろめの中にまりやすい。



 それら利欲りよくやみを少しはたいてやれば、ほこりのどんでも足りないほどに舞い上がる。舞い上がったわずらわしい埃を、綺麗きれいきな人間達は放っておけないものだ。

 そうやって私は、闇を日の光の下にさらけ出してやることで、私の大切に危害きがいを加えるクソをほうむり去ってきた。



 あの男――いけ好かない金髪黒目エセクールクソ野郎も、そうしてほこりらしながら爆散し、消えせるはずだった。



〝あんたは一体何者なの、ケイ・アマセッ!!!〟



 あの夜に。



 転校してきた当初から、アレがマリスタとシャノリア・ディノバーツに近しいことはいやでもわかった。

 その上、プレジアに来るまでの経歴は一切語れない。

 自己紹介で「自己を紹介出来ない」と自己紹介。

 何のギャグなのか、一体。

 探ってくれと言っているようなものだ。



 そして――あの日あの夜・・・、おぜん立てはそろっていた。

 奴をプレジアにまねき入れたマリスタとディノバーツ。

 純粋じゅんすいに奴の目的が知りたいヴィエルナ・キース。

 私をふくむ、その四人しかいない状況。



 まだ大して話題になっていなかった奴を社会的に葬り去るには、絶好の機会だ。

 私はいつものように、叩いた。

 ほこりはいつものように、舞い上がった。

 それなのに、



〝俺は殺す為にここに来た。家族のかたきを――俺からすべてを奪った魔術師をな〟



 ――――その利欲りよくは、闇ではなかった。

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