焦燥――――届かぬ力




◆     ◆




「はっ……ハァッ……はぁっ……!!!」

「……終わりか? ケイ・アマセ」



 かたほこりはたくナイセスト。

 くすんだホワイトローブとは裏腹うらはらにその目は爛々らんらんとした輝きをたたえ、息一つ切らさず小さく笑ってさえみせている。



 押してるのは俺だ。



 だというのに、こいつは――叩いても叩いても倒れる気配さえ無い。

 これは、もしかすると――



英雄の鎧ヘロス・ラスタングだと思っているのか」

「!――――?」

「違うぞ――もっと頭を働かせろ、ケイ・アマセ!」



 ナイセストがふところに飛び込んできた。

 かざおんを響かせて飛んできた拳を障壁しょうへきで受け、盾の砲手エスクドバレットで打ちはらいカウンターを叩き――



 ナイセストが瞬転ラピド



 背後――――――にも居ない!?



「ッ――――!!!」



 間一髪かんいっぱつ障壁を展開し、背後の背後・・・・・から見舞みまわれたするどりをふせぐ。

 次いで放たれる暗弾の砲手ダークバレット連弾れんだん。地を蹴り大きく後退してそれらを迎撃げいげき――



 また奴が居ない!



「どうした? 動きがにぶっているぞ、ケイ・アマセ」

「ッがっ、っ――――――ッッッ!!?」



 地を転がり、壁に叩き付けられる。

 痛覚が死に絶えそうなほどの痛みが、蹴り込まれた脇腹わきばらを突く。

 まさか肋骨ろっこつを――いや、れても痛みは無い、大丈夫だ。

 それよりも、問題は――



「効いたみたいだな」



 ――何故なぜこんなに痛い。

 英雄の鎧ヘロス・ラスタングの効果は続いているのに――――!



「ヴィエルナの攻撃は強力だった。貴様のこぶしの軽さときたら」

「……!」

「さあ、次はどうする――――ケイ・アマセ!」

「チッ……!!」



 連撃れんげきを障壁で防いでいく。

 だがそう長くはもたない。

 奴の動きに、体がまったく付いていかない――!!



 英雄の鎧ヘロス・ラスタングによる能力の伸びしろは、術者じゅつしゃ基礎きそ身体しんたい能力のうりょく依存いぞんする。

 魔力の出力を上げたところで能力は伸びないし、伸びたところでロハザー戦でのマリスタのように、無駄むだ魔力まりょくを持っていかれるだけだ。



 攻撃が効かないほどの防御力ぼうぎょりょく

 英雄の鎧ヘロス・ラスタング状態でも対応できない攻撃こうげきりょく速力そくりょく



 知らない。

 一体何が作用して、奴の力が急に伸びやがった!?



「ぐッ――――ヅ、ぅぐァ……!!」



 りを防いだ腕の骨がきしむ。

 矢継やつばやたたき込まれるこぶしは、どれもヴィエルナの豪拳ごうけんと変わりない衝撃しょうげきを俺に与えてくる。

 再び防御ぼうぎょを突破されるのも時間の問題だ。



 どうしてだ。

 どうしてこんなにも、身体能力に差が――――

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