意表――――不可視の弾丸

「〝君側くんそく下名かめい暗黒あんこくを。反旗はんきれに静かなる死を。〟」



 障壁はダメだ。

 くう土属性つちぞくせいも使えない。

 凍の舞踏ペクエシスでは――――上級魔法あれには対抗し得ない。



「〝の漆黒は慈悲なり〟」



 なら。



 頭を押さえ、意識を確認し。



 下降かこうし始めた体と、ナイセストを認識して。



 空を、蹴った・・・



終焉抱きカファルダ・ザ――――!?」



 詠唱えいしょうが止まる。

 だが遅いぞ、ナイセスト――――!!



 光の弾ける音。

 拳が、物理障壁ぶつりしょうへきはばまれる。



 ナイセストの背後に現れる黒い弾丸。

 数は八。

 瞬時に氷弾の砲手アイスバレットを九発装填そうてんし、闇弾あんだん相殺そうさい、奴は迫った残り一発の氷弾ひょうだんを――魔法障壁まほうしょうへきで防いだ。



 使わせたぞ、二枚とも。



 障壁がこおり付き、奴の視界をふさ



「ッ!!!」



 薄氷はくひょうくだけ散る。

 振動しんどう間一髪かんいっぱつ兵装の盾アルメス・クードを発動し、瞬転ラピドせまったナイセストの物理ぶつり障壁しょうへきと衝突する。



「ッ、」

「――――」



 魔力まりょくの火花が散る押し合いの形。

 地をめる。障壁は拮抗きっこう

 互いに右手に魔力を収束しゅうそくさせる。



 考えることは同じか。



首根断つ魔宴オプスレザ

凍の舞踏ペクエシス



 氷と闇がゼロ距離きょりで激突し、隔壁かくへきごとく爆風が天へ伸びる。

 互い吹き飛ぶ。奴は地、俺は空中。

 スペースの障壁に張り付くようにして止まる。



「――――次だな」



 外すわけにはいかない。

 右手を上げ、狙いを定め。



 放つ。



「……何の真似まねを――」



 バシン、と。



『!!!?』



 それ・・はナイセストの顔面を、打ち抜いた。



「――――!?」



 よろけるナイセスト。

 会場がどよめく。



 ここを逃すな。たたけろ――――!



 魔力をり上げ、放つ・・

 横に横に避けるナイセスト。

 だが、あの動きは――――まだ見えていない・・・・・・・・者のそれだ。



「ッッ、ぬ――――!」



 弾丸・・が再度、奴の腹部をとらえる。

 次いで放たれた数発がナイセストの身体を叩き、奴の身体を大きくよろけさせる。

 魔弾の砲手バレットを連発、体勢を整えさせない。



 障壁を足場に瞬転ラピド

 弾丸に気を取られたナイセストの防御ぼうぎょつらぬき、



 こぶしで顔面を、打ち抜いた。



「ぐ、ッ――!!」

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