打開――――隠し玉など持てぬまま



 視界が黒でつぶされる。



 魔弾の砲手バレット?いや、これでは――――



凍の舞踏ペクエシスッ!」



 花色はないろの波動が黒手こくしゅ凍結とうけつ、瞬時にくだき飛ばす。

 凍結をナイセストまで延長させようとしたが、次から次に現れる黒の手に波動が押し負け、奴まで届かない。

 無数に現れる黒。空中で身をひねりながらなんとか着地――――ナイセストの影から、今や蚯蚓みみずたばのように多量にのたくり出る無数の黒手を見た。

 アレを止めねばらちが明かない。



堅き守人シュタインヴァント石の蠍スコルピカ――――」



 石壁いしかべを発生、黒手を防ぎ、同時に石のやりをナイセストまで――――伸びない。黒手によってまれた蚯蚓みみず大綱おおつなと衝突し砕け、飲み込まれてしまう。

 


「ッ――――!」



 黒の奔流ほんりゅうかわし飛ぶ。障壁を走り、それでもナイセストから目を離さぬよう、



 ――もう障壁しょうへきが使えるはずだ。



 精霊の壁フェクテス・クード

 無数の手型が障壁にり付いた。



 瞬転ラピド。障壁ごと俺を飲みまんとする黒の蚯蚓みみずを突き破り、拳を振りかぶり、一直線にナイセストへ拳を――――



 ――――手首の血管けっかんにぎつぶされるような感覚。



「ッ!?」

「――――」



 つかまれた腕。

 目を見開いて微笑びしょうするナイセスト。



瞬転ラピドの速度を目でッ――!?」



 視界振動しんどう

 体が吹き飛ぶ脳の揺れ。



 悲鳴が聞こえる。

 真上にゆっくり吹き飛ぶ体。

 視界が安定しない。

 だがどうやら――――あごを打ち抜かれたか。



「――〝闇黒やみくろあるじよ。上天じょうてん光明こうみょう加護かごせし蒼然そうぜんまとう神よ〟」



 来る。

 立て直さなければ、



「アマセ君ッッ!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る