第26話 ケイ・アマセVSナイセスト・ティアルバー

激突――――闇出でる、地を冒す

 閃光せんこうが弾け。



 ナイセストの手が眼前にあった。



『……――!!!?』



 観衆かんしゅうのどよめき。

 眼前には怜悧れいりな瞳。

 障壁しょうへきで止められたナイセストの手は、つめを立てるように開かれていて、



 やみが収束する。



「『首根断つ魔宴オプスレザ』」



 低いうなり声をあげるようにして集った闇の波動が、展開てんかいした障壁の上をすべるようにして弾け飛ぶ。

闇におおわれる障壁。消えるナイセストの姿。



 首根断つ魔宴オプスレザ

 凍の舞踏ペクエシス雷宴の台タウロクスと同じ、闇属性の中級ちゅうきゅう――



 障壁しょうへきが、ふるえた。

 


「ッ!」



 瞬転ラピド

 精霊の壁フェクテス・クードを突き破りせまったナイセストの手を紙一重かみひとえかわし、障壁から飛び出す。



 障壁の破片が視界に散る。

 いつものようにはしから霧散むさんせず、くだかれたかのように消えていく破片はへん



 恐らく闇だ。

 闇属性の魔法は相手の魔法を劣化れっかさせる力を持つ、ということ。



 兵装の盾アルメス・クード精霊の壁フェクテス・クード。障壁はしばらく使えない――――



欲深き魔手グロトネリィ・プラン



 ――漆黒しっこくけむりの中から、地をうような詠唱えいしょう



 黒い手が数多あまた、煙を突き破る。



「――――!」



 体を振ってける。

 新体操の飾紐リボンのようにうねり迫る黒の手。

 ステップをごとく地を断続だんぞくてきに飛び、壁を足場に瞬転ラピド

――向かいのかべにはとどかない。

 やはり広いな、二十四層のスペースより少し。

 背後を振り返り、向かってくる一手いっしゅ魔弾の砲手バレットで――――相殺そうさい、出来た。



 なお迫り来る、顔ほどの大きさの黒手こくしゅ



「――――七、」



 爆風を迂回うかい、折り紙のココットが閉じるようにして迫る四手よんしゅ

 爆風を突き破り迫る二手にしゅ

 背後から忍び寄る一手いっしゅ



 捕捉ほそくした。



魔弾の砲手バレット!!」



 爆音ばくおん



 残らず撃ち落とされた黒きへびは布切れのように散り散りとなり、力を失って霧散むさんしていく。

 こいつには、これで対応可能――――

 


「『より深くクァンティマス』」



 ――――ナイセストのかげから。



 声と共に、更なる黒手こくしゅがうねり、ずる――――



 ――――数が、多い。



 着地。

 同時に、避ける。



より深くクァンティマス



 避ける。避ける。



より深くクァンティマスより深くクァンティマス、」



 避け――――



より深くクァンティマスより深くクァンティマスより深くクァンティマス――――!」

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