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 シータが野太く歓声さけぶ。

 次ぐようにき立つ会場。

 投げられ空を飛ぶヴィエルナが瞬転空アラピド

 小さく構えた拳がナイセストのどうぐ、



 兵装の盾アルメス・クード



「ふ――防がれたっ!」



 エリダの叫びと同時に掃射そうしゃされた暗弾の砲手ダークバレットがヴィエルナを吹き飛ばす。



「ぅ――――ぐ――!!」



 漆黒しっこくの煙を上げながらちゅうへ投げ出されたヴィエルナがなんとか体勢を立て直して着地するも、ナイセストはすでに――やみを手にまとわせていた。

 闇が雷撃らいげきごとき、ヴィエルナに走る――



 ――ヴィエルナは首元に手をやり、ローブのゴムボタンを外すと。



 それを、一挙いっきょで破るようにぎきった。



「えっ――なんで服やぶ――」



 システィーナが言葉にまる。

 ローブを脱いだヴィエルナは、足がき出しになったベージュのホットパンツに、タイトなハイネックの黒タンクトップという、それまでとは打って変わった肌色はだいろの出で立ちで闇の波動はどうを迎え撃つ。



(……いや、あいつは意味も無くあんなことをしない。だとしたら――)



 圭がスペースへと目をらす。

 闇がヴィエルナに激突したのと、



 ヴィエルナが退すさり、かわいた破裂音はれつおんと共にそれを打ち砕いたのは、ほぼ同時だった。



『ああああああァ!!!?!?』



 会場が驚愕きょうがくに飲み込まれる。圭の口が笑う。

 目を見開いたナイセストの眼前がんぜん。そこには間違いなく、



(ヴィエルナ……お前は本当に……!!)



 魔法まほうを打ち払ったヴィエルナが、両手で布槍ローブを構えて立っていた。



「うお――布槍術ふそうじゅつか今のっ!?」

「布で弾くように相手を攻撃するとかいうあれか――マニアックなものを……!」



 トルトが目を丸くし、ペトラが笑う。

 ヴィエルナがローブを回転させ――布の刺突しとつを放った。



(見事だな。だが遅い)



 ナイセストが悠々ゆうゆうと、紙一重かみひとえ穂先ほさきを避ける。



 それが、致命ちめいになると、誰が予想しよう。



「ッ!!」



 ヴィエルナが槍を持つ手を振る。

 槍はへびごとくうねり――ナイセストの片腕を縛り付けたのだ。



「チッ――!?」

「っ!!」



 引っ張られ、ナイセストがかたむく。

 ヴィエルナがゆらりと親指を上にこぶしを構え音も無く低空ていくうを跳び、



 小さく振り下ろした拳が、ナイセストの胸にめり込んだ。



「入っ――――」

「――――っったぁッ!!!」

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