3



 俺の背後で、かわいた砂が次々と砲弾ほうだんの形を成して滞空たいくうし、ゆっくりと回転し始めた。



 雷音らいおん



 視界に見えた先行放電ストリーマ目掛めがけ、砂の砲弾ほうだん掃射そうしゃする。

 上に、下に、横に。

 砂塵さじんの間をうようにして接近してくる紫の雷光が、俺の視界にもはっきり映った。

 回避の為に速度を落としたのか。



「ぬォらッ!」



 紫電しでんがスペースの障壁しょうへきを足場に、槍の一棘いっきょくごとく飛び込んでくる。堅き守人シュタインヴァントは間に合わず、く障壁で防御。膝蹴ひざげりを防がれたロハザーが弾けるようにして退すさり着地、またも雷電らいでんともなって光と消える。



「チ……」



 マリスタが見破った通り、奴はかみなり属性ぞくせい所有属性エトスを持つが雷そのものではない・・・・・・・・・

 あくまで、ロハザー・ハイエイトという人間が雷の真似事まねごとをしているだけだ。

 ゆえに奴の速度は、雷速らいそくせまってはいるが雷速ではない。



 ――とはいえ、それでも常人・・にはわずかに視認しにん出来る程度ていど



 それに即応そくおう出来るのが魔法まほう障壁しょうへきだけとあっては、ふとした拍子ひょうしに決着の一撃を叩き込まれかねない。

 何か策を打たなければならないが――――



 ――その機動きどうりょくを、殺せばいい。



凍の舞踏ペクエシス!」

「ハッ! どこ向けて撃って――――ッ!?」



 氷の波動はどうで、周囲の床を・・・・・凍らせていく・・・・・・



「テメッ……!!」



 マリスタの時も、ヴィエルナの時も。

 「すべってこけろ作戦」は、意外にも成功率が高い。……言ってて笑えるが。



 そして、そんな床を見たお前はこう考えるだろう。

 足を着けば転倒てんとうの危険がある。ならば――



めんじゃねぇッ!!」



 ――床そのものをればいい、と。



 床を破砕はさいする音。

 先行放電ストリーマが付近でひらめく気配。

 だがその余分な一動作いちどうさは、



堅き守人シュタインヴァント



 詠唱えいしょうを行うすきとしては、十分。



「ぬ、あぁッ……!!」



 攻撃をはばまれたロハザーの苛立いらだちが耳をかすめた。



 石壁いしかべの真上へと弾けんだロハザーが、再びスペースの障壁しょうへきを足場に空を飛ぶ。間断かんだんなく砂弾の砲手サンドバレットを放ち続け、奴の行動こうどう範囲はんいを限定していく。



「チ……えん距離きょりからネチネチと……!!」



 ロハザーの速度は、既に英雄の鎧ヘロス・ラスタング下の動体視力どうたいしりょくで完全に追えるほどに低下していた。

 動けなければ雷速らいそくも何もない。

 視界の中央にロハザーをとらえ、



「遠距離ばかりじゃない」



 ――氷の床を駆け・・飛ぶ・・



「んなッ!!? テメなんですべらな――」

「滑らんさ」



 こぶし魔力まりょくんだ氷でおおい。



氷との相性は・・・・・・良い方なんでな・・・・・・・



 無防備むぼうびに空を移動していたロハザーに、渾身こんしんの一撃を叩き込んだ。



「なグ――――ッッ!!」

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