2



 紫電しでんの波動が襲い来る。

 奴の想定通り・・・・・・精霊の壁フェクテス・クードで応じる。



 効果時間は十秒程度ていど。いつ切れるかはわからない。だから、



「くっ……!!」



 八秒程度で、不測の事態を装って・・・・・・・・・障壁しょうへきけば――――奴は、必ず食いついてくる。



 視界、右に紫電しでん。きた――



 左にも紫、電!?



「ずヴ86t7jhgf5dッッ!!?」

「フェイントだよ。バァーカ!」



 ――雷撃らいげきで顔を右から・・・つらぬかれ、吹き飛ぶ。



 しびれ。

 足先から痙攣けいれんが抜け、皮膚ひふの内を焼かれたような不快な熱さが、痛みとなって体を駆けた。



 ……目か。

 雷を視認しにんした時の眼光がんこうで、俺の狙いを気取けどるとは――――



「俺をめんなよ、異端いたんッ!」



 先行放電ストリーマの音。

 俺は今地にせ、雷撃にひるんでいる。

 この好機こうきは逃すまい。正面から来る。



 好都合こうつごうだ。

 すで手は地にある・・・・・・



 詠唱破棄えいしょうはき



「〝堅き守人シュタインヴァント〟」



 ――眼前がんぜん石壁いしかべが突き上がり、ロハザーの拳を受けた。



 ロハザーの動揺が空気を伝う。



「!? 土属性つちぞくせいの――――ッ!!」

「くっ……」



 俺を守るように屹立きつりつする頼もしい石壁いしかべ

 体に鞭打むちうつにい、なんとかそれに手を置く。



 突きでろ、石の針山はりやま



「〝石の蠍スコルピカ〟」

「うっ――ぉおァッ!!?」



 ロハザーの悲鳴。石の向こうから奴の気配が消えた。

 当然の後退だ。そして――体のしびれはなんとか消えたか。



 跳躍ちょうやく、石壁の上に飛び乗る。

 視界には――――頬から一筋の血を流す、ロハザーの姿。



「テメェ……いつの間に土属性の魔法まほうを……!」

「いつの間に、と言われるほど、お前に何かを披露ひろうしたこともないと思うんだがな。そんなに俺に注目していたのか?」

「バカか? 風紀にあるお前のデータに、土属性の魔法なんて記録されてねぇって言ってんだ」

「記録者に伝えろ。俺を正確に記録したいなら、それこそ部屋に記録石ディーチェを仕掛けて一時ひとときも目を離すなとな。俺は一瞬前の俺・・・・・・・にも負けんぞ・・・・・・



 うそぶき、奴の意識をらす。

 いかずちよろいは、凍の舞踏ペクエシスを受け止めたときより明らかに劣化れっかしている。鎧から千切ちぎれ、後から後から千々ちぢに消えていく紫。

 土属性は雷属性に強い、とわかってはいたが……相性がはっきり出過ぎるのも考えものだな。



 だが、とにかくいける。

 奴の鎧は、破壊することが出来る。



 勿論もちろん、あいつもかみなり属性ぞくせい以外の魔法まほうを使うことは出来るだろうが――マリスタ戦であれだけ派手な戦いをした後だ。消費魔力のことは、奴の動きに少なからず影響を及ぼすはずだ。。

 俺が更なる優勢ゆうせい属性ぞくせいで反撃してくることも容易よういに予想出来る中で、使い慣れていない魔法を使ってくる可能性は低い。



 たたけるか。



「――砂弾の砲手サンドバレット

「!!」

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