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「――そういうワケでッ!!」



 マリスタがロハザーに伸ばした手を握り、何かを放つように開くと――それに呼応こおうし、拳ほどの水の弾丸が放たれる。



「……――」



 ロハザーは、どこか応じるように――その一発の弾丸を、眼前に振りかぶったこぶしのひとぎで粉々に粉砕ふんさいした。



 水浸みずびたしになるロハザー。

 しかし彼はあわてた様子もなく、腕をいだ姿勢で静止している。

 マリスタは気付かず続ける。



「やるわね!――もう一分あるかも分かんない。いつまでもひたってる場合じゃないわよ、ロハザー!」

「――――――、――――――、」

「こないなら私から――いくよっ!!」



 マリスタが水のぼうを構え、ひとびにロハザーにせまる。

 うつむいたオレンジに真っ直ぐ迫る所有属性武器エトス・ディミ

 しかしロハザーは、高速で迫るその一撃を――――目視もくしすることもなくつかみ止めた。



「!!」



 マリスタが目を見開き、次いでらす。

 ロハザーは、うっすらとむらさきいろに光る魔力まりょくによって覆われており。



「〝――――先天せんてん契約けいやくの下、我が御霊みたま神罰しんばつ一旦いったんになわせたまえ」

(!!? 詠唱えいしょうッ、)



 それに気付いた時は、もう遅かった。



雷光の憑代ライナー・ミュース



 ――閃電せんでんはしった所有属性武器エトス・ディミ爆砕ばくさいする。



 稲妻いなずまつらぬかれたマリスタが爆風と共に吹き飛び、派手に倒れ込む。



「げ――――ほッ…………!?」



 しびれの残る体に鞭打むちうち、よろよろと立ち上がるマリスタ。そこには、



「な……なんなの、それ……!!?」



 まるでいかずち化身けしんのように、全身に電気をまとったロハザーの姿。



 紫のひらめき。



「っっっっ!!!!!ぁ――――」



 ロハザーの膝蹴ひざげりが、十メートル以上離れていたマリスタへ深々と突き刺さる。

 吹き飛び、壁に激突し倒れかけた体を、マリスタは必死で壁にり付かせた。



 紫電しでん



「っ!?もう――」



 視界の切れ目、真横。まったく予期しなかった方向から飛んできたロハザーのこぶしがマリスタのほおを吹き飛ばす。

 マリスタはスペースを球状きゅうじょうに包む魔法障壁まほうしょうへきを駆けのぼるように吹き飛び、スペース中央のくうに放り出される。



「かァ――――アァッ!!?」



 更に紫電、そして追撃。

 ロハザーの拳による強烈な一撃を腹部に受け、マリスタは再び障壁に激突した。



(どういう、ことっ……こいつ、いきなりメチャクチャ速く――――!?)



 紫電。



「ッ――っつあッ!!!」



 やぶれかぶれに展開した精霊の壁フェクテス・クードに、ロハザーの拳が止まる・・・



(止まったっ!? 魔法障壁こっちで止められるんだっ!)



 魔弾の砲手バレットを数発展開し、即時そくじ発射。

 それをロハザーは、



「ッ!!? ウソでしょ何そr――」



 目を見開き、発生させた雷の波動パルスですべて破壊した。



 轟音ごうおん

 障壁がヒビ割れる。



(!!?今度は何っ、)



 事象じしょうを認識するひまもない。

 マリスタはとっさにスペースの障壁しょうへきに両足を着き跳躍ちょうやく、とにかくロハザーの攻撃こうげき範囲はんいから離脱りだつ



 紫電しでん



「な――――」



 ――もとより、離脱など叶うはずも無い。



 ゆえ雷速らいそく

 それは決して、人の身にはたどり着けない速域そくいき――――!



 壁を足場に跳躍したマリスタの上をあっさりとらえたロハザーが、マリスタを地に蹴り落す。

 少女は床をくだくほどの威力いりょくで地へ叩きつけられた。

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