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 魔波まは稲妻いなずまを帯びる。



「ッ!?!――――ぁッ!」



 空気から感電したマリスタがあわててロハザーの魔波まは圏内けんないから脱する。



(ウッソあいつ、今魔波に電気をまとわせて――そんなのアリなワケ!?)



「ッ――ぐ、ァ」

「!」



 ――――ロハザーが片膝かたひざを着いた。



(!!――そっか今の、私もやったことある魔力まりょくの暴走かっ! よし――だったらこっちもお見舞いしてやる!!)



 数瞬すうしゅん置き、マリスタがロハザーに突進する。

 ぼう先端せんたん棍棒こんぼうのようにふくらみ、上段じょうだんからロハザーの脳天のうてん目がけて真っ直ぐに振り下ろされ――



 雷光らいこうが、その突進をし止めた。



「ふざけンなッて言ってンだろうがッッ!!!!」

「ゥうううううううううっっ!!?!!」



 マリスタの体を、もう何度目とも知れない雷撃がつらぬく。

 しかし。



(――――目にもの見なさいっ、バカロハザーッ!!!)



 水の棍棒が、より色濃く発光する。



「!!!? バ――――」



 ――――閃電せんでん



 水とかみなりという矛盾した拮抗・・・・・・を可能としたマリスタの過剰かじょうな魔力がロハザーのそれを押し返し、極彩色ごくさいしきの光を絢爛けんらんき散らしながら弾け続け、



規格外チート大概たいがいにしろクソ野郎――――雷を水で止めやがるなんてッ!!!)



 ついに、ぜた。



「ぐあぁぁああっっ!!?!」

「うぅぐぅうううっ!!!」



 水でれた床に、小さな飛沫しぶきを上げながら倒れ込む灰と赤。



「――――なんでなんだよッ!!」

「!?」



 ロハザーが濡れた床を打つ。

 小さな水の弾ける音が、マリスタにはやけに大きく聞こえた。



「どうしてテメーは俺にせまって来れるんだ。どうしてテメェなんかに追い詰められてんだ!!」

「――え」



 ――マリスタにしてみれば、それは衝撃の言葉だった。

 かなうはずもないはるか上級の相手。元より雲の上の存在。

 そんな相手とたたかうためには、何より己自身が己を信じ抜く――ある意味での「盲目もうもく」になるより他、すべがなかっただけの話なのに。



 しかし、弱小貴族じゃくしょうきぞく劣等れっとうは止まらない。



「いいよな大貴族だいきぞくってのは!! そうやって少し努力すりゃ、受け継いできた極上の血筋ちすじのおかげで俺みたいな弱小じゃくしょう貴族の十年以上の積み重ねをあっという間に飛びえて来やがる!! でもそんなモン、認めるワケにはいかねぇ……負けるワケにいかねぇんだよ俺はッ!」

「……大貴族、」

「弱小だろうと、どれだけ馬鹿にされようと俺だって――俺達・・だって貴族なんだ!! 俺達はそのほこりだけを胸に、どんな逆境ぎゃっきょう偏見へんけんもはねけてここまで積み上げてきた! この歩みは――グレーローブこのローブは俺の誇りだ、俺のすべてだッ!」



 感情に雷光らいこうじる。



 渦巻うずま雷雲らいうんごと魔波まは

 マリスタは両膝りょうひざに手をついてようやく立ち上がり、その魔波を、言葉を正面から受け止める。



「………………」



 「アルテアス」はそうしなければならないと、感じたから。



「その積み上げをくずされてたまるか。挫折ざせつも壁も経験したことのないボンボンにあっさり負けてたまるかッ!! テメェら大貴族・・・・・・・なんかに、絶対に――」

「ゴチャゴチャうっさい。臆病者おくびょうもの



 そして何より――「マリスタ」はそれに、腹を立てなければならないと感じたから。



「だッ――誰が臆病だとザコがコラァッ!!」

強い貴族サマ・・・・・・にあるまじきコトをしたら、貴族の中で自分の立場が危うくなるってことでしょ? 臆病じゃない。そんなの」

「テメェにゃわからねェだけだ箱入はこいむすめッ!! 負けたって失うモンが何一つねぇテメェと俺を比べてんじゃねェぞたまたまうまのモトに生まれただけのデガラシがッ!!」

「違う」

「は?」

「私は、あんたとそんな異世界・・・・・・で戦いたくないだけ」

「何言って――――――何やってんだ。おい」



 ――マリスタが、魔波まはおさめた。



 ロハザーがその意味をかいし、みるみる顔をいからせる。



「テメェ――くさンのも大概たいがいにしろよッッ!!!!?」

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