2
◆ ◆
「マリスタは水属性。対するロハザーは水に強い雷属性――予想通りの
「
「そうか、大変だな。いい機会だから口を閉じていたらどうだ」
(こンの男……)
「マリスタ……他の属性の、
「分からんが……あいつはついこの間まで
「……その場合、
「ああ。だが無属性魔法に直接相手を攻撃するようなものはそう多くない。
「……そしてたぶん、ロハザー……それ、分かってる」
「あぁ、考えるだけでしんどいです……そこだけとっても勝率はゼロじゃありませんか。反撃の目が一つもない」
「加えて、魔法に関する知識もロハザーの方が
「分かるの?」
「あやや。意外ですね、キースさんは彼があの戦法を使う所、見たことが無いので? あれだけ一緒にいらっしゃって?」
「う――うん。コーミレイさんも、分かるの?」
「ええまあ。私は天才ですからねっ☆」
「あれはつまり、手足を動かすために送られている電気信号を、奴の一瞬の
「起こそうとした行動が一度、完全にゼロになる……使いようによっては極悪の魔法ですよ。加えてそれが
「秒速百五十キロの速度で迫る、即効性の
「あやー。ハイエイトさんの見た目からはまったく想像出来ない
「分からない……ロハザー、
(………………)
(……
〝私、風紀委員会の中でも、ちょっと強いから。だからよくセットにされるの。私と、ロハザーと、ナイセスト〟
(そう。それだけ一緒にいて、あの魔法を
圭の視線が移る。
次に
(その隠し玉を、どうしてこのタイミングで使ったのか…………もしかするとあいつ、落ち着いて見えるのは見かけだけかもしれない。……さてマリスタ。お前はどうする?)
◆ ◆
ああダメダメダメダメっ、何も思い付かない!
「ぅわくっ!?」
出した
もうすっかり慣れてしまった、視界が
なのにその衝撃が伝えてくる
一度体験した雷の恐怖が、頭から離れない……!
「っ、近付いてもダメ、でも離れてもダメ……」
そうこうしている内に私の障壁の方が切れて、あの体が動かなくなるやつをやられる。
そうなったら、今度こそあの
「っ…………!! ダメよマリスタ、ダメ……気持ちが折れたら、本当に勝てなくなる!」
「心配しなくても勝てねぇよ。あんたは」
「っ……うっさいな!」
お腹の底から
そりゃ今すぐにも突っ込んでド派手に吹き飛ばしてやりたいけど……これはトーナメント。次の人と戦うヨユウも残しておかないといけない。あいつだって温存しながら戦ってるらしいし。
ほんと、最初から一歩も動かないなんて……
……待って。なんで動かないんだろ、あいつ。
そうだ、考えてみればすごく違和感がある。
いくらなんでも、試合が始まってから一歩も動いてないなんて、そんなこと――
「ボケっとしてる場合か? 切れてるぜ、
「!? しまっ――ぁう!」
何発目かも分かんない、体の力が抜ける雷。
また
これももう、何度目か分からない。
雷の音。
「!!!」
正面のハイエイト君を見る前に
やっぱり飛んできた
見る。
やっぱり、ハイエイト君は動いていない。
「……そろそろ諦めたらどうだよ。何回ずっこけてんだあんた。観覧席の奴らや
「っ、こけさせてるのはあんたでしょうがっ!
「当たり前だろ。それでなくても
「っっ! 何よそれ……私は眼中にもないってこと? ムカツク!」
「あってたまるかよ、アンタみたいな才能にかまけて大した努力もしてきてねぇ奴。考えてもみろ、俺の次の相手は――あのケイ・アマセだぞ? 少なくとも、あんたよりはよっぽど
「――――――っ、!!」
今ちょっとだけ、ケイがめちゃくちゃ
目の前のハイエイト君を――いいえ。ロハザーを、強く強くにらみ付ける。
ああ。もうガマン出来ない。
「私が……私が大した努力をしてないですって!!?」
「そうだろうが。何が違うんだよ」
「何もかもよ! 確かに私はこれまでグウタラで何もしてなかったけど、一カ月前から」
「あのなぁ、」
――ため息にこめられた
私は、無意識に言葉を切っていた。
私と同じように、ロハザーが私を強くにらみ付けてくる。
「一ヶ月一ヶ月って、それが何だよ。張り合う気なんかサラサラねーけど、時間で言うなら俺はもう十二年近く努力してんぞ、あァ? 一ヶ月だと? そんな俺と比べたらカスみてーな時間で、なんでテメェは俺と同じ
「一ヶ月でも努力は努力よ。あんたの努力が十年だろうが二十年だろうが、私は私を、そしてあんたをフラットに見るだけ」
「ハッ、だがそのフラットを見つめる目は
「質?」
「一ヶ月も時間があったくせに、なんで俺の
「そっ、それはっ、だから……」
「あんたがちゃんとした相手に教えてもらってたなら、当然そのことについて何か言われてるはずだ。今言葉に
「っ……」
「担任はディノバーツ先生だったか? 試験で忙しかったとはいえ、声かけりゃ協力してくれない先生でもねぇだろ。――つまりあんたはこの一ヶ月、自分の無知を自覚してたくせに誰の教えも受けず、ただただガムシャラにガンバってただけ。そんなとこじゃねぇのか」
「あ、あんた以外にスルドいわね!! なんでそこまで――」
「読めんだよ、テメェみたいな――――頭の足りねぇ奴の考えくらいなッ!!」
「!! ゎゎわっ!?!」
足元を
バチバチという高い音と一緒に弾けた
体が大きくグラついた。
「オラ上半身ガラ空きだぞッ!!」
「っ!!あqwせdrftgy!!!!!!ぁ!ぇ!drftぎゅじうgtでswせftgy!!!!!!!」
目が。目が。、目が、弾け、熱いアツい熱いいぶるぶるぶるぶるぶるぶいい熱い!!!!!!
……また地面に倒れた。まばたきが痛い。
ヤバ。電気の直撃くらっちゃったっぽい。うーわ、立つ
「マリスタ!!!」
……誰か呼んだ? 今。
意識がボヤっとしてる。
これまさか体の内側から
〝そうそう適性なんて分かんないよねー。なはは、私の適正ってなんなのかしら、って感じ〟
〝家を
…………何でこんなことしてんだっけ、私。
「!!!」
――遅刻した時の寝起きみたいに、一気に意識が
やばいやばい。私ってば、何を考えてるのか。頭の中が戦いからどんどん離れていこうとしてる。
立つのよマリスタ。今試合中なのよ。たった十五分しかないのよ。
今何分たった? もしかして私、もう負けの判定下されてない?
立つの。とにかく立つのよマリせtふゅいjんvcぜくじょcxrdt!!!!!tfgkヴぃぐ!!!!!!
「……それもテメーのその
「ゎ……たしは、どりょく……!!!」
「もういい、うるせえ。
紫、
が、
立こphfdrytfひじょjkっぎぃうおjふぁぐおぎじゃえgじぇgふぃごじゃbふhぢじぇrばうろふぁえrう??!!!!?!L!?ろおあふぇbうほrふぁえbwkじゃdshふおあいjsdfgほあえrjdgほいぱえj;dgbふぃhywt4j;ぺfgtq絵f非djがじぇろいfsdfgほあえじょfsでょあえgjぽ;trkfぢれおいあhふぁえうぃおfjろえう?!hてあpjふぉいhろあうwぺ4てょげるyfw!ぽjれfひあwごrうぇいpふぁwせftgyふじうhytfれ!??!?すぁwsdrgy5??43えあdskじゃほちあうぇjfsでょあtじぇんrjdふぃあえんを!??!?fhjんlw!!!!!!!!!!!!!――――――――
◆ ◆
「止めてッ!!! 試合を中断してください
「こ、コーミレイさん、」
「馬鹿げているッッ!!! あの子はまだ
「コ――」
…………監督官は動かない。
いや、
スペースから
この試合では、過去に死者も出たことがあるのだという。
雷に打たれた人間が死ぬ確率は、約七割にも及ぶという。
……雷に打たれた人間が死ぬ確率は、約七割にも及ぶという。
……この試合では、過去に死者も出たことがあるのだという。
「監督官ッ! 耳付いてるんですかあなた方ッ!!! 監督官ッッッ!!!!!」
「………………」
……目を閉じる。
きっと今頃、システィーナ達は
いや、もしかすると――
『マリスタッ!!!!!!』
声。
いの一番に
「マ――マリスタ。マリスタっ!!」
「ナタリー、どういう状況? 監督の先生は?」
「奴らまだ動きませんっ、システィーナ、エリダ達も手伝ってください!!――状況が分かってるんですか、ねぇッ!!? なんとか言ってください、監督官ッ!!!!」
「そうよ監督官ッ!!! どういうつもりよこんな試合を続けさせてッ! 止めなさいよッ!」
「マリスタ死なないでっ! うがーーーーヤンキー電気、ちょっとは手加減しろー!!!」
「リア、私他の先生呼んできてみる!」
「待ってシータ、私も行く」
「……アマセ君?」
パールゥの声が俺を向く。
目を開け、改めてスペースを見た。
雷撃はまだ降り続いており、雷によって生まれた小さな衝撃波が、バチバチという音を
マリスタは撃たれっぱなしだ。
全身を
「…………」
みんなが見ている。
みんなが見ているぞ、マリスタ。お前の姿を。
やはりお
マリスタ・アルテアスが
それなのにあれだけ
いい気味だ、そのまま
近しい友人を
これらはきっと俺に言われなくても、ずっとお前自身が
〝私は、このプレジアでただの
これまでのようにオブラートに包まれていない、
一度
一度
もう後戻りは出来ないぞ、マリスタ。このまま試合に敗れれば、お前の世界は――――悪い意味で
お前は
それも一つの結果だ。甘んじて受け入れるべきだろう。
たぶん、負けるっていうのはそういうことだから。
だが、それはお前が一歩
グウタラなサボり魔だったマリスタ・アルテアスが、遅かれ早かれ向き合わなければならなかった運命。
それがやってくるのを待つのではなく、お前は自分で近付き
「出る
「……さあ、マリスタ」
「アマセくん――どうして、笑ってるの?」
……だが、お前は
〝アンタは私の
知っているぞ、マリスタ。
自分の中に絶対の
「
出る杭は打たれる。
だが
◆ ◆
――――――――――うん?
体が動かない。
体もなんだか全身熱くて、どうもコゲくさい。
ぼんやりと目の前を見る。
少し遠いところに、小さく波打つ
……うわ、やば。
もしかしなくても私、意識飛んでたのか。
というか死にかけてた?
ジョーダンじゃない私は生きるわよとばかりに心臓の音がうるさく聞こえだし、急に視界と意識がハッキリしてくる。でも体はどうにも熱くて痛くて、呼吸でさえムネのあたりが痛む。
私、鏡で見たら黒コゲになってるのじゃないかしら。まさかね。
「…………」
……ちょっと待ってみたけど、
どれだけこうして倒れてるのか分からないけど、たぶんまだ試合は続いてる。
起き上がらないと。
「ッッ!! っく……!!」
「おい聞いてんのか、監督官ッ! どんだけ
女兵士さんとザードチップ先生に叫んでいたロハザーが、急に黙りこくった。
たぶん私を見てるんだ。視線を感じる。
何とか起き上がろうとするけど、てんでダメ。
今にも火を吹きそうなほどに体が熱くて痛くて、たまらない。
「……なんでまた起きてんだ、てめーは」
「は、ぁ……ッ」
通る空気が多すぎて、ノドにまで痛みが走った。
参ったな。もう立ち上がれないじゃん、私。
すってんすってん転ばされ、電気で死ぬ目にあわされて、倒れていま、コレ。
だってのに私の頭はサエサエで、いやにクリアだったし、
状況をのんきに
……ひょっとするとこれが、「
私が立たなきゃと思ったのは、たぶん……人前で
ここが映ってるかは分かんないけど、映ってたら……みんな、死んだように倒れてた私が動き出して半泣きだったりするかも。なんて。
『マリスタッ!!』
そうそう、そうやっていい感じに
「マリスタッ!! 生きているのですか、マリスタッ!!」
「だ――大丈夫なのっ、マリスタ!」
「動けるなら
「何言ってるのよあんたたちはっ! マリスタぁ!! あんたそんなやられっぱなしでいいってワケ!?」
「ぶちかませぇ~!!! マリスタ!!」
「ま、負けても勝ってもどっちでもいいからっ。ちゃんと生きて帰ってきてよね、マリスタ……!」
「――頑張って!」
口々に勝手な応援をしてくれる友達たち。
そして、その横にはヴィエルナちゃんと――――
〝これからは私がいるからッ!!!!〟
――――私を静かな目で見つめている、ケイの姿。
「ッ! てめ――――」
目を閉じ、
体は痛いけど、
当然よ、私はほとんど魔力を使っちゃいないんだから。
期待通り体の痛みはニブくなって――――私にまた、立ち上がるだけの力をくれた。
手の中に
――うん。大丈夫。
たぶん。
「……どういうつもりなんだ、マジで。オメーは」
雷で出来た
受けた
「あんた強いね、ホントに。正直、まったく
「……あたりめーだろ。それで? そこまで分かってなんで立ったんだあんたは。
「ジョーダン。私は
〝私がケイと一緒に強くなる!〟
「たとえ一方的だったとしても、約束は約束。だったら守れるように、最後まであがくわ。――手も足もまだ動く。残念だけど、私の限界はまだ先よ! ロハザー・ハイエイト!」
「――――」
音が聞こえてきそうなほどに。
ロハザーは、怒った顔で
「…………いいぜ。試合時間はあと五分くらいだ。せいぜい
魔力の風が、私を
「……よっし!!!」
次の試合なんて考えるな。
相手は
当たって
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