4
不意に、視界に赤色――マリスタが映る。
ヴィエルナも一緒だ。
「――――――、――――……――――――!!」
「――――、――。――、――――」
……その
声援も祈りも、俺を勝たせてはくれない。
力は
明日に響きかねない疲労や傷を残すわけにはいかない。
どうする。
スペースに足を
少ない観衆が、
ゆっくりと目を開け――――敵を認識する。
「ハァ――――――ッッ!!!!!!殺してやる殺してやるぞアマセェッッ!!!思い知れ思い知れ
……
だとしたら。
視界の上を影が横切る。
ペトラとトルト――第二ブロックの
スペースに設置された複数の
…………目を閉じた。肩の力をもう一度、抜いた。
いよいよ、逃げ道はない。
「それでは、第二ブロック第一試合――――」
この目を開けた時には。戦いが。
「――――始め!」
全てが、終わっている。
◆ ◆
「それでは、第二ブロック第一試合――――」
ざわめきが、
開戦の一瞬。
と同時にそれは、勝負の
緒戦の勝利は、
その勢いのまま、みるみる戦況が
『ッ――――、』
マリスタが、パールゥが
(……アマセ君)
システィーナ達が
(……ケイ)
(お前さんの力がどんなモンか――)
(見せてもらうぜ……!)
トルトが、ロハザーとヴィエルナが静かな目で見つめ、
(ケイ……!)
別ブロックの
「…………、」
「……相変わらずだな。その
ナイセストが圭を
誰もが息を殺し、「その一瞬」を見逃すまいと、
「――――さあ、見せてみろ。
魔女が、
笑った。
「うrrrrッッッォォォォオオアアアアアアアアアッッ――――!!!」
ビージが
その
濃い
マリスタが、身を固くした。
この男は、見かけだけではない――
ビージはこれ以上ないほどに顔を
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――どこだ?
◆ ◆
「……は?」
ナタリーが、この上ない不快を
会場は静まり返っている。食堂も――――戦場でさえも、同じだ。
目の前で起きたことを、誰一人
「――ほォ?」
ようやく、トルトが一声をあげる。
その声で息を吹き返したかのように、会場が、食堂が、ざわざわと
皆が
つい数秒前に第二ブロック第一試合が開始された、その試合会場。
そこには――――金髪の魔法使いと、頭部から肩にかけてを完全に氷で
ざわめきが
一人はあの「
対するのはレッドローブ。
それだけでも勝敗は決したような組み合わせだが、その最弱の証に
加え、その人物はプレジア
その上で、過去の経歴は一切不明の美少年。極めつけには友人とはほとんど交流を持たず、放課後も延々とひとり自室か
「魔法を知らず人と関わらない、戦えないのに風紀に
そう予想した者がほとんどだった。
なればこそ、
マリスタはヴィエルナの腕を取り、
ヴィエルナはそれに気付きながらも
彼女たちは、たまたま
――彼女が
何が起こり、どう作用し、そしてどうなったのか。今この状況を、どう表現すればいいのか。
それを明確に告げる者の存在を――――
ペトラが少しだけ目を閉じて笑い、トルトを見る。
視線を受けたトルトは
「ビージ・バディルオン
――――
それは決して
貴族と
「平民」と
およそ
解除される魔法障壁。
スペースに降り立つトルトとペトラ、
『………………』
――――
好奇。
疑念。
決して友好的ではなく、貴族からも「
代わり向けられている眼差しは、
誰もが
あのレッドローブは何者だ、と。
「勝っ…………ちゃっ、た?」
「……そうだね」
「勝っちゃった!!!」
「?! うみょ」
「びえるなちゃんびえるなちゃん!!! 勝った勝ったケイが勝った!!!」
「ま、マリスタ。くるしい」
「はっっ?!?! ごめん!」
「い、いい。けど」
「でもすごい。すごい! ホントに勝っちゃった! レッドローブなのにベージュローブに! 二ヶ月なのに!! 私と
「ふふ……そうだね」
飛び
「でも、ホントに何が起こったんだろ。ヴィエルナちゃん見えた?」
「うん。見えた。
「えっっずる?!?! なんで教えてくれなかったのさ!」
「わすれ」
「ンがー
「?」
「? じゃないよ可愛い顔して! 見てたんでしょ全部。さっきの試合で何が起こったのかってこと!」
「あ。そういうこと。やってたことはカンタン、
「ら……らぴど???――――あっっ!!」
「そう。足の裏に
「あったあったそんなの!! あいつ前に私と戦ったとき
「……たぶんそれ、私がケイにやったのが最初」
「教えたのあんたか! バカ!」
「いつの間にか……
「学ぶ力も
「あ、ナタリー! ここで見てたの?」
「誰が
「……いい絵、
「私と奴の関係性を知っていてその
「? ごめん」
「……
「すごかったでしょ、ケイのやつ! あの
「興奮で
「あ、そっか。ヴィエルナちゃんも使えるんだっけ、
「うん……でも、あそこまで
「認めたくありませんが、それは同意ですね。
「
(ふたりがなにをはなしてるのかわからない)
「
「え、そうなの?」
「おとめの、ひみつ」
「そしてひとつ、未確認の情報があったので確かめたいんですが。キースさんあなた、実は今回の試験にひっそりホワイトローブへの昇格
「ぎく」
「え!!? そなのヴィエルナちゃん!?」
「ど……どうでも、いいよ。私のことは」
「どうでもよくないじゃん! うわーすごいな、ホント雲の上の人だわ。頑張ってね! うわ、ティアルバー君と同じになるんだ! うわすご!」
「き。きんちょうしちゃう。う」
「あぁゴメンっ!
「すぅ。はぁ。平常心」
「貴女方いつの間にそう仲良くなったんですか……? それにしても、相手の
「バディルオン君、カッカしやすいところ、あるから。あれがなければ、もっと強いと思うんだけど」
「あれに伸びしろがあるようには思えませんけどねぇ。まぁ今回に限っては負け犬にも勝ち犬にも興味はないです――――用事を済ませましょうかね。マリスタ」
「え、私?」
「ええ。今
「――――、」
ナタリーは笑顔だ。
それまでマリスタが接してきたナタリーと、何ら変わりのない
「な、なんて?」
聞き違いではないかと、我が耳を疑った。
そうくるであろうと、きっとナタリーも予測していたのだろう。彼女は、
「
「――……ありがと、ナタリー。でも、私は
「関係ありませんよ。いいから
「ナタリー聞いて」
「聞いてますよ」
「聞いてたらそんなこと」
「言いますよ。貴女を守るために」
「頼んでないってそんなこと」
知らず、マリスタの語気が強まる。ヴィエルナは二人を静かに見守るばかり。
マリスタの試合。第二ブロック第二試合はこの後、すぐなのだ。
この直前になって、今まで静観していた者が、何を言うのか――――
「
「早過ぎる? へぇ。
「いいえ。だって貴女は頑張っていましたから」
「…………」
「私はずっと貴女の頑張る姿を見てきました。そりゃ
「勝手に決めないでくれる? 悪いけどそういうの、マジでウザいから」
「いくらでも言ってください。貴女の命には代えられません」
「まーたバカにするっ。多少の大ケガなんて私も
「聞き落としましたか? 私は
「…………いのち?」
「――――」
ヴィエルナが目を閉じる。
ナタリーの顔から笑みが消えた。
「今の貴女に、ロハザー・ハイエイトはあまりにも早すぎる。ハッキリ言います、マリスタ。この試合に出れば貴女は、
ナタリーの
「そろそろ第二ブロック第二試合を始める。マリスタ・アルテアス。ロハザー・ハイエイト。中に入れ」
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