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◆     ◆




「はぁ~~っ、もー体動かないっ!」



 更衣室に入るなり、用意されていたカゴにぽんぽんと衣服を投げ入れ、マリスタはシャワー室の引き戸を開け放った。

 時間も遅いせいか中は無人。

 体を動かした後の疲労と爽快感そうかいかんもあってか、マリスタは足取りもかろやかに仕切しきり戸を開け、シャワーブースへと飛び込む。

 バルブをひねると、いた少女をらすようにして、ゆっくりとお湯が放出された。



 顔をのんびりと振りながら、シャワーを受け止めるマリスタ。

 汗ばんでいた体から不快なベタつきが流れ落ちていくのが、どこまでも心地よかった。

 彼女が住んでいる寮室りょうしつにもシャワーはあるが、そこはけい触発しょくはつされ、体力の限界まで自分を追い込んだマリスタだ。

訓練を終えた彼女の姿は、一人の乙女おとめとしてちょっと「人には見せられない」様になっていたのである。

 主に汗や、髪型かみがた的な意味で。



(とか言って、着替えとか持ってきてないんだけどさ……せめて髪くらい整えてこ……)



 どの道、髪や体を洗うための薬液やくえきは自室にあるため、戻ってもう一度シャワーは浴びなければならない。しかし、下ろせば腰に届こうとしているつやのある赤毛は、マリスタのちょっとした自慢じまんだ。

 日頃から念入ねんいりに手入れしている髪を洗いもせず放置するなど、髪に気を遣う乙女として言語道断ごんごどうだんなのである。



 薬液はなくとも、丁寧に髪をせんしていくマリスタ。鼻歌などを歌いながら、こすり合わせるようにして赤い長髪を洗っていく。

 心地よさに身をゆだね、ぼんやりと湯せんを続ける中で、マリスタは圭の姿を思い出していた。



(あいつも今頃、シャワーとか浴びてるのかな。そりゃ浴びるか。……シャノリア先生の所で気絶したあいつを介抱かいほうした時、すこーしだけはだけた身体を見たけど、だいぶ細い体つきだったわよね……あんな体のどこに、あれだけ頑張るスタミナがあるってんだろ、まったく)



 ――いや、違うかもしれない。と、マリスタは思い直す。



 もうあれから一ヶ月以上経とうとしているのだ。「もやし」という言葉が似合うほどにせていた圭の体も、もしかすると、とっくに筋肉質きんにくしつな体に生まれ変わっているのかもしれない。



 ――そう考えると、なんだか妄想が止まらなくなった。



英雄の鎧ヘロス・ラスタングの肉体強化の強さは、術者の肉体に大きく影響を受けるっていうし。ヴィエルナちゃんと同じくらい動けてたんだから、あいつの体もそれなりにきたえられてるんじゃ。細マッチョってやつね。………………うわ。ちょっと見てみたいかも――って。何を考えてるんだ、私は)

「のぼせてる?」

「ひょぴィっ?!?、!、??、、、!?!」



 突然の声に、シャワーブースの中でズルリとすべるマリスタ。

 仕切りに張り付きなんとか体勢を立て直すと――マリスタの鎖骨さこつくらいの高さの仕切り戸の向こうに、いつからいたのか、ヴィエルナの姿があった。



「び……びえるな、ちゃん?」

「顔。赤いけど。大丈夫?」

「だぁ、は……ぁあ、大丈夫ですよ?!」

「そう」



 ヴィエルナは声のトーンだけでマリスタへの配慮はいりょを伝えると会話を打ち切り、マリスタのとなりのブースに入っていく。

 ややあってシャワーの音が聞こえ始め、シャワー室はマリスタより一足先に現実へと戻っていった。



(…………みょうなタイミングで現れないでよね。もー)



 やがてマリスタも平静を取り戻し、両手でほおはさむようにしてはたくと、湯せんへと戻る。



「そう言えばヴィエルナちゃん、なんでわざわざ訓練施設のシャワーに来たの?」

「私、二十二そう調練場ちょうれんじょう、いたの。マリスタ、上?」

「あー、なるほどね。どーりで会わなかったわけだ。うん、私二十三層にいた。ケイと一緒だったの」

「よく、一緒。なれたね。んでた、のに」

「へへー。でも、一緒の場所だったってだけだよ。一緒に訓練はしなかった――あいつ、実技試験に向けた仕上げでいそがしいみたいだったから。過呼吸かこきゅうかってくらいゼーゼーいってたよ」

「……それ、見て。どう思った?」

「…………んー?」



(……さすがだなぁ、ヴィエルナちゃんは。私のこと、お見通しって感じ)



 マリスタには、ヴィエルナの笑みが透けて見えるようだった。



「……もちろん、私も頑張がんばんなきゃなーって思ったよ!」

「ふふふ、その意気。実技試験じつぎしけんまで。がんばろ」

「がんばろー!……ん~っ!」



 びをして壁に両手を付き、顔をうつむかせて笑うマリスタ。



 ――その視界に入ってきたのは自分の身体からだ

 マリスタはおもむろに、自分の鎖骨さこつに手で触れる。



(…………戸のせいで、全部は見えなかったけど。ヴィエルナちゃん、めっちゃ鎖骨浮き出てたなぁ。スリムでうらやましい。こうやってかがむと、ちょっとぷよっとしてるんだよなぁ、にくたらしい……)



 マリスタの思考は、先ほど圭の身体を妄想もうそうした時と、きっちり同じ道をたどり始めた。――今度は、純粋じゅんすいな興味の方が若干じゃっかん強めではあるが。



 以前見た、ケイとヴィエルナとの戦い。

 自分と同じくらいの身長で、自分よりもずっと華奢きゃしゃに見える少女から飛び出した、ケイの英雄の鎧ヘロス・ラスタングさえつらぬ威力いりょくこぶし



 ――あれだけの技なんだ。きっと相当な訓練をして、ものすごく、こう、しなやかな体を持ってるに違いないわ――



「………………ねぇ、ヴィエルナちゃん。ヴィエルナちゃんって、体きたえてる?」

「うん。がんばってるよ。マリスタは?」

「あー……私? 私は……」



 再び、自分の体を見下ろす。



 せねば! と即座そくざに決意しなければならないほどではない。

 兵隊として鍛え上げられたヴィエルナの肉体に比べると、マリスタの身体は「ただの女の子」じみている、というだけの話である。

 だがその事実こそ――晴れて兵隊となったマリスタにとっては、自分がとんでもない怠惰たいだを犯しているように感じられてならない。



(……ちょっとムダなお肉……付きすぎてる、よなぁ。このむにむにがにくたらしいぃ)

「マリスタ?」

「あ、ごめん。あはは……いやぁ、ヴィエルナちゃんには負けるよ。今日みたいな訓練を毎日やってれば、私もやせてくるかなぁ、なんちゃって~へへへ」

「……重さの管理」

「え?」



 言葉と同時に、ヴィエルナのシャワーが止まる。



「重さの、管理。運動、よりも、食事。大事だよ」



 ぴちょん、と水が床を打った。



「……ぁ、ええと…………食事、ってことよね? 食事かぁ。確かにそうだよね、私いっつもたらふく食べちゃうからさぁ。ありがと、ヴィエルナちゃん。ごはんも気を付けてみるね」

「…………」



 ヴィエルナからの返事はない。きっと聞こえなかったのだろうとさして気にも留めず、マリスタもシャワーを止め、軽く髪の水気みずけを切る。



(ごはん食べれないのはちょっときついけど、明日から少しずつ頑張ってみますか。一気に色々頑張りすぎると疲れダレちゃいそうだけど、私も義勇兵としての自覚を持ってかなくっちゃね。――考えてみれば、ケイも小食だったなぁ。そりゃあれだけ細い体になるわけだ。今でも長袖のシャツに黒い長ズボン、長袖ながそでのローブだから、今どうなってるかは分かんないけど。やー、思い返してもえっろかったわあれは。なにあの肌の白さ、神様二物も三物さんぶつも与えすぎでしょあいつに。あーあ、私もせめて、胸がもう少し大きかったりでもしたら、ヴィエルナちゃんの細くてキレイな体にも対抗(?)できたのに――――)



 ギッ、と。



 シャワーブースの仕切り戸が開く音が、やけに近くで聞こえた気がした。



「!? ちょ――――?!?!」



 いやな予感がして、反射的に振り向いてしまうマリスタ。

 果たせるかな、マリスタのシャワーブースの仕切り戸は完全に開かれていて――――目の前には、透き通った白い肌の体を隠すこともなく、戸に手を置いて立つヴィエルナの姿があった。

 前髪が水分を含んで重くれ下がっているせいか、その表情からはいつにも増して感情が読み取れない。

 つまり恥ずかしがっている様子は微塵みじんもない。



 それに、マリスタの目が彼女の顔をとらえたのは、ほんの一瞬だけの話である。



「――――――」

「………………」



 ヴィエルナもまた同様。

 少女たちはたがいに遠慮えんりょなく――マリスタに関しては、遠慮する余裕もなく――時間にして十秒ほども、相手の裸体らたいに視線をめぐらせた。



「………………なんでその体で、そんなあんの…………」

「?」



 固まったまま一点を見つめるマリスタに少しだけまゆをひそめ、ヴィエルナは戸を閉めて背を向ける。



「別に、ぷにぷに。では、ないと思う。スリムでも、ないけど」



 何が起こったのかあまり理解していないマリスタにそれだけつぶやき、ヴィエルナは先にシャワー室を出ていった。

 一人になったシャワー室で呆然ぼうぜんと立ち尽くすマリスタ。



 思い出されるのは、直前に見た――小ぶりながらもしっかりとふくらみ重力に逆らっていた、ヴィエルナの双丘そうきゅう



 思わずにはいられない。

 「ああ、神様」と。



「………………私も神、えてやろう」



 自分に二物を与えてくれなかった神様をそっと呪い、少女は決意を新たにするのだった。




◆     ◆




 シャワールームの扉を閉め、勉強スペースに設置されている椅子に腰ける。目を閉じて息を吐き、一瞬の休息を堪能たんのうして――意識を魔力回路ゼーレへと向けた。



「『陽光の風セレート』」



 座標ざひょうを意識し、魔法をとなえる。ゼーレに通う魔力が静かに波打ち、程なくして髪を温風おんぷうくしけずり、かわかしていく。



 ……戦士の抜剣アルス・クルギア呪文ロゴスは確か、〝鎧の乙女、純潔じゅんけつの戦士よ。ときの声と共に、今舞い上がる戦威せんいを我が手に〟……だったか。



 陽光の風セレートを解除する。頭を少し振って髪を整え、改めててのひらを見つめ、魔力を集中した。



「〝鎧の乙女、純潔の戦士よ。其の鬨の声と共に、今舞い上がる戦威を我が手に〟――戦士の抜剣アルス・クルギア



 錬成・・は、ぐに起きた。



 水色の光がはしり、部屋の空気をき混ぜて乱れ舞う。魔素の淡い光がきらめき、頭に思い描く無難ぶなんな武器を――つるぎを形作っていく。やがて魔力の光が凍気を帯び、手の中の魔力が凍り付き始め――――



「…………チッ」



 ――剣とはとても言えない、細長くいびつ氷柱つらら顕現けんげんした。

 手に冷たい水が伝うのを感じる。



「……いいとこ、棍棒こんぼうって感じだな」



 はっきりとはせないが、原因に心当たりはある……恐らく、「剣」というものを具体的にイメージ出来ないせいだろう。

 放課後ほうかごに戦った所有属性武器エトス・ディミの使い手は、確かに明確な剣の形をした武器を手にしていた。



 思えば、これまで武器のたぐいをじっくりと観察したことなど無い。恐らく他の武器でも同様の結果になるだろう。

 ……と同時に、マリスタが操っていた所有属性武器エトス・ディミも、きっとぼうのイメージが明確に持てていたわけではなかったのだろう。

 あれも水滴すいてきこぼしていたから。



 だが、俺の得物えものはきっと……マリスタのそれほどにさえ、役立たない。



 棒を振り、反対の手に軽く打ち付けてみる。

 皮膚ひふを叩く音の代わりに帰ってきたのは、叩き付けられた衝撃で入ったひびの音。

 まるで水たまりに張った氷のように中身がスカスカだった俺の所有属性武器エトス・ディミは、再度軽く振ると真ん中から完全に折れ、床で破片はへんとなって四散しさんした。



 ……少なくともマリスタの得物は、武器としてちゃんと機能していた。

 きっと実戦で使えることを優先し、シャノリアが最優先で教えたに違いない。



 打ち付けても壊れない硬度こうどを持つこと。

 ちゃんと剣の形になるように、具体的なイメージを持つこと。

 その上で更に、今まで使ったこともない武器を使いこなす鍛錬たんれんを積むこと。



 ……これから三週間あれば、なんとか形には出来るか。

 しかし、不安要素は大きい。魔法の扱いに関しては、体感で鍛錬たんれん行程こうていをある程度ていど予想出来る――つまり使いこなせるまでに、どのくらいの時間が必要かが大まかに分かり、見通しが立てやすいということだ――が、武道のように体に動きをみ込ませる必要がある剣術けんじゅつとなれば、かかる時間はほぼ未知数だ。

 せめて、剣での戦い方を教えてくれるでもいれば話は別なんだろうが。

 そもそも剣を使う奴自体、そう見たことがない。その辺の生徒を捕まえても効果は薄いだろう。



 ……魔法を主体にした戦闘だって、まだまだ突き詰める余地よちがある。

 師事しじ出来る者が見つからない限り、剣術は最終手段として鍛錬するにとどめておこう。



 剣もどきから視線を外し、床に落とす。

 氷塊ひょうかいは床に落ちる前に粒子状りゅうしじょうの魔素となり、床に散る破片はへんと共に消えた。




◆     ◆




 重厚じゅうこうな玄関の扉が、重い音を立てて開かれる。



 中は薄暗うすぐらく、通路の両側の壁にある小さな蝋燭ろうそくが、点々と廊下ろうかを照らすばかりである。

 後ろで扉を閉めた女中メイドの少女に荷物と白いローブをあずけて通路をまっすぐ進み、少年は突き当たりにある豪奢ごうしゃな木製のとびらをノックする。

 重い音が鳴るが、返事がない。だがそれもいつものことだ。



 ノブに手をかけ、回す。廊下と同じく薄暗うすぐらい室内は全ての壁が書棚しょだなで埋め尽くされており、大小様々な古めかしい本が整然せいぜんと並べられている。

 絨毯じゅうたんきの部屋の奥には、しっかりとした造りの暖炉だんろ――そのそば

 部屋の主は、訪問者ほうもんしゃに背を向けるようにして立っていた。



「ただいま帰りました、父上」

「……ナイセストか」

 


 帰宅を告げる息子――ナイセスト・ティアルバーに、暖炉だんろの前にいたディルス・ティアルバーは――ティアルバー家のげん当主とうしゅは、背を向けたまま応える。



 日々何千回と繰り返されたやり取り。

 続かぬ言葉に会話の終わりをさっし、小さく一礼するとそのまま扉を閉めようとして――



「ケイ・アマセ」



 ――突如とつじょ父の口から放たれた言葉に、さしものナイセストも一瞬体を止めた。



「聞いたことがない名だ。何者なんだ」



 ……何故、貴方がそんなことを。



「……一ヶ月ほど前に編入へんにゅうしてきた男です。素性すじょうは知れません」



 ――その通りだった。



 所詮しょせん風紀委員会ふうきいいんかいが一介の学生が作った組織に過ぎないことは、ナイセストもよく理解していた。

 全学生の情報を網羅もうらしているといってもあくまで表面的な情報のみであり、学生の個人情報をかき集めたとしても、教職員が持っている情報と同程度かそれ以下のものしか集まりはしない。



 ――だからこそ、ケイ・アマセに関する情報が全くと言っていい・・・・・・・・ほど集まらなかった・・・・・・・・・のに、ナイセストは違和感いわかんを覚えたのだ。



 ケイ・アマセに関する情報で彼ら風紀委員の手元に集まったのは、彼がプレジアに入学して以降のものばかり。

 プレジアに来るまでに何をしていたのか、どういう経緯けいいで入学してきたのか……そうした情報は、待てども待てどもナイセストの耳には入ってこなかった。



「……その素性の知れぬ者が、学校一位の成績を取ったと?」

「……そうです」



 ――これまではよかった。

 ケイ・アマセが何者であろうと、学内でどんなトラブルを起こそうと、ナイセストにとっては取るに足らないものであり、何の問題にもなり得ないはずだったからだ。

 貴族と『平民』、ホワイトローブとレッドローブ。本来、そこにはどんな交わりも起きないはずであった。



 ――筆記試験ひっきしけんで上回られた、今日その時までは。



 ディルスは小さく、かわいた笑いをらした。



「面白いではないか。どこの馬の骨とも知れんやからが、突如現れて一位におどり出るとは。久しくなかったきょうがある」

「……そうですか」

「それで?」

「は?」

「お前はどうする? 馬の骨肉こつにくくだくのに、どのような手段を使う?」

「俺にあれ・・を砕けと?」

「お前は興が乗らんのか?」



 ディルスが振り返る。ナイセスト以上に鋭く、クマの強い目をした精悍せいかんな男は、その口を小さくゆがませて笑っていた。



「我々のような、全てに関し非の打ちどころのない一族になると、どうも『敵』に欠けるのだ、ナイセスト。雑種凡骨ざっしゅぼんこつは我らの名を聞くだけで恐怖し、反抗など考えもせん。追い抜こうと奮起する者もらん。切磋琢磨という言葉がある通り、無敵の前に発展は無い。敵を持たぬ力など、あってないようなものだ。だから面白いぞ、ナイセスト。お前が馬の骨に・・・・・・・劣っていることが・・・・・・・・

「…………」

慢心まんしん怠惰たいだか、お前はケイ・アマセに負けたのだ。――このディルスは全てを許そうぞ、息子よ。何故なぜならきっとお前ならば――その馬をみ殺せよう?」

「――ご随意ずいいに」



当主が、そう言うのだ。

ナイセストは、それを断る理由も自由も持ちあわせない。



 ナイセストの言葉に、初老の男は呵々かか、と笑った。



何時いつ振りかの晴れやかさよ。――私を失望させてくれるなよ、ナイセスト。お前は最強となるべき器だ。私の心血しんけつを注いで、お前という『ティアルバー』をこれまで作り育ててきたのだ。存分にその力を振るうがいい――そやつとお前は、殺し合う運命となったのだ」

「では失礼します」



 リビングを出る。

 待っていた女中メイドの一礼を後目しりめに自室に戻り、とびらを閉めた。



 たかぶりはない。恐れもない。



 芽生えたのは、ただ――純粋じゅんすい興味きょうみのみ。



「……あいつは何者だ?」



 この時初めて、確かに――ナイセスト・ティアルバーは、ケイ・アマセという人間に興味を示した。



 自分の目の前に、初めて立ちふさがったらしい壁。



「ケイ――アマセ」



 敵とおぼしき、存在に。

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