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◆ ◆
義勇兵コースに
同時に、これまでは「ついで」に出来ればよかった
まずは基本となる
なじみのない世界に
加えて、その日の訓練を適切に振り返るスキルも身に付いておらず、全てが「かけだし」、
マリスタは、
(……い。勢いで、来てみたはいいけど)
筆記試験前の図書室がそうであったように、実技試験前の訓練施設は義勇兵コースの人間でごった返していた。
第二十三
ここには演習の規模に合わせ、三つの広さに分かれた演習スペースが存在する。とはいえ、通常は一人が演習場を借りた場合、そこが十人を収容できる広いスペースであったとしても、事実上、借りた人物・共に訓練する者よって独占されるのが常だ。レストラン等で全く知らない人物と
しかし、実技試験が間近に迫ったこの期間となると話は別。
この期間に限り、スペースが埋まっている状態で
(うぅ……やっぱ
とはいえ来てしまった手前、引き返す勇気もそう簡単には出ない。マリスタはとぼとぼと受付への列に並ぶ。
(……どこも人いっぱいだなぁ)
特にすることもなく、マリスタは
演習スペースの中では、義勇兵候補生達が色とりどりのローブをはためかせて己の
試験前ということもあってか、その
(……どうせ訓練するなら…………あ。いた)
直径二十メートルほどの、
比較的遠くにあるその場所で、赤いローブをまとった金髪の魔法使いは、グリーンローブの生徒を相手に、水色に輝く光を
「あなたも義勇兵コース?」
「へっ?! あっ、はいっ! あの――あっち。あっちの大演習スペースの人と待ち合わせしてて!」
「待ち合わせ?……んー、まあいいわ」
いつの間にか受付の前まで来ていたマリスタはあたふたと受付を済ませ、大演習スペースへ――圭が訓練をしているスペースへと
「おっ、っとっと……」
広い場所とはいえ、注意しておかなければ魔法の流れ弾に当たってしまう場合がある。
付近で魔法を放っている人達に最大限注意しながら、マリスタは圭へと近づく。
圭は、グリーンローブの少年との
――筆記試験の結果しか話題になってはいなかったものの。
実技の面においても、圭の成長には目覚ましいものがある。
事実今、圭と交戦していたグリーンローブの少年は、ローブの
少年の真正面に降り立つ圭の後ろ姿を見て、マリスタは静かに目を輝かせ、どこか誇らしかった。
「ケイってば、ホントすごいねぇ」
話しかける。圭は答えなかったが、マリスタにとってそれは
「勝手に共に歩む」と
「私なんかと違って、もうグリーンローブの人にだって勝――――」
――――いくのみ、なはずだった。
マリスタの声に、圭が振り返る。
その顔を見て、マリスタは言葉を失わざるを得なかった。
「………………………………………………」
足は立っているだけで震え、誰が見ても筋肉の疲労が限界に達している。
体は重心を安定させられず、常にフラフラと小さく揺れている。
しみ込んだ汗で、ローブはずっしりと濃い赤色に染まっている。
攻撃を受けたのか、右の
圭は――――
声が届かなかった訳ではない。声を無視した訳でもない。
今の圭にはただただ、マリスタに言葉を返す余力がないだけなのだ。
――
〝この一歩が、確実に俺だけのものになって、俺を前へと進めてくれる。努力した分だけ、
(……あるはずが、ないじゃない)
今のマリスタに、圭へかける言葉などあろうはずもない。
「ケイと一緒に練習を」。
そんなことを意識している時点で、彼女は彼と並び立ててなどいないのだから。
「………………………………………………」
立ち尽くすマリスタから、圭はおもむろに視線を外す。
とっくに回復し
今にも血を吐いて倒れそうな圭に
マリスタは彼に現在の自分を映し見たような気がして、目を閉じると大きく息を吸い込み、吐き出した。
「ねえ、君ッ!」
「っ!? あ……あ。アルテアスさん」
「今度は、私と戦ってくれない?」
「……え! あ、あなたとですか!?」
「うん! お願いしますッ!」
「あぁぁ、頭なんて下げないでっ……ぼ、僕は無理ですよ。今ホラ、疲れてるし……連戦には危険ですし。それに、もう帰りますし」
時々こういう
しかし、ナイセスト・ティアルバーが委員長として率いている
それが、代々積み上げてきた家柄を持つ、
「空気を読め」。そんな視線を最後に残し、マリスタの元を離れていく少年。
マリスタは
マリスタは不思議と、気負いや焦りを感じてはいなかった。
諦めや、
どれだけ覚悟し意気込んでも、ケイ・アマセは自分の先を歩いている――その理由に、マリスタが思い至ったからである。
(環境でも、才能でもない……カンタンなことだわ。追いつくとすぐ安心して止まっちゃう私と違って、あいつは――ぜったい止まらずに、どこまでも強く
――どこまでもいくのよ、マリスタ・アルテアス。気力が、魔力が、体力が続く限り。
相手が構える。
(私は弱い。だからって、「私は弱い」と口にすることはない。――――胸を張っていよう。いつだって今この時の私は、過去のどんな瞬間の誰よりも強い。そして、これからももっと強くなっていく――!)
そう思えばこそ。
マリスタに、圭を
◆ ◆
グリーンローブの少年が、自身の壊れた
少年は体を
体感では、戦い始めて十分程度。
グリーンローブの奴と真正面から戦って勝てたのは、これで二回目だ。
通算二勝、六十敗――――実技試験目前にして、なんとか、グリーンローブと真正面からやりあっても
だが、課題は
この戦闘ひとつ
トーナメントは、各ブロックとも第二回戦――準決勝戦までは一日で行われる。決勝とエキシビションは
つまり勝ち上がれば、両日とも二回は確実に戦うことになる、ということ。
ある程度の体力の温存が必要になってくる。ついでだが、そうした
次に大きな壁になっているのは、接近戦での弱さだろう。
ヴィエルナとの一戦から
体の動きは
遠くから敵を
上手く立ち回れなければ、接近を許した瞬間に敗北してしまうのだから、当然といえば当然。
障壁ですべてを防げばいい、とも考えたが、
魔力を考えれば、そう何度も張り直すわけにもいかない。
「――――、――――――。――――――――、――――――――――――」
声に振り返る。
そこにはマリスタが立っていた。
何かを話しているようだが、疲れからか声は遠く、あまり内容が頭に入っていない。
……せめて、俺にも武器があれば。
マリスタの、そして先程戦った少年の
ああした武器を持てば、障壁以外の防御手段になる。武器よりもまず肉体を
頭の
ひとまずは、
少年に礼を述べてマリスタの横を通り、目に付いたベージュローブの奴の元へと進む。
グリーンローブには二連勝した。ならばひとつ、相手の
手も足もまだ動く。魔力も底をついてはいない。
ならば、限界はまだ先だ。
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