第12話 宣戦布告
1
風紀委員会に復讐心を抱いた
……それが今現在、プレジアに
それに
……ここまで見事に作り話が真実として
というか音声付きの動画まで出回ってるらしいが、そんなことが出来るのはあの場に居た四人だけだ。というかあのナタリーとかいう女だけだ。
あのパパラッチは、一体何を考えてそんなことをしていやがるのか。
ただただ
無様にも魔力を切らし、血を吐き散らし、
どんな嘘が垂れ流されようと、それだけが俺にとって真実なのだから。
現在は翌日。
数時間眠り、体はなんとか日常生活を送れる程には回復しているようだった。
魔力切れによる
〝――教えてよ、ねえ――――答えてよっ!!〟
――
そのままフェードアウトして、ただのクラスメイトになることを祈る。
さて。
また血を吐くわけにもいかない、
肩を
「おう。こないだはヴィエルナが世話になったな。『
そこには、煮えたぎる怒りを両目に
◆ ◆
「これ……多分、というか、確実に……ナタリーだよね?
「さあ、一体何のことやらさっぱりです。ああっ、今痛そうな一撃がホラ、アマセさんにっ!! ああ、平気そうにしていますが、これは奥歯の一本や二本や十本折れているかもですねぇっ☆」
「お、奥歯は十本も無いと思うよ……」
「いやですねぇ、パールゥったら。今のは単なる願望ですよぉ」
「が、願望……??!」
「答えてナタリー。あなた、アマセ君とキースさんが闘う現場に居たんでしょう? 私やパールゥにまで隠し事をするなんて酷いじゃない。ついでに、私は学校で流れてる噂もあなたが
「だからその場には居ませんでしたってばぁ、信じてくださいよぉ~それに仲が良いのと隠し事がないのとは関係のない問題ですってぇ」
「はぁ……ナタリー。私はあなたのことも心配して言ってるのよ? ほどほどにしとかないと、ホントに後が怖いんだから」
「何がですか? そしてどうしてですか?? ひぃ恐ろしいっ、無関係なことで身が危険にさらされるなんて。私ってばどうしたらいいんでしょうっ」
「ほんと、アマセ君とどっちが
「ちょっと聞き捨てなりませんね今の。私とあんなのを
(あんなのって……でも、これは明らかに)
システィーナがチラ、と、教室の自分の机に座っているマリスタに視線を送る。
逸らしたとはいえ、特に何を見ているわけでもない。普段は活発に揺れているポニーテールをだらりと下げたまま、マリスタはただ
(
「じゃ……じゃあ、マリスタはどうしてあんなにしょげちゃってるの? 私、これもきっとその。ナタリーとかアマセ君が何か知ってるんじゃないかなって」
「さあ。生理前では?☆」
「な、なたりーっ」
「あやや、割と真面目な返答のつもりだったんですがねっ☆。でもまあ、そうでないならきっとアマセさん関連でしょう。
「ナタリー……何か知ってるんじゃないの?」
「だから知りませんてばぁ。ですが、最近のマリスタの
「よく知ってるのね。アマセ君のこと」
「知りたくもないですけどね。
「
「あ、パールゥ。
「お、おお応援理由に
(へえ。大きく動揺したわね、パールゥってば)
「ま、そんな
「それでいて、今朝見たアマセ君が普段とまったく変わらない様子だったのがまたすごいわよね。色んな意味で」
「また
集まった二人の視線が、パールゥの
「毎日練習してあのザマですかぁ。きっと一流
「うーん……ていうかただ突っぱねられただけならあの子、落ち込むより
「よっぽど酷い言い方をされたのかもしれません。『胸の
「ナタリー、実はマリスタのこと嫌いなの……?」
「あややとんでもない、私はあの金髪の方の心を代弁しただけですってばぁ」
「この距離だからきっと聞こえてると思うんだけど……」
三人がマリスタを見る。
マリスタは一層クマの酷くなった目で三人を
「……ナタリーのせいだ」
「ナタリーのせいね」
「アマセさんのせいですね。あぁケイ・アマセ、なんて酷い人。今のうちに縁が切れてホントによかった」
『………………』
「……お二人してそういう目をしますけどね。既にあの子は、貴族と『平民』との無益な争いに巻き込まれているのですよ? その上『異端』だのと言われる厄介な相手と交流していて、……果てに、私にさえもどうにも出来ないことが起きてしまえば、それこそ取り返しが付かなくなってしまいます」
「…………んーー。まあ、そうとも言える、のかな」
「システィーナまでっ」
「貴族と『平民』との争いは、もう学校に居られるかどうかってところまで来てるから、それを考えるとね……友情をとって命を亡くしたり、
「そ、そんな……」
「パールゥの気持ちも分かるから、余計にしんどいんだけどね。……何か、
「きっかけ……」
「切っ掛けと言いましてもねぇ。それだと、全面戦争の
「う、うーん。そういうことになる……のかしら」
システィーナは、改めてマリスタが去っていった教室の入口へと視線を移す。
彼女が一人でフラフラと向かった先など、これまで放課後、ほとんどの時間をマリスタと一緒に過ごしていたシスティーナには考えつかなかった。
◆ ◆
今日はもう部屋に帰って休もう。
あんなことがあった翌日で、学校にちゃんと来て授業受けただけでもえらいわよ、私。
〝――努力が出来る。努力した分だけ、報われる可能性がある。こんなに……こんなに喜ばしいことが他にあるか?〟
……私みたいな低い意識じゃ、絶対ケイには届かない。
努力できることは喜ばしいこと。そんな風に考えたことなんて、今までなかった。
それだけでも違う世界にいるんだなーって実感できすぎるっていうのに。その上――――フクシュウ? 圧倒的なチカラ? カミを超える?
「…………ケイは、
私達が住んでる場所とは明らかに違う、異質な世界に。
もしかしたら、ケイの世界にはあんな人がいっぱいいるのかもしれない。
勉強熱心で頭の回転が速くて、休みの時間なんて気にせずに努力し続ける人たちばかりの国から、やってきたのかもしれない。
「………………、」
そういえば、あの時はいっぱいいっぱいで聞けなかったけど。
記憶喪失が嘘だって言うなら、ケイは……自分の生まれをちゃんと、理解してるってことなんだろうか。
ってことは、ケイは自分のことを隠してたことになる。
て、そりゃ隠して当たり前か。だってケイは、自分の家族を殺した人たちを探して、フクシュウ……つまり、殺そうとしてるんだから。
「……んぅ?」
でも、あいつがここに来たのは偶然ぽくなかった?
だってシャノリア先生の庭にいきなりふってきたんだよ?
あんだけはっきりと復讐なんて目的を持った人が……あんなテキトーな場所に、しかも魔法に対する知識がゼロの状態で、思い立ってやってくるかしら。
やってくるにしても、もうちょっとこう、後ろ暗い場所から出てこようと思うんじゃないかしら。暗い裏路地とか。悪そうなやつらが集まるバー的なとことか。
「……ゎぬ?」
ん?……ちょっと待って。なんだろこの違和感。私は何がひっかかってんの?
ケイがこの世界にやって来た時のことを知ってるのは、私とシャノリア先生と、あとザードチップ先生だけだ。他の人はケイのことを家庭の事情で、よく分からないけど魔法を知らない場所出身の転校生だと思ってる。
それで、ナタリーやヴィエルナちゃんは、ケイの目的が殺人……そう、人殺しらしいと知っちゃったと。
てことはナタリー達には、ケイは「最初から復讐を果たす目的でここへやってきた人」に見えてる……んだよね。
「む……?」
でも、そうなるとやっぱおかしい。
魔法のこと知らなかったりとか、現れたのがシャノリア先生の家だったりとか。
よくわかんないけど、なんか魔法使ったワープに失敗したとか?
いや待って、実はシャノリア先生が復讐の相手だったりとか?
……なわけないか。だったら寝込みでも襲ってるわ。
いやでも、私たちってそのとき確か、魔法の練習中だったよね。そのあとすぐに、シャノリア先生がプレジアの教師だと分かったんだから……シャノリア先生の力を知って、ケイはシャノリア先生を超えることを目標にして、それで、魔法の練習をしてるって可能性も……?
……あたまがこけむす。
まとめなさい、マリスタ。よくわかんないことをテキトーにまとめるのは
そう。あんだけカシコそうで努力家なケイが、復讐なんて大変そうなことをやるのに、細かい計画を立てないなんてオカシイってことよ。
まだ何かある。ケイの話には、まだ裏がある。……裏の裏、的なやつが。それじゃ表だけど。
てかそんなことを思ったところで、私には何にも出来ないんだけど。
しょせん私は
「あ」
魔力を
気付いても、後の祭り。目の前はあっという間に真っ白になって
ああ、つくづく自分ってバカだなぁ。
ドロ水に沈むような気持ちでため息をついて、もう一度魔力を送り……
……なにあれ?
◆ ◆
「まさかキースさん、あんたが
「僕らも驚いたよ。まさか詠唱の出来ない君が、真っ先にあの『
ヴィエルナ・キースは、聞かずとも耳に入ってくる二人の風紀委員――ベージュローブ、大柄のビージ・バディルオンと、眼鏡のチェニク・セイントーンの声に、表情には出さずともげんなりして、解放されている図書室の
プレジア魔法魔術学校図書室は、
教本や小説、写真集に絵画、新聞、映像、果ては漫画や
内部も
ヴィエルナは一階から三階と、あちこちを
すべては「異端」の
「しかしあの『異端』、まさかキースさんにまでボコにされるとは思ってなかったんだろうな。その時の『異端』の顔を想像するだけで笑いが出るぜ」
「グレーローブという
「ああ。そして始末の悪いことに、それが愚行だってことが未だに分かっちゃいねぇ。誰にも教えてすらもらえてねぇ」
「
「……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます