2
ヴィエルナが沈黙で
少女が
「……私。
「答えなくていい」
「……?」
「悪かった。答えにくいことを聞いたな」
「……ううん」
ヴィエルナが、今度は間違いなく
「大丈夫、だよ。もう、気にしてない、から。……
「おい、それ以上は
……確かに、魔法を使う素振りをまったく見せずに
つまり、こいつは他の魔法を使えない。
それでも、これだけ強くなることが出来るというのか。
「さあ、休んでないで続きをやろう。まだ決着は」
「ううん。もう続きはないよ」
「ついてない――――は?」
――続きは無い、だと?
「解ったから。
――あなた、絶対、私に勝てないって」
「ッ!!!!!! ぁ――――っ!!?」
――――ヴィエルナが、
叩き込まれた衝撃が、
転倒し床に倒れ込んだ
「はが……ァ、あぁッ……!!?」
「……言った。でしょう?」
「お……まえ今、何をッ……!?」
真横に立つヴィエルナの足元で、ただ
こいつの姿は、確かに俺の視界の中でブレた。かと思えば次の瞬間には、恐らく打撃――打撃だ。あいつは今、拳を握り締めて腕を折っている――を腹部に叩き込まれていた。
単純な
馬鹿な。俺の
〝
――そういうことなのか?
待ってくれ。とすれば俺とこいつとの基礎身体能力の間には、一体どれだけの差があるっていうんだ。
「あなたがどうして、義勇兵コースに。入って。どうしてそんなに熱心に、勉強とか、修行とか、してるか。知らないけど……きっと、あなたは強くなりたい。んだ、よね?」
…………ハハ。
お笑いだな。俺は今、
この少女がそんな力を――実力を持っているなど……一体誰が、想像し
「でも、
少女を
魔石による照明に照らされ、まるで後光を背負った聖女のように見える。
「あなたが、どんな人生を生きてたか。私、知らないけど。……友達と一緒に歩くの、きっと楽しいと思う。だから、
だが、その見え方は俺にとって、
これまでも、数多くの
この目でしっかりと見た限りでは、最も俺の理想に近い、強さ。
「だから、もっとみんなのこと、見てあげて。……マリスタなんか、すっごく。あなたのこと、心配してるん、だから。知ってた?…………」
あんな風に
「……私をずっと、見つめてる、けど。どうしたの?」
そして俺は、ああ、
「…………私の話。聞こえて、ないの?」
ああ、なんてこった。
このまま
〝――将来のこと、まじめに考えてるの?〟
――今、俺はやっと、歩けている。
「!!!」
ヴィエルナの足が回避に動く。
彼女の真横、倒れた俺の真上に発生させた
「――っ!?
――足を動かした先にあった氷の床で
「さっきの
「遅い」
寝返りを打つ
ヴィエルナが
俺はようやく立ち上がることが出来た。
――まだ、完全には
まだまだ検証の余地ありだな。
ヴィエルナの足が地を
さて、来い。もう一度あの「音速」を見せてみろ。
少女のローブの
両手を突き出す。
「
体中を目にするようにして、「音速」を使おうとしているヴィエルナの、あらゆる動きに集中する。
足の裏、床と接している部分で
先と同じく、ヴィエルナが一瞬で俺の前に現れ、
「ぐッ――!」
「っ……、」
障壁が
「……
割れて消えゆく障壁の向こうへ小さな
しかし即座に後退したヴィエルナによって
「やっぱりカラクリがあったんだな。さっきの音速」
「見破っても、
柱を
――まさか。
テインツの時のように、回避のつもりで
飛び込んだ床面に激突した衝撃にこそ襲われたものの、
床を
振り返ると、そこにはやはり「音速」で移動してきたヴィエルナの姿があった。
足で床をこすった
……やっぱりだ。
「……
再度飛び迫ろうとするヴィエルナを
――が、やはりいかに身体能力が同じだろうと素人と武道家では勝負にならない。
「どうなる――!」
ヴィエルナがブレる。
と同時に、奴の直線上の
「!!! ッ――」
残していた足にも相当の衝撃が走ったが、それよりも――やっぱりそうだ。
あの技、「音速」は――――
とすれば、ああして直線上に障害物を置いてやれば容易に超速での
――体勢を崩した
そんなものに気付いた時には、もう遅い。
「ガ――――!!!」
俺は「音速」のヴィエルナの拳をもろに
「ぐっ――!」
きっと追撃が来る。手で床を叩くようにして体を
「
――――――――耳鳴りがする。
――と、衝撃。主に精神的な。
「~~~~ッッ!!! ば、ぁ……おま……恥ずかしくないのかよ……!」
「なに、言ってるの? 私達今、
「恥ずかしそうに言いやがって、この……!」
……口にするのも
この女、事もあろうに俺を……
――ツ、と頭から流れた血の感覚が、俺を冷静へ引き戻す。
当然だ。
――
あと
「よく頑張ったと、思う。でも――ここまで。終わらせる、からっ」
「ごッ――ぶァっ!!?」
蹴り起こされ、宙を飛ぶ。
回転する視界、倒れる衝撃、俺は無我夢中で起き上がり、
「
「むだっ」
「かッ……ぁっ――!!」
波動はあっさりと避けられ、
「ペ……
吹き飛ぶ。踏まれる。打ち込まれる。蹴り飛ばされ、移動する。解る。魔力が残り少ない。
「
「……どうして、
そんなスペースの中心に近い場所で、俺はヴィエルナに背を向けて転がっている。
――
「もう、魔力も底、つくはず。あんまり追い込みすぎるの、良くないと思うよ。体、もう少し
「……………………」
俺が中央ではだめだ。
もっと――もう少しだけ、
「もう諦めて。いくら
「……悪いな」
そうだ。そこで止まれ、ヴィエルナ・キース。
「諦め続けるのには、もう飽きたんだ」
そこが、
「だから俺はもう――二度と諦めない」
唱えろ。
残った魔力の、全てを
「
「!!?」
俺の体から、魔力が
分散された魔力は六つの起点へ――――
「そん――まさかこれっ」
「もう遅い」
「終わりだ。ヴィエルナ・キース」
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