第32話 天秤

「大変だ、役者のキクエモンが死んだ」

 使いに出ていたはずの弟が、店奥の主人の部屋に、息を切らして飛び込んできた。店の主人である父と大黒帳を囲んで話し合っていたヨウスケははっと顔を上げて、その訃報に愕然とした。

「一体、なんでまた……。まだ若いだろうに」

 キクエモンと言えば、幼いころから舞台に立ち、幼いころから二十歳を超えた今に至るまで、絶大な人気を誇り続ける女形役者だった。その彼が死ぬなんて。

 きっと町は大騒ぎになるだろう。いや、すでに騒いでいるかもしれない。女たちの井戸端会議の情報拡散力は異様なほどだし、何より、弟の手にくしゃくしゃに丸められた紙が握られている。多分、彼の死を告げる瓦版だ。

「事故にでも遭ったっていうのかい?」

 あくまで穏やかな父の言葉に、弟はふるふると首を振った。

「事故と言えば事故かもしれないけど……。キクエモンは稽古中に、舞台から落ちて死んだんだんです」

「なんだ、事故じゃないか」

「……キクエモンは、足が突然震えて、そのまま立っていられなくなって、崩れるようにして落ちたんだそうです」

 俯き加減に付け加えられたその一言に、ヨウスケの顔が強張る。

「おとっつぁん、やっぱり、おかしいですよ」

「むむ……」

 唸るだけの父に、ヨウスケは苛立って小さく舌を打った。大黒帳の項をめくって父の眼前に叩きつけてやる。

「キクエモンは、うちのお得意です。また、うちの白粉を使った客が死んだ!」

「ヨウスケ、何度も言っているだろう。言い方には気を付けなさい。うちだけじゃぁない。白粉をよく使う人間が、亡くなっているのだ」

「同じことです!」

 両の手を文机に叩きつける。衝撃で大黒帳が小さく飛んだ。

「このままじゃだめだ。おとっつぁん、あたしは嫌ですよ。あたしたちの売った白粉で、人が死ぬなんて!」

「そりゃあ、私だって同意見だよ。でもね、本当に白粉で人が死んでいるのかい? お前はそれを証明できる?」

「そ、それは」

「それにね、白粉は必要なものなんだ。女たちに使うなと言って聞くものじゃあないし、役者に至っては仕事道具だ。なくなったら困るものなんだよ。

 お前、おっかさんに白粉を使わないように言ったんだってね? 反応は、どうだった」

「…………」

「断られたんだろう?」

「……はい」

 にべもなかった。「男の子には分からないかもしれないけれど、仮にも大店の女将である私が、そんなみっともないことできるわけないでしょう」そう言われてしまえば、男であるヨウスケとしては、何も言えない。

 けれどもしかしたら本当に、本当に白粉は、人を殺すかもしれないのに。

「ヨウスケ、お前は優しい子だ。お客が亡くなったり、病に罹ったりすることに、とても心を痛めている。でも、それをすべて白粉のせいだと決めつけてしまうのは、良くない」

 固く口を閉ざし、俯くヨウスケ。父はそんなヨウスケの頭にそっと手を置いた。

「疑うのは良い。大事だ。でもね、お前がそれを騒ぐことで、うちのお店だけじゃなく、他所の白粉屋にも迷惑をかけることになるんだよ。何人もの奉公人が、路頭に迷うことになるかもしれない。それは、良くないことだよね」

「……はい」

「うん、分かればいいんだよ。さあ、これで話はおしまいだ。

 キクエモンさんのところは、太客だからね。訃報を聞いてそのまま、というわけにもいくまいよ。お悔やみを言いに行かなくてはね」

 お前たちも来るかい? 父の気軽なその言葉に、弟は軽く、ヨウスケは重々しく頷いた。


 白粉に害があるのではないか。そう思ったのは、昨年のことだった。

 白粉をよく使う、女や歌舞伎役者、それにお上。彼らは何故だか、手足が痺れたり、狐が憑くことが多い。さらに濃く白粉を塗る習慣のあるここ、上方は、東に比べて被害が大きい。

 証拠はない。単なる勘違いかもしれない。それでも、もしそれが本当だったらと思うと怖かった。

 代々伝わる白粉の技術。それは人を笑顔にする技術だった。主な客は女たちだ。彼女らは美しく己を磨き上げるため、化粧を学ぶ。うちの客が嫁に行ったと噂を聞くと、彼女の幸せにきっと少しは貢献できたのだと、胸がほっこりと温かくなる。

 その技術が、人の命を奪うことになってはいけない。

 ヨウスケは仕事が休みの日には、よく山に入った。そして何か他の素材を使って、白粉を作れないかと実験を繰り返した。

(もし本当に白粉に害があるのなら、材料に毒が混じっているのかもしれない。なら、他のもので代用できれば、害のない白粉が作れるかもしれない)

 確実なことなど何一つなかった。それでも、試さずにはいられなかった。

 まるまる一年程の時間をかけて、やっとのこと、それらしいものが出来上がった。しかし。

(これ、どうしようか)

 ヨウスケは出来上がった白粉を片手に、しかしそれを塗ることはできなかった。

 うまくできたか確かめるには、実際に塗ってみるしかない。己の皮膚に塗れば、それが一番確実だ。だが。

(それでもし、死んでしまったら?)

 己の研究は途中で頓挫してしまうことになる。原因が分からないまま、人の命を奪う白粉がうちの店から売られ続ける。それではだめだ。

 頭を抱え悩み続ける。しかし人里離れた山の中では、ヨウスケの悩みに答えてくれる誰かなどいない。

 するとそこに、一匹の蛇が現れた。珍しい模様だった。それに、片目に傷を負っている。怪我をしたばかりなのか、傷口からはまだ血が流れていた。

 蛇をぼうっと眺めていると、突然蛇が鋭い牙をむき出しにして、飛び掛かってきた。

「うわっ!」

 悲鳴を上げて、腕で顔をかばう。噛まれる。そう覚悟して目を瞑った。しかし、その瞬間はいつまで待っても来ない。

「お前さん、大丈夫かい?」

 蛇の代わりに降ってきた声に、ヨウスケは恐る恐る目を開いた。するとそこには、藍染の着物を着た男が立っていて、尻もちをついている己に、ほっそりとした手を差し伸べていた。

「立てる?」

「あ、はい……」

 男の手を握り、立ち上がる。辺りを見回し、蛇を探した。そしてそれはすぐに見つかった。ただし蛇は、真っ二つに裂かれて、もはやただの死骸と化していた。

「あの蛇」

「ん? ……ああ」

 呆然と蛇を見つめているヨウスケ。ぐっと下唇を噛み締める。

 蛇を殺した男は、恥ずかしそうに頭を掻いていた。

「はじめは殺すつもりはなかったのだけれど、あまりにしつこかったから、ついね。

 それに、逃げた方にいた無関係のお前さんに、ああもあっさり襲い掛かるものだから。あれは感心しないよ」

「蛇に、追いかけられてたのですか?」

「まあ、そんなところかな。まったく、勘弁してほしいよ。私を恨むのは筋違いだ。あれを殺したのは、私ではなくて弟だというのに」

「あれ……?」

 男は口元に手を当て、明後日の方を向いていた。まるでヨウスケの存在など忘れたかのように、小声でぶつぶつとぼやいている。

「もしかして私の方が御しやすいとでも思ったのかな? そんな馬鹿なことないよね。確かに私はあいつと違って、がたいは良くないけれど……見目に惑わされるほど愚かではあるまいに。

 はあ。どうして私ったら、いつも貧乏くじばかり引くのかなあ」

「あのぉ……?」

 己の世界に入り込んでしまった男に、恐る恐る声をかける。立ち去ってもいいのだろうか。でもちゃんと礼くらい言いたい。

 上目遣いに男を見やる。瘦せっぽちだが、男はすらりとしていて背が高かった。よくよく見ると、とても美しい顔立ちをしている。だが彼は、大きな蛇をあっさりと殺すような物騒な一面を持っている。

「あ、ごめんね。文句ばかり言ってしまって。

 巻き込んでしまって悪かったね。怪我はないかい?」

「とんでもない。助けてくれて、ありがとうございました」

 男はニコッと笑った。しかしその笑顔はすぐに消え、代わりに不思議そうな表情が浮かんだ。こちらの顔を覗き込むようにして顔を近づけてくる。

「……お前さん、もしかして怒ってる?」

「え」

「いや、なんだかね、複雑そうな顔をしているよ」

 ぱっと手を顔にやった。己はそんな表情をしていただろうか。だとしたら、なんと失礼な。この男は己を助けてくれたのに、そんな顔をするなんて。

「私は気にしてないよ。でも、そうだな。どうしてそんな顔をしたのか、教えてくれないかい?」

 男の声はあくまで穏やかに、しかし抗いがたい何かを孕んでいた。ヨウスケはちらと、真っ二つに裂かれた蛇に視線をやった。それからポツリと話し始めた。

「襲われて……危うく噛まれるところだったのに、こんなこと言うのは、どうかと思うんですがね……。

 あの蛇が、可哀想に思えてしまって」

「可哀想?」

 おうむ返しに聞いてくる男の言葉に、ヨウスケは無言のまま頷いた。踵を返し、蛇の死骸のそばにしゃがみ込む。

 男は、たいして大きくもない脇差一本しか持っていない。それに対して、蛇の体はあまりに見事に切られていた。断面からはどくどくと赤い血が流れ続けている。痛みを想像して、つい体が震えた。いや、これだけ綺麗に切られたのだ。きっと痛みを感じる間もなくあの世へ行けたに違いない。

「どんな生き物でも、やっぱり、死んでしまうのは可哀想です」

「…………」

「ああ、すいません。あなたを責めてるわけじゃぁ、ないんですよ」

「うん。分かっているよ。お前さんは優しいね」

「……あの」

「何かな」

「埋めてやってもいいですか」

「どうして私に聞くの? 私の蛇じゃぁないもの。お前さんの好きにしたらいいんじゃないかな」

「そ、そうですね」

 男は死んだ蛇には一切興味が無いようだった。それでも、穴を掘るのは手伝ってくれた。碌な道具もない状態で、蛇を埋められるだけの大きさの穴を掘るのは一苦労だった。

「お前さんは優しいけれど……」蛇に土をかけながら、男がぽつりと零した。「山に入るのには、向かないんじゃないかい? 野生動物は逞しくて美しくて……残酷だ。彼らは襲うことに躊躇などないよ。

 それに危ないのは動物だけじゃないしね。盗人やら辻斬りは、ある意味動物よりも恐ろしいよ」

 蛇の頭に土がかけられる。光を失い、濁ったその瞳が、確かにヨウスケに向けられた気がした。お前さえいなければ逃げ切れたのに。お前さえいなければ……。蛇の瞳がそう語りかけてくる。

 思わず土をかける手が止まった。だが男は流れるように滑らかな動作で蛇を埋め続ける。やがて蛇の頭は土に隠れて見えなくなった。

「もしもこの先、一人で山に入らなくてはいけないのなら、きちんと覚悟を決めておく方がいいよ」

「そう、ですね」

「心にね、天秤を思い描いてごらん。片方にお前さんの命。もう片方に獣の命を置くんだ。どちらかしか救えないなら、お前さんはどっちを救いたい?

 お前さんは、自ら獣を虐殺したりはしないだろう? 獣の方から襲い掛かっておいて死んだなら、それは弱いのが悪いんだ。大丈夫、獣たちは強者に食われることで誰かを恨みはしないよ。たぶんね」

 それを別れの言葉に、男は「それじゃ、達者でね」と言って立ち去った。


 それからおよそ半年の後、上方の白粉屋が、奇妙なものを売り始めた。

 それは白粉なのだが、店の裏にある山で採れる生薬を使って作られていた。従来の白粉とはやや色味が異なるが、肌に優しいと触れ込んだ。まだまだ人気は低かったが、何人か馴染みの客がつきつつある代物だった。

 それを作ったヨウスケは、この日もまた離れに作らせた自室に閉じこもっていた。

「うっ、うう……」

 せっかくの日中だというのに、離れは障子を閉め切り、中で蝋燭を灯してもいなかった。もし目の前の廊下を誰かが通りかかったら、苦し気に嗚咽を漏らすヨウスケの様子に、首を傾げたに違いない。しかし離れは家の最奥にあったから、行こうと思わなければ誰もここへはやって来ない。

(ごめん、ごめんよ)

 ヨウスケはこの日もまた、一心に謝っていた。手を合わせて向き合うのは、墓石だった。名の刻まれぬ墓標は、無言のままヨウスケを見下ろしている。

「お前たちのおかげで、私はお客に安全な白粉を提供できる」

 そしてまた、ごめんと言葉を繰り返した。

(山で捕らえた小さな獣で実験を始めて、もう一年になる。あたしは一体、何人の命を救って、そして……何匹の命を奪ったんだろう)

 初めのうちは、奪った命を数えていた。すべて残さず記憶しておくことは、己にできる最低限の義務だと思っていたから。でも途中から、それもやめてしまった。心が重くて、一を足し続けるだけの、簡単な算術さえ出来なくなってしまった。紙に記録は残しているから、数えようと思えば数えられるはずだが、それさえできない。

 天秤が、人に傾く。

 人命は尊いと、音を立てて軋む。

 獣の命を軽んじたわけではない。だが己の天秤は間違いなく、人を重いと判断していた。

(身勝手だなあ、あたしも)

 地獄に落ちると言われれば、否定できる気もしない。残酷だと責め立てられれば、その通りと頷くしかない。

 もしも獣たちの霊魂が己を呪うなら、甘んじて受け入れるつもりだった。それが償いになるのならと。しかし恨みつらみを抱えて死んだはずの獣たちは、誰一人ヨウスケを呪ってなどくれなかった。

 誰からも責められることがなければ、誰からも許されないのだと知った。これを始めた頃は、いつしか慣れてしまうことをむしろ恐れていたのだが、その心配は無用だったようだ。

「……兄さん、いる?」

 突然に声をかけられて、項垂れていた首を上げた。すっと戸を開けると、そこには弟と父が並んでいた。

「どうしたんです? おとっつぁんまで」

 日中に父も、己も弟も店を開けるなど、極めて珍しいことだった。

「少し、話があってな」

「…………?」

 楽観主義な父にしては、珍しくも重々しい口調だった。きっと周りに聞かれたくない話だろうと察し、二人を部屋の中へ呼び入れる。いつものように部屋の戸を閉め切り、今度は明かりを灯した。

「茶でも淹れますか?」

「いや、いいよ」

 父と弟と向き合い、しかし誰も口を開かなかった。ヨウスケは不思議に思いながらも、なんとなく嫌な予感がして、父に要件を促すことができない。揺らぐ炎を見つめるだけの時が静かに流れていく。

「おとっつぁん、何があったんです?」

 どれほど待っても誰も何も言ってくれないものだから、やがてヨウスケの方が折れた。

「うむ……。

 なあ、ヨウスケ。お前一年位前に、この離れを欲しがっただろう?」

「はい」

「何のためだい?」

「それは……」

 実験の記録をするためだった。実験そのものは山の中でやるが、その記録を付けることは必須だった。それが他者に簡単にのぞけるようではいけなかったから、店の奥というのは最適な場所だったのだ。

「お前、動物を殺してるんだって……?」

「! おとっつぁん、気づいてたんですか」

「気づいたのは、私ではないよ」

「あたしだよ。兄さん」

 弟が、はじめて口を開いた。

「こっそり家から出かける兄さんが何をしているのか気になって……後を付けたことがあるんだ」

「……そう」

「兄さん、どうしてあんな酷いことを?」

 弟は優しい。今だって兄であるヨウスケを責めながらも、それ以上に悲しみに沈んでいるようだった。申し訳ないと思った。これもまた、己が選んだ道が育てた膿なのだ。

 ヨウスケにできるのは、真実をありのままに話すことだけだ。

「動物を使って、実験していたんだ。今度の白粉が害がないのか。これまでの白粉にはなぜ害があるのか」

「そんな酷いことっ! 兄さんは、たくさんの動物を殺したんだよ? 自分がしたこと、本当に分かってるの? 優しい兄さんが……そんなこと、するはずっ」

「分かってるよ。ちゃんとわかってる」

「じゃあ、なんで」

「動物を殺してでも、得るべきだと思ったからだよ」

「……兄さん」

 ヨウスケは譲らなかった。己のしたことが正しいのかは分からないが、己の行動が何を意味するかくらいは理解しているつもりだった。今更責められたとて、動揺などするはずもない。

「二人の、どちらが正しいのかは……この際、置いておこう」

 父が口を開いた。

「でも殺しはね、だめだよ。ヨウスケ。外聞が悪い。

 今ばれていないのは、運が良かっただけだ。お前がお客だったら、動物を殺しているお前のいる店で、白粉を買いたいと思うかい?」

 父のその言葉に、全てを理解した。

「あたしは……家を出されるんですね」

「……ああ」

「行先はどこですか? 寺に出すには、あたしは年を取りすぎてますよね」

「東で、私の弟が唐物屋を営んでいる。お前さえよければ、そこに」

「唐物屋ですか。いいですね、嫌いじゃないです」

「お前……本当にいいのかい?」

「ええ。あたしのしたことがどういうことか、分かっていますから。あたしの白粉……上手に売ってくださいね」

 その言葉は本心だった。

 たくさんの動物の命を犠牲にして、ようやく生み出すことができた白粉。あれが残りさえすれば、それでいい。あの白粉で一人でも救われる人がいるのなら、これまでに殺したたくさんの動物も、浮かばれるだろう。

「おとっつぁん、不出来な息子ですみません。向こうで奉公して、少し落ち着いたら手紙も書きますね」

 それから弟に向き直った。

「突然ごめんな。たまにはこっちにも戻ってくるから、そしたら一緒に鰻でも食おう」

「こちらこそ、ごめん、兄さん。……楽しみに待ってる」



 寧ろすっきりした顔で、兄が旅立った。心優しい兄は、きっともう殺さなくてよいという事実に、安堵していたに違いない。優しくて、お客思いで……それゆえに残酷だった兄。己にとって兄は、それでも尊敬すべき商人だった。

「行ってしまいましたね」

「寂しくなるね」

 兄の背を見送って店に戻ると、父は兄が残した白粉をそそくさと箱にしまい始めた。

「何してるの、おとっつぁん?」

「ん? ああ……。ヨウスケには悪いけど、獣の命を奪って作ったようなもの、置いておくわけにはいかないからね。さあ、お前も手伝っておくれ」

「そうですね」

 獣の命を奪ったなど、やはり外聞が悪い。固定客がつき始めた商品を捨てるのは勿体ないが、いつかばれるかもしれない秘密を抱えておくのは、危険だ。

 どうか、白粉から離れた兄が、二度とこんな酷いこと、しなくてすみますように。

 店から回収した白粉を庭で焼きながら、弟は兄の幸福を心から祈った。

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