誰もが目にし、経験のある日常のひとコマ。そこにはたいていの場合、深い感情の波など覚えがないはずなのに、この作者に擬人化されたことによって、絡み合う感情のうねりをみせられた。そして、哀しみがいい塩梅に書き込まれている。読後、自分の過去を思い出す時、これまでとは違う感情を覚えてしまいそうになる短編だ。