二人の王女

 ◇◆◇◆◇◆


 視界が真っ白に覆われる。

 その一秒後。ミストナの眼前に元の洞窟と変わらない景色が広がり、最深部への移転が完了した。

 いや、と変わらないという考えは、改めなければいけない。


 ミストナは大口を上げながら天井を仰ぐ。

 壁や地面は見慣れた岩肌だが、遥か頭上にはが浮かんでいた。

 まるでどこかの惑星を比喩しているかのようにゆっくりと回転し、堂々たる存在感を示している。


「すっごい……。あれがこのダンジョンの心臓なのね」


 透き通った魔石の中には、轟々と巨大な炎が揺らいでいる。あれが幻獣を生み出し、この世界の全てを形成するだ。

 例え獣人の人生を何百回繰り返そうと、消える事の無い魔力が秘められているのだろう。

 到底届きそうにない核にすっと手を伸ばし、何度か掴む仕草を試す。


「いつか手が届くと良いなぁ……。そう言えばダンジョンの番人ボスはどこにいるのかしら……って!?」


 大空洞の中を見回している最中、とある地点で尻尾がピンと伸びた。

 先に入った仲間の三人が立っていた場所。そこに大量の光の粒子が飛散している。状況を察するに倒した後だ。


「どんなボスか見たかったのにっ!」


 思わず猫科の本能が飛び出た。壁や地面に戻っていく光の粒子に、自然と手が伸びる。

 そんな事をしても、ボスの姿を拝めないのは分かってはいるが——。


「ふぁぁーっと。三秒もかからなかったぜ」


 鉄パイプを肩に担ぐベリルが、欠伸をしながら言った。


「私のダンジョン経験の少なさは良く知ってるでしょ。ちょっとくらい待っててくれても良いじゃない!」

「んな器用な事が出来るかよ」

「出来るでしょ! ツバキも居るんだし!」


 と、胸ぐらを揺さぶりながら問い詰める。


「お、ち、つ、け、よ。もしかしてお前もてんのか?」

「えっ?」


 そう言って、ベリルの視線が壁際の方向に逸れた。


「ちんたらしてる間に、あのぼぉーーーっと突っ立ってるお姫様の尻が燃えたらどうすんだよ。ここに入ってくるなり、ずっとあの調子だぜ?」


 入り口近くの岩壁。そこに背中を預け、天井の核を見つめているペレッタが居た。


「わ、忘れてた……」

「おいおい。しっかりしろよ、新米リーダー。ここはこのダンジョンの最深部。つまり一番魔素が充満してる、エロい場所なんだからな」

「うん。全然違うけどね」

「早く行け。で、ちゃっちゃと説得してガロンと戦わせろ。あたしも体が疼いてしょうがねぇーんだ」


 吐く息荒く、胸元をつーっとなぞるベリル。戦闘前の準備運動は万全という事なのだろう。


 発情中の狼女はさておき、ペレッタに近寄る。目の前で手を振ってみるが反応が無い。

 肩を掴み、耳元に牙を立てて——


「——ワッ!!」

「あっ……ミストナさん」

「大丈夫?」

「ここに入ってから頭の中がフワフワしてしまって……浮いているような、意識が引っ張られているような……すみません」


 分からなくも無かった。

 ペレッタに比べると些細だが、ミストナも尻尾の先を摘まれているような違和感がある。

 ダンジョンと冒険者の間には“共鳴感覚”と呼ばれる特別な本能がある。無意識下の精神干渉のようなものだ。

 さっきのように、本来の目的を見失ってしまったのもそのせいだろう。


「謝らなくて良いのよ。ペレッタにこのダンジョンの素質がめちゃくちゃあったって事でしょ」

「私に、ですか」

「うん」


 ミストナは強く頷く。

 これだけ激しく反応したということは、ペレッタの中に眠る、冒険者としての魂が満たされたという事だ。

 この影響が生きる活力になってくれればいいが……。


「あの、ガロン達は?」

「ちょっとからかって置いて来たわ」

「まさかっ!? ミストナさんはあの兵士達を全員倒したというのですか!?」

「いやいや。いくらなんでも、それはきついわよ」


 ミストナは頬を掻きながら話を続ける。


「この空間はね、ボスを倒して恩恵を授かるまでは五人しか入れないの。次のボスが出現するのはインターバルを考えて、十分から十五分って所かしら。その間だけ、この大空洞に籠城ろうじょうが出来るわ」


 外の様子を想像して、ミストナは腹の中で大笑いした。チェスター達は今頃、扉を開ける為にあくせくしているはずだ。

 この最深部に関わる物は、どうやっても壊す事は不可能。もし簡単に壊せる代物ならば、資料に定員数などを表記するはずが無い。ダンジョンの中は、ダンジョンが定めたルールにしか従えないのだ。


 ともあれ。あの兵士達がペレッタを殺す為だけに、ここに訪れたのが良く分かる行動だった。ろくにこのダンジョンの仕組みを調べて無かったのが証拠だ。

 それとも、よほど自分の腕に自信がある傲慢な奴らなのか——。


「あれを見てちょうだい」


 ミストナは退屈そうにしゃがみ込む、ベリルの前を指差した。

 空間を突き破るように。あたかもそこにずっと存在していたかのように。蜃気楼のようなモヤの中から、石の台座が姿を見せる。

 

 駆け寄り、二人は身を乗り出すように天板を覗く。

 天板には解読不可能な小さな文字達が、忙しなく動き回っていた。何かの絵を作ってはバラけ、また別の絵を組み立て始める。


(これは太陽。次は月……じゃなくて星か。ムカデに……ワニ? トカゲ? うーん、下手過ぎて全く分からないわ)


 ミストナは鉄甲に彫った四匹の動物達と天板を、交互に見比べて思った。

 自分の絵はお世辞にも上手いとは言えないし、多少子供っぽいかも知れない。が、絵心だけはダンジョンに勝ったな、と。


「この台座に触れてみて。そうしたらダンジョンから恩恵が与えられるはずよ」

「は、はい」


 恐る恐る手を伸ばすペレッタ。

 表情は怯えきっているという印象ではない。不安と興奮を秘めた探求者の眼差しだ。


 ペレッタが触れたと同時。天板の文字が手に移動を始める。

 例えるなら蟻が『ゾワワワー!』と、凄い勢いで砂糖に群がる様子に似ている。文字達はペレッタの手の甲を登り、肘を過ぎ、脇を通って、ドレスの中へ。


 その一連の儀式を、ミストナは複雑な表情で眺めていた。おそらく文字達はサラシをもすり抜けて、あの恐ろしい隠れ巨乳に集中しているはずだ。


「どんな感じ? 副作用として胸がさらに大きくなっちゃったとかある?」

「……なんだか、とても暖かいです」


 ペレッタは心臓の部分を両手で優しく押さえた。鳥の卵を温めてかえそうとする、無垢な子供のように。


「うんうん、そっかそっか。で——胸の大きさは?」

「えと、胸ですか。変わっていないと思いますが」

「なるほどね。参考になったわ。もし大きくなってたら無理矢理もぎ取っていた所よ」


 ウインクしながらミストナは親指を立てる。


「えぇ……」


 苦笑いをするペレッタを淡い光が包み、儀式は無事に終わった。

 刺青のようにペレッタの皮膚に文字が残る事は無い。全てペレッタの中——“魂”に定着した。

 ペレッタが自分の足で歩き、仲間と共に実力で掴んだ異能の力。ダンジョンクリアの証。


(ちゃんと受け取れて良かった。やっぱりペレッタには、このダンジョンの適正があったのね)


 ミストナの愛読本『冒険者の流儀』には、ダンジョンを“運命”と置き換えられる表現が度々出てくる。

 冒険者とは自分の意思に関係無く、特定のダンジョンに吸い寄せられるというものだ。それが今後の生き様に大きく関わっていくという——。


(どうかペレッタに、このダンジョンの加護がありますように)


 ペタペタと胸の辺りを確認するペレッタに、ミストナはささやかな祈りを送った。


「——ん?」


 気が付けば。ベリルがぶっきら棒に灰色の尻尾を台座に乗せている。

 新たに出現した文字達はまるで異物に侵入されたかのようにカタカタと震え、端の方に集まり始めた。


「オイコラ! あたしがボスを倒したんだぞ! 差別してんじゃねーよ!」

「もー、やめなさいったら」

「うるせー! 魔石の一つも出しやがれねーで何がダンジョンだ!」

「ここの恩恵は魔術だけ。そういう条件なんだから仕方ないでしょ」


 聞く耳持たないベリルは尻尾だけでは飽き足らず、両手を使って天板の文字を追いかけ回す。が、どうやっても捕まらない。

 最終的に顔と胸と尻尾と両手で、台座にへばり付くまぬけな格好になった。それでも文字がベリルに移動する事は無い。


「上等だ!! このあたしを怒らせたらどうなるか、目に物を見せてやるからな!」


 ムキになったベリルは台座ごと引っこ抜こうと踏ん張る。顔を真っ赤にさせて、見るからに本気を出しているようだが台座はビクともしない。


「舐めやがって!! だったらだ! を持って帰って質屋に売りつける!」


 次にベリルが狙ったのは頭上の巨大な魔石——核だった。

 どう飛んで跳ねても届く高さでは無く、それこそ持って帰れる大きさでもないのだが、ベリルは岩壁にしがみつき登り始める。

 万が一に届いたとしても、触れる事すら叶わない代物だろう。


「本当にあいつはバカなんだから。ゲートですら移動は困難なのに、一個人の冒険者がダンジョンの心臓をどうこうできる訳ないでしょ。おーい、怪我する前に降りて来なさいよー」

「あのっ、どうしてベリルさんは魔術を受け取れなかったのですか?」


 ペレッタの問いに、ミストナは肩を落とす。


「何故かは分からないけど、獣人はダメなのよねー。獣の血がダンジョンの恩恵を何一つ受け付けないの。でもリザードマンは魔術を授かれるのよ? どうしてかしらね」


 ダンジョンに潜れるだけで有難い。とミストナは常々考えている。

 ——でも、もしも願いが叶うとしたら。クリア恩恵の魔術は、喉から尻尾が出るほど欲しい。

 例えどんなに小さな魔術だとしても、ダンジョンを有利に進む事が出来るし、賞金首はもっと捕まえやすくなる。生活も随分と楽になるはずだ。


「獣人族はもともとの身体能力が高いからでしょうか? そう私の国の資料には書かれていました」

「うーん。人間ノーマルだって魔術を使えば身体能力くらい向上出来るでしょうし。魔族達と比べても、そこまで特化しているとも言えないわ。だから——はっきり言ってペレッタが羨ましいの。魔術を受け取って、何でも出来る。そして、何者にだって成れる」

「私は何もできません。ただの冒険者を夢見ている女の子ですから」

「……魔術を発動してみても、そんな事が言えるかしら? せっかく貰ったんだから私達に使って見せてよ」


 ミストナ達が見守る中、ペレッタはこくりと頷いた。


「いきます」


 僅かな魔力がペレッタの手に宿って見える。

 すぅーと、右手を真っ直ぐに伸ばし……。左手を添え……。両手を掲げるように、天へと向けた。


「なんだか壮大な構えね」

「緊張するです」


 一呼吸置いて。そのままゆっくりと両手が左右に広がる。


「これは、まさか」

「あぁ?」


 ペレッタの腕は徐々に下降していき——元の腰の位置に帰ってきてしまった。


「どどど、どうやって魔術を発動させるのですかミストナさん!?」

「んふっ」


 気恥ずかしそうなペレッタに、ミストナは笑い声を押し殺す。


「私達には縁が無いから聞いた話になるけど、ダンジョンで見た景色、感じた出来事。それらを思い出しながら言葉に出すんだって。言葉は何だって良いらしいわ。ちなみにここの恩恵は火炎系統の魔術よ」


 胸を抑えるペレッタが、天井の燃え盛る魔石を見上げ大きく息を吸う。


「——生命の火フィ・レイタム!!」


 モルメス国の言葉を使い、ペレッタが魔術を唱えた。

 しかし。何も起きない。そよ風どころか、物音一つ聞こえない。


 ミストナが目を通した資料によると、発動するはずだった魔術は、洞窟の中を照らす“灯火ともしび”のような魔術だ。

 ツバキはキョロキョロと辺りを見回し、ラビィは小石をひっくり返して、何処かに異変が起きていないか確認する。ベリルはどこから持って来たのか、半裸の人間ノーマルが写ったいかがわしい本を読んでいた。

 そのエッチィ本が燃え尽きて、なんならベリルに燃え移れば良いなと思っていたが、どうやらそこにも火種は現れなかった。


「やっぱり私には冒険者としての才能は無かったのでしょうか。夢は夢のままで——」

「違うわ」


 言わせない。

 言葉をさえぎってミストナは口を挟む。


「発動しない理由は一つしかない。ペレッタがこのダンジョンの事を真剣に考えてないからよ」

「……考えています」

「嘘ね」


 ペレッタは悔しそうに唇を噛んだ。


「どうしても……浮かんでくるんですっ!」

「何が?」

「楽しいと思うほど、生きようと思うほど。苦しむ民の姿が目に焼き付いて……」


 ギュッと目を瞑るペレッタから、ポロポロと大粒の涙が溢れる。遠くない未来を憂いてのことだろう。

 冒険者としての魂。生物としての生存本能。そして、次期王女としての苦悩が入り混じっている。


(ダンジョンの楽しさは、生きる楽しさ。それは身を持って伝えた。ここからの説得が——ペレッタの生死を左右する)


「ペレッタ・トゥワ・モルメス。あんたは国を捨てて逃げるべきよ」


 本心を言い切った。

 貴族が巣食うモルメス国にはもう帰れない。となると、ペレッタの生きる道はそれしか残されていない。


「残された王族派の方々はどうなるのですか!? 貴族のやり方は卑劣です! 逃げた私を炙り出すために、多くの被害が民に出てしまいます!」

「だとしても、あんたは生き延びるのよ」

「そんな身勝手な事が出来る訳無いじゃないですか!! 人が死ぬかもしれないんですよ! ミストナさんはモルメス国のやり方を分かっていません!」

「かもね。でも、あんたは何も悪い事をしてないじゃない。生きたいと思うことの何がいけないの? 誰にだって“夢を見る権利”はあるわ」

「私が血筋を絶って死ななきゃいけないんです! 王族としての最後の責任を取らないと……いけない運命なんです……」


 自分を抑え込むようにペレッタは言う。

 それが正しい答えで、万人が幸せになれる方法だと。

 しかし——ミストナは首を横に振る。


「そんなもんはね、ペレッタ一人が背負う事じゃないの。そうでしょ? あんただって国民の一人のはずなんだから」

「っ!」

「国の混乱は国全体で受け止めなきゃ。王様も貴族も平民も関係ない。皆が住んでる場所なんだから、皆の責任よ」

「……それはっ」

「ましてや、ずっと幽閉されてたペレッタの命を使うだなんて……。それこそ身勝手でおこがましい、国の本質を侮辱する行為だと、私は思うけどね」


 ミストナは優しく、ペレッタの涙を指ですくった。


「自分の気持ちから目を背けないで。“生きたいと思う気持ち”を偽ってはいけない。ペレッタもそう思ってるんでしょ? この涙が証拠よ」

「それでも私は……私が許せませんっ! この場所から逃げる自分を!」

「じゃあ——私が許す」

「……えっ?」


 荒くなったペレッタの息がピタリと止まる。


「この私が許してあげるって言ってんのよ。ノルルン・ミストナ・エイティックの名に置いて、ね」


 頭を撫でながら、ミストナは『にししっ』と笑った。


「ダンジョン数は五百以上。異界の数は百以上。人口数十億と言われるこのホワイトウッドって街は、あんた達異界の住民にとっては物凄く大きくて、世界の中心に見えるかもしれない。けどね、この大陸の中央には“セキュイラ”っていう偉そうな大国があるの」

「この街の外の話ですか?」

「うん。ホワイトウッドからずっとずーっと東にある国よ。セキュイラは侵略した他国含めて、人口何百億人以上とまで言われてる。この街だって、目をつけられたら三日で征服出来るわね」

「そ、そんな国が……」

「私はそのセキュイラの。エイティック家の末娘よ。内緒にしてねっ」


 ペレッタの唇に人差し指を当てる。

 黙っていて欲しいのは本当だ。出来る限り家名を出すつもりは無かったが、今は仕方ない。使える物は何でも使うのが、獣の流儀。


 そもそも同然でセキュイラを抜け出し、ラビィと一年をかけた旅の果てにこの騒がしいホワイトウッドにやって来た。捨てたはずの過去だ。

 ダンジョンの冒険者に、偉そうな肩書きなど必要無い。そう、お気に入りの絵本の勇者も言っていた。冒険者とは誰よりもだと。


「そ、そんなの……デタラメです」

「本当よ。純血の虎人が仕切ってる。この危険色の髪色がその証拠よ。ラビィの鞄の中にだって王家の証である短剣が入ってるわ」


 ラビィが気を利かせて、短剣をポーチから取り出そうとしている。それをツバキが手で静止させた。

 いつのまにか棒術使いから盗賊にジョブチェンジした、バカ狼に気付いたからだ。

 ナイスよ、ツバキ。


「ミストナさんがどんなに偉い人だったとしても、生きたところで私には何も残されていません! 目標も夢も何もない私は、どこへ向かって歩いていけばいいんですかっ!!」


 悲痛な叫びだった。

 ペレッタは逃げた後の生活に、不安を感じていた。命が狙われるという話ではない。責任を強く感じる彼女は、簡単に問題を割り切れないのだ。

 重圧に押し潰されて、いずれ自我の崩壊が始まる。その後は——自殺か。鹿野が危惧きぐしていたポイントだ。

 だからミストナは支えなくてはならない。言葉で、温度で、表情で。ペレッタをしっかりと支えなくては。


「何処へなんて考えないで歩きなさい。歩き続けるの。泣いても挫けても立ち上がって前へ進むの。そして振り返った時——その必死の軌跡が、あんたの本当の姿形を表してるはずよ。私の好きな絵本の勇者みたいにね」


 ミストナはペレッタの膝や手を見つめる。そこには泥や砂、擦り傷が付いていた。

 諦めなかった者のみに与えられる、立派に生きた勲章だ。


「生きて……。生き続けて……。それが本当に正しい選択なのでしょうか……」

「私にもわからない。間違っていたのか、正しかったのか。願わくば——今日の出来事が些細に感じるほどの騒がしい毎日が、ペレッタに訪れますように」

「私は……」

「一度だけ、運命に抗ってみましょう。私達も一緒にジタバタ足掻いてあげるから」


 ミストナが手を伸ばす。


「私は……私はっ!!」


 顔をくしゃくしゃにするペレッタの腕が上がる。ゆっくりと近づき、互いの手が触れ合うその時——


「あっ! んん……んっ……あんっ」


 急にペレッタが甘ったるい声を出した。


「えっ? なになに、どうしたの?」


 もぞもぞと。ペレッタの胸の辺りのドレスが動き始めた。


「あ……だめっ、そこは、やめてくだしゃい……」


『軟体系の幻獣モンスター!? こんなに良い場面でどこから湧いて出たのよ!』と思ったが、違う。

 いつのまにか背後に居たベリルが赤い目をニヤつかせていた。

 ドレスの裾から両手を突っ込み、ペレッタの胸を揉みに揉みしだいている。

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